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ゴジラ映画と戦後映画の二刀流、ゴジラ-1.0見てきました

 今日はゴジラ-1.0とマーベルズを見てきました。
 ゴジラ-1.0の方は、率直な感想を述べると「ゴジラ映画と戦後映画の二刀流」というところでしょうか。

 率直ついでに言うと、シン・ゴジラが官僚や政治家、そしてヤシオリ作戦に参加する技術者や自衛隊といった、「庵野監督が認定した特別な存在」という意味でのトップダウンのドラマ(だから面白いと思いつつ、どこか「しゃらくせえな、コイツ」って思っちゃうんですよね)なら、ゴジラ-1.0は「決して特別でなく、国からもGHQからもぞんざいに扱われるものたち」即ち庶民たちボトムのドラマでした。

 この庶民性とは、戦禍で家族を失った悲しみを戦地から生きて帰った隣人にぶつけつつ、その隣人がよくわからない経緯で拾った赤ちゃんを親身に助けたり、自分の危険な仕事を貧乏くじを認識しつつ「誰かが貧乏くじ引かないとならねえんだよ!」とその仕事そのものに抗わず引き受けてしまったり、そんな個人の善意や健気な責任感と公共への要求や抵抗を考えもしない諦念が表裏になっている心理、と言い換えても良いかもしれません。

 では、何らかの形で戦争に駆り出され、「周りは死んだのに自分は生き残ってる」という業を必死で忘れようとして、何とかゼロまで戻してきた暮らしをマイナス、即ちGHQに加えて銀座を壊滅させられた上に「ゴジラの縄張り」にされてしまうという二重の占領状態におかれた庶民たちが噴出させた感情とは何か。

 それは、「一度で良いから、自分たちの納得がいく戦争がしたい!」というものじゃないでしょうか。

 あの戦争の大義なんてもう信じてない。自分たち庶民の命を粗末にし続けた帝国日本にも旧軍にも恩義や忠義なんてない。
 でも、そんなの関係なく「自分が納得がいく戦争」を一度で良いからやらせてくれ。でないと、自分の中の「本当の終戦」なんて迎えられないんだ。

 日々の暮らしの中で押し殺し、忘れてきたそんな感情のタガを、ゴジラという存在が吹き飛ばしてしまった。
 そんな、ある意味でどうしようもなく身勝手な、ゴジラからしたら八つ当たりじみた、それだけに理屈や道理を度外視するほど生々しい感情こそが、この映画の人間たちの一番の動機だったんじゃないでしょうか。

 なので、この映画のゴジラという存在は何かと考えると、かつての昭和ゴジラシリーズ中盤以降の「子供たちのアイドルにして地球の守護者」でもなく、平成VSシリーズのような「人類の欲望に対する警告」でもなく、シン・ゴジラのような「原発事故のメタファー」でもなく、モンスターバースのような「古代地球の支配者たる怪獣の王」でもなく、常識を超越してる生態というだけの純然たる「生物」である、その範疇を越えるものではない、ということになるでしょうか。

 VFXは本当にすごかったですし、スーツアクターがいた頃を彷彿させる直立に近い立ち姿は郷愁も感じるんですが、ゴジラそのもののドラマが希薄というか人間ドラマを引き出すための、二刀流でいえば本命の太刀に対する誘いの太刀になってもいて、そこに不満を持つ人もいそうですね。

 ともあれ、評判が良いのも納得のゴジラ-1.0、どうせなら劇場で見る価値はありますね。

余談:てんぐが見たいゴジラ

 せっかくゴジラの話題に触れたことですし、「こんなゴジラが見てみたいな」ってものをいくつか挙げてみます。
 まずは、「歴史の中のゴジラ」
 大戸島に出現する怪物の名前の由来となった「呉爾羅ごじら」なる怪獣の逸史を語る、そんなゴジラも見てみたい。そう思う人は多いんじゃないかな。
 これ、実は先行事例があるんですよ。アメコミのレイジ・アクロス・タイムっていうんですけどね。

 これ、実はてんぐも持ってるんですよね。
 いまドラゴンランスに掛かりきりですが、そのうち物置から引っ張り出して再読しようかな。

 次は、そのドラゴンランスも含めたD&D世界のどこかへ出張、またはクトゥルフ神話との他流試合というのも見てみたいです。
 我らが怪獣王ならば、クの字と真っ向勝負を挑んでも引けを取るはずないでしょう。ついでに言えば、不用意に間近に接した者のSAN値もゴリゴリ削りますし
 D&D世界への出張案は、データ的にはモンスターマニュアル収録のタラスク相当で良いんじゃないかって言われました。脅威度は最上クラスの30ですし、なんならこれに<ミーティア・スウォーム>と同レベルの破壊力を有するブレス能力を追加すれば、ほぼ完全に再現可能です。まあ、そんな大怪獣をシナリオでどう生かせば良いかはさっぱり見当もつきませんが
 竜槍戦争に登場したら、パラダイン側もドラゴン軍も、どちらの戦略もメチャクチャにされそうですしねえ。

 そしてラストは、平成VSシリーズを三枝未希サーガとして再構成した長編シリーズ。これはマジで見たいです。

 ちなみに、平成VSシリーズの起点は、(まだ昭和ではありましたが)84年のゴジラとされています。
 そしてファンの間では「ゴジラ-1.0は84ゴジラに接続するんじゃないか」とも言われてるそうですし、そうすればこのラインでシリーズ化もできるんじゃないかなあ。

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