アート・オブ・デザイン シーズン1・第1話の感想
こんにちは、スペースマーケットデザイン部の新井です。
みなさん、年末年始はいかがお過ごしでしたか?私は昨年に部長代理である三重野さんに教えてもらってからずっと気になっていた アート・オブ・デザイン シーズン1 を見始めました。
こちらは2017年〜公開されたデザイナーのドキュメンタリーです。各回ひとりに密着し、その仕事ぶりや生活・内面に注目します。せっかく見たので第1話の感想を書いてみようと思います。
第1回で取り上げられるのは、ベルリンを拠点に活躍するイラストレーター・グラフィックデザイナーであるクリストフ・ニーマンさん。
ユーモアと発想
彼にとって「抽象化」とは、発想の根底にある多くのアイデアを吟味し、不必要ものを削除して本質を残すこと。
これすごく思い当たりました。年末に初学者ながらにロゴを作成したのですが、形が具体的すぎたりしっくりこなかったり非常に苦労したんです。抽象化がうまくいかなかった原因は、まさに本質を見極められていなかったせいかも...。そんな苦しみの記事はこちら。
クリストフさんが自身の作品を紹介するシーンでは、アイロンの形だけでものや人を表現した個性的な作品を見ることができました。
立体で「ぴえん」顔を表現してみたり。
シンプルかつ可愛らしい、ユーモアある発想がとても素敵ですね!
小さい頃から絵を描くのが大好きだったクリストフさんは、アートスクールに進みます。しかし、先生は褒めるタイプではなかったそう。「悪くない」と言われると「よし!」と思っていたとのこと...厳しいですね。
抽象化とは、本質を見極めること
一本の線やシンプルな図形も、必ずある基準を持っていると語ります。例えば「愛の象徴」であるハート。
左のように矢で心臓を一突きして致命傷みたいなリアルだとグロすぎ・右の四角形では抽象化しすぎているというわけです。「愛の象徴」を表すことが役割なので、意図が伝わらないものは失敗と言えます。
彼の代表作は雑誌「ザ・ニューヨーカー(The New Yorker)」のカバーイラストですが、この雑誌では表紙に文字がなく、代わりにイラストで週のテーマを表しています。
2017年時点で22冊ほどを担当し、ピカチュウの着物やオリジナルのイラストのドットアイコンなど個性的な作品が表紙を飾りました。
肩あたりのピカチュウのなんともいえない体勢がいい感じです
この仕事は難しい分、毎回とてもやりがいがあるそうです。
「3D」に挑戦するイラストレーター
密着中は、デバイスを通して見ると2Dの作品が3Dアニメーション化する表紙に挑戦していました。雑誌をどう見るか(視点)を考慮した結果、内側・外側の視点に着目することに。
ニューヨークのインサイド・アウトサイドとして思いついたのは地下鉄でした。内からでも外からでも、ドアを通る人を見ることができると考えたためです。
デバイスを通すとどのような3D作品が見えるのか、ぜひ番組でご覧ください。
レゴを使って考える
「インクを使って描くのが好き」とクリストフさんは語ります。親しみが感じられるからで、対して3Dの世界はプラスチック的であまり好きではなかったそう。
3Dはどの角度から見ても完成してないといけないのでごまかしが聞かないと言います。2Dは2Dで色々な苦労がありそうですが...。しかし「これまでの経験上、出来が良かったのは時間に余裕がなくひりついた仕事の方が多い」とも話しており、どこか充実した様子も。
レゴを組み立てて考えるシーンでは、色の組み合わせも参考にすると言っていました。レゴは解像度が低い、3Dのドット絵のようです。
プロセスが見られるのは面白いですね。これも本質見極め・抽象化の手がかりを得る一つの手段になっているんですね。
拠点について
「ニューヨークは初めて1人旅した街で思い入れがある。自分だけの場所のようだった。ドイツから出てきたけど、アメリカ文化にはすぐ溶け込んだ。」
作品のベースには文化や経験があり、意味を推測しなければ分からない難解なものよりも生活や経験がそのまま活きた作品の方が面白いと感じるとのこと。また「実生活と仕事を共存させるのは無理な方」とも。息抜きの中でふとした瞬間生まれる作品と、クライアントのいる仕事は当然ながらまったく別物。
チャック・クローズの「アマチュアはひらめきを待つ」「プロは朝から仕事に出かける」という言葉が好きとのこと。重圧から解放される気がするからだそうです。待つだけではだめで、作業を始めることが大事。チャンスが生じる可能性が高まります。ひらめくためには描かなければならない。
「確実な仕事をする方法」を確立することが唯一の生き残る手段ではあるものの、過度な働きすぎも良くないと彼は言います。
自分が本当に作りたいものか?という重要な疑問を考える時間がなくなってしまうから
のちにニューヨークで息詰まってからはベルリンに拠点を移したそうですが、確かに環境の転換も時間のゆとりと同じように大事ですね。
「デザイナー、実生活を見せる」って必要?
