主な代謝疾患

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1)がんと代謝
がん細胞生物学では、代謝の重要性が大いに注目されている。がん細胞はエネルギー効率の良い好気的呼吸ではなく、効率の悪い発酵に強く依存するという特徴が発見されている(ワールブルグ効果)。これは多くのがん細胞にみられる特性であり、増殖と生存を促進するための代謝適応を反映していると考えられている。

またある研究では、盛んに増殖するがん細胞は、栄養素を細胞の構成成分の産生に充てる必要があるため、異化から同化に代謝経路を切り替えていることが示唆されている。

ワールブルグ効果の他にも、がん細胞の代謝にはいくつかの特徴がみられる。

がん細胞の代謝の特徴
・グルコースとアミノ酸摂取の障害
・解糖系/TCA回路(クエン酸回路)の中間産物を利用した生合成とNADPHの産生
・窒素要求性の亢進
・代謝産物による遺伝子制御の変化
・微小環境との代謝的相互作用
など

2)糖尿病(インスリン抵抗性)
糖尿病には1型糖尿病と2型糖尿病の2種類あり、1型糖尿病は通常幼児期から成人早期 に発症。血中グルコースの細胞への取り込みを誘導するホルモンであるインスリンが十分に産生されなくなる。1型糖尿病の原因として、自己免疫などによる膵島のβ細胞 (インスリン産生細胞)の障害が挙げられる。

一方2型糖尿病では、インスリンが作られない場合、体がインスリンの存在に対し脱感作(すなわちインスリン抵抗性)されている場合がある。2型糖尿病は年齢に関係なく発症し、多くの場合食生活に起因する。1型糖尿病と2型糖尿病の患者は、心臓病、腎臓病、歯科疾患、循環器異常、眼疾患および神経損傷を併発しやすい。

3)肥満
肥満は、皮下や内臓脂肪として貯蔵される過剰な脂肪組織に起因する。心臓病や循環器疾患、2型糖尿病、がんなど様々な疾患を併発しやすく、予防可能な早逝の原因のひとつである。遺伝的要因もあるが、大半は食生活・生活習慣に起因します。

3−1)代謝症候群
肥満に関連するもうひとつの疾患で、代謝疾患を併発した合併症のこと。糖尿病、心臓病、脳卒中なども併発しやすい。代謝症候群の診断は、患者が次の症状のうち3つに該当する場合に下される

・腹部肥満
・高トリグリセリド(中性脂肪)血症
・低HDLコレステロール(善玉コレステロール)血症
・高血圧
・空腹時の高血糖
4)心血管疾患
アメリカ心臓協会は、循環器疾患を次の1つ以上の症状として定義している。

・心臓病
・心臓発作
・脳卒中
・心不全
・心臓弁の問題
心細胞が細胞内代謝経路に障害を起こしたとき、代謝症候群/肥満とは独立して循環器疾患を発症することがある。

5)腎組織障害
代謝症候群は、慢性腎臓病とも関連する。具体的には高インスリン血症、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の活性化、酸化ストレスの上昇、炎症性サイトカイン産生などである。

6)先天性代謝異常
先天性代謝異常は、代謝パスウェイに関与する主要な酵素の機能不全または欠損によって起こる、遺伝性の希少疾患である。アミノ酸代謝疾患、炭水化物代謝疾患など、さまざまな種類がある(先天性代謝異常については次回記事にて解説)。

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