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思えば随分長い連載になったもんでした

 てんぐがガンダムエースでずーーっと追いかけてきたジョニー・ライデンの帰還、少し前の本誌に引き続き、単行本でもついに最終巻が出ました。
 13年ですか、思えば長い連載になっていたものです。
 実はやっぱりジョニーだったレッドたちの活躍や漫才もさることながら、脇を固めるオッさんたちが良い味出してました。
 筆頭は、やはりゴップ議長。
 最初は軍から政界に転じた典型的な俗物と思わせてましたが、敢えてイングリットを連れ歩いてロリコン爺いまがいの振る舞いをすることで周囲の人物を篩にかけていたあたりから、「このオッさん、ただものじゃないぞ?」と思わせてきました。
 そこへきて、ヴァースキという偽名を名乗ってたヤザンとの面談ですよ。というか、ゴップとヤザンが面談して同志になるなんて、この作品の前には想像もつかなかったでしよ。

 まあ、このおじさん、間違っても「いい人」なんかじゃないです。
 寄生虫を自認するだけあって色々と後ろ暗いマネはしてそうですし、強化人間=人造ニュータイプという戦闘単位であるという理由があろうと子供を戦場に出してたことには変わりないです。
 でも同時に、その子供を含めた後ろ暗い仕事に参加する同志全ての生還確率を少しでも上げるためならば、どんな手配もする。そもそも、こんな後ろ暗いミッションのために手配をすること自体が、ビームやミサイルが飛び交う戦場に身をさらすことと同じくらいのリスクを共有することでもあります。
 まあ、ジョニ子のヘビーガンダムのコア部分が、カミーユのZガンダムだったとは思いませんでした。
 道理でロンド・ベル隊に合流したアムロが「Zガンダム寄越せ」って申請しても却下されたわけです。だって、物がないし事情も話せないんだもん。

 ゴップ議長の同志たちも、自分のボスが危険な悪党だということは承知してるでしょうし、そんなボスと付き合うことが危険だということも同様。もちろん、他のガンダム作品のキャラクターのようなロマンチシズムやエモに由来する正義感や忠誠心などを喚起されてる訳でもない。
 でも、みんな楽しかったんじゃないかなあって思います。

 そうそう、ジョニー・ライデンの帰還といえば、軍需産業観、あるいはアナハイム観を大きく揺らいだ「軍需産業は割に合わない」という話も衝撃でした。

 MSをマクラに政治や経済を語る、この切り口こそがMSVだというArk Performanceの視点は斬新でしたし、同時にガンダムエースの他の連載作品が見落としがちな、「人と人、人と世界を正しく繋ぐものとしての社会」をしっかりと視野に入れていることが窺えます。
 そしてそれは、社会を経由することなく、世界と自分を能力だけで直結させてしまうから陥るニュータイプの傲慢さと対照的だった、とも言えます。

 MSや艦艇のシャープなデザインや、時系列の前後にまたがる設計開発の系統樹もさることながら、この世界観、あるいは社会観こそがジョニー・ライデンの帰還に13年付き合ってきた動機でした。

 さて、このArk Performance、次は何をやってくれるのかな。
 個人的には、一年戦争以後の宇宙世紀に打たれたひとつのピリオド、にも関わらずあまり多くを語られていないサイド3自治権放棄、そして「ギレン暗殺計画」から始まるレオポルド・フィーゼラーの物語の終章ともなる「ジオン共和国の一番長い日」が読みたいですね。

追記:本当は強かったシャア・アズナブル

 ジョニー・ライデンの中盤戦から後半戦は、新生ネオジオン総帥になったシャアの暴れっぷりが凄かったです。
 というか、あの人ってマジで強かったのね。
 なにせキマイラ隊とオールドタイプ最強候補の野獣ヤザンによる飽和攻撃さえも凌ぎ切ってましたし、しかも乗ってるのはディジェとシュツルムディアスを組み合わせてサイコミュまでねじ込んだキメラ機体ですからね。
 それじゃ、完成したサザビーを十全に乗り回してた時のシャアと、そのシャアと互角に渡り合ってたアムロ in νガンダムってどんだけ強かったのよ?

 逆シャアがシャアとアムロの2人の世界になったのもわかります。
 そんなレベルの戦いに割り込めるようなパイロットなんていませんよ。

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