「歯磨きを人に見せるような感じは苦手なんだ」と歯ブラシを手にひたすら嫌そうにしているのが面白かったです。本当に嫌なんだなという感じでした。笑
理由を問うと「リアリティは撮りすぎたくない、誰も現実味を求めてないよ」と一言。抽象化には日常が存在しないし、スヌーピーに明確に大人が登場しないのと同じ(確かに大人って顔とか出ない)という理論。
「絵の内容は、見る人自身に考えて欲しいし」とのこと。
また、作品についてはこのような考えを話していました。
僕がやっているのは情報を作り出すこと。見る人がすでに知っているものを作る。それで見る人と自分の経験が合致する。これにはマンネリ化の課題もあるため、絶えず新しいことを試しつづている
確かにどの作品もパッと見ただけで何が描かれているか分かりますが、新しい表現が用いられています。
「サンデースケッチ」は成功だと思うけど、意味のない作品もある。コントロール性もない。プロなら制御して計画的に仕事を進めるべきなんだけど、このプロジェクトでは無理。ライトを動かしたりした拍子に不意に思い浮かぶものばかりだから。
仕事と人生
活字メディアに長くいたので、イメージは紙に書くものだと思っていたそう。しかし、これからは新しいメディア(Webとかアニメーション)に貢献できる方法を考えるのが仕事になるとのこと。
(自分の作品を)好きな人も嫌いな人もいるだろうけど、それが人生。
クリエーターとしての自分とエディターとしての自分はまったく違うと言っていたのは意外でした。成功する理由を把握しなければいけない面もあるけれど、作品作りは自由な精神も必要。2つの人格を同時に育てる必要があるとか。
仕事の休み時間に1枚の紙を前にして、自由な創作をするそうですが、ひらめきに依存するタイプだと言います。締め切りに追われず、自由な創作ができる時間に生まれるのがあの個性的でユーモラスな作品なんですね。
また、仕事における苦悩は「継続」と言っていました。自分に才能があると思えないので、仕事をこなせばこなすほど良いものを作り続けることを難しく、力不足を感じるそうです。
いいものができない恐怖や、乗り越えられない壁を感じると苦しい
「自分に優しく」の考え方には共感できない。毎日練習するのはアーティストも同じ、という言葉からは、ストイックさが伺えました。
「ピアニストにとってのピアノのように、僕はイメージに語らせたい」
私が一番印象的だったのがこの表現です。
音楽では愛は長い間歌われてきたテーマで、斬新な曲は愛の新しい側面を気づかせる。僕も同じで、作品で人々に新しさを与える。そうした作品が世の中に受け入れられたら最高だ。感情を表した作品は、自分は愛や恐れを抱いていることに気づかせてくれる。
こんな表現があったのか!と感動することって結構ありますよね。言葉だと文学や、作詞の表現もそうですがもちろんクラシックも演奏者によって全然違うし...。知らない表現に出会うと感動します。
今回クリストフさんの作品をいくつも見て、物の見方や本の内容の受け止め方に非常に感銘を受けました。特にサンデースケッチを見ている時は、空に浮かぶ雲の形を見て「〇〇の形みたい!」と楽しんでいた童心のようなものを思い出しました。最近は特に現実を直視しすぎて、純粋な心や発想の豊かさを失いかけていた気がします。本来世界は楽しいものでいっぱいなはずなので、このような視点とユーモアは一生持ち続けていきたいですね。
語りを洗練させてこれからも戦っていく。世界を理解して作品にして伝えたい。そのために作り続けるし、終わりはない。
まとめ
だいぶ感想を交えてしまいましたが、番組とても面白かったです。
途中にたくさん挟まるアニメーションがとても可愛かったので気になった方はぜひNetflix・YouTubeをご覧ください。無料で見られるなんてすごい時代です。
最後にスペースマーケット社員らしく、お気に入りのスペースをまとめてみました。突然おしゃれな空間で語るようにピアノが弾きたくなった際は、ぜひご参照ください。
ありがとうございました。今年もデザイナー頑張りましょう!
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