読書

スタートアップ人事が2019年読んで面白かった本まとめ

年間100冊ほど本を読むのですが、2019年、特に良かったものをランキング形式で紹介していきます。※業務に役立つとかではなく、完全に自分の趣味嗜好に基づいています。

■1位 それから (新潮文庫)

大学生時代から夏目漱石は好きだったのですが、卒業して10年経ち、プライベートで色々あったこともあって、読み返しました。あらすじを簡単にいうと、明治時代の金持ちニートが、昔恋をしていた親友の奥さんを略奪して、家族と絶縁されて仕事を探し始める、という話です。

テーマは、略奪愛と世間との関わり方。主人公は学生時代からその奥さんのことが好きだったのに、そのタイミングではきちんと伝えられず、時間が経ってから取り返しのつかない犠牲とともにその女性を取り戻します。人生には必ず「ポイント・オブ・ノーリターン」があり、「今」がまさにその瞬間ではないのか?と自問自答することの大切さをあらためて感じさせられました。

2019はほとんど文学を読めなかったのですが定期的に何らか読んでおかないと、えらく薄っぺらい人間になってしまう気がしているので、2020年は意識的に読んでいこうと思います。

■2位 苦しかったときの話をしようか ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」

本屋で立ち読みしてたら一気に全部読んでしまいました。森岡さんの本はすごく熱量がありますが、この本はキャリアに悩む自分の娘に向けて書いたメモを書籍化したもののため、きれいごとや忖度がなく、特に言葉に力があります。

P&G時代に数少ない日本人として本社に赴任し、うつ病寸前になりながらも、心を奮い立たせながら、営業の人間とやりあったエピソードは、外資で働いたことがある人間ならば誰もが共感するはず。英語がうまくなかった時代のトレーニング方法や周りの信頼を獲得していく過程の生々しい苦労話の数々は、「結果を出せる人間は苦境に追い込まれたからが強い」ということを教えてくれます。華々しいキャリアで成功者のイメージが強い人でも、こういう苦労している時代があるということがわかり、やる気が出ます。仕事で嫌なことがあったり、苦しいことがあったら、ぜひ手にとってもらいたい一冊です。すごく勇気が出ます。

■3位 科学的な適職 4021の研究データが導き出す、最高の職業の選び方 

好きを仕事にすべきか?というのはよくされる議論ですが、この本は、いかにして「適職」=幸福が最大化される仕事につくか?を膨大な論文をリサーチした上で書かれており、いろいろなヒントがあると思います。「好き嫌いで仕事を選ぶ」「給料で選ぶ」「性格テストで選ぶ」これらはどれも間違いで、仕事の幸福度は「自由・達成・焦点(モチベーションタイプ)・明確さ(なすべきことやビジョンははっきりしてるか?)・多様さ(作業の内容のバリエーション):仲間・貢献度」の7つの項目で決められるので、それにあった形で仕事を選ぶべきと主張されてます。

「10/10/10テスト」と言われる「この選択をしたら、10分後、10ヶ月後、10年後にはどう感じかを考える」など、なるほどと思えるエクササイズも多数紹介されています。
学者や研究者まとめた本のため、実体験に乏しく、「ここまでデジタルに意思決定はできないだろうな」と思いつつも、自分の考えを整理するには、すごくいいエクササイズもまとめてられているので、就活や転職などのキャリアを考えている人は一度読んで見ることをおすすめします。

■4位 上級国民/下級国民 (小学館新書)

いま、アメリカ社会で何が起きているのか?を理解するのに素晴らしい本。階級差が「モテ・非モテ」に直結し、一部の男性が複数の女性と結婚し、事実上の一夫多妻制になっているアメリカ社会。自己の自由が認められるリベラルな社会になっていけばいくほど、能力主義な社会になり、格差は拡大していく。その階級は、人種・民族・宗教によって分断されているのではなく、「知能」によって分断されている。(一流大学を卒業したエリート白人は、高卒の白人より、同じ大学卒の有色人種をパートナーに選ぶ傾向。)

アメリカで起きていることは、今後日本の社会の流れを予測するうえで、子育てや自分のキャリアを考える上で、非常に参考になる。とにかく知識や知能を獲得していかないと、世界から分断されていってしまうということを再認識させられました。

橘玲の「2億円と専業主婦」もおすすめです。専業主婦を持つサラリーマンはぜひ一読してほしい。読んだ上で、パートナーとの人生の大切な意思決定をしたほうがいいと思います。

■5位 FCバルセロナ 常勝の組織学

「強い組織にはカルチャーがある」というのはよく言われてますが、どのようにして、カルチャーを作るのか?という本。

スタンフォードの経営大学院が、企業文化と成長の因果関係を調べるために、組織を「スター型」・「エンジニアリング型」・「官僚型」・「独裁型」・「コミットメント型」5つのパターンにわけ、アメリカのスタートアップを分析したところ、IPOまでにかかった時間がもっとも短く、倒産する可能性がもっとも短いのは、「コミットメント型」の文化をもつ組織だったということがわかりました。その「コミットメント型」組織の象徴的存在でも、あるバルセロナがいかに組織を作ってきたか?分析しています。

● スター型(サッカークラブの例:レアル・マドリード)
● 独裁型(例:チェルシーFC)
● 官僚型(例:リバプールFC)
● エンジニアリング型(例:ボルシア・ドルトムント)
● コミットメント型(例:FCバルセロナ)

自分はサッカーフリークのため、選手の名前も、チームの特徴も知っていたので、わかる-!!ということが多い本でめちゃめちゃ売れると思ったのですが、思ったほど話題になりませんでしたね。現代社会は、ビジネスの局面局面が目まぐるしく変わることが多く、一人ひとりの役割がバラバラのメンバーがプロジェクト的に動くという組織が生き残っていくと思うので、スポーツとしては「野球」「駅伝」型の組織より、サッカー型の組織論に注目が集まるのでは、予想してます。
時間があれば、再読してポイントをまとめてみたいなと思います。


■6位 文系AI人材になる: 統計・プログラム知識は不要

AI関連の本が世の中に出回ってますが、圧倒的に初心者におすすめしたいのがこの本。自分が始めてAIのプロジェクトやったのが2015年位だったのですが、そのときにこの本があれば、もっとうまくいっただろうなーと思います。最近は、ビジネスサイドの人間も、コーポレートの人間も、ざっくりでいいので、最低限AIでどんなことができるのか?を理解しておくのは必須です。

この本一冊読んで、ある程度の用語を暗記しておけば、巷のニュースなどはほとんど理解できると思います。年間1000人くらい採用の面接をしていて、一般ビジネスマンのAIリテラシーがどれくらいあるのか?という肌感覚がありますが、この本を一冊読んで完全に理解しておけば、上場企業でもAIわかってるランキングのトップ10%に入れるのではないでしょうか。


■7位 元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法

投資初心者にはこれがおすすめ、ということで読んだ本。著者は、ロボAIのウェルスナビの社長です。自分はこの本に習った投資法で、2019年は利回り20%くらいでした。2017年あたり仮想通貨に持っていかれた分くらいは取り返したでしょうか。(もう仮想通貨はやりません。。)ちなみにウェルスナビは、リスク許容度最大にしてますが、利回り5%くらいでした。

基本的に「世界経済は長い目で見ると成長していく」という可能性にかけて、全世界の株式や、債権を組み合わせたINDEX銘柄に張っておいたほうが銀行で現金で眠らせておくより得だよねという主張です。

正直自分は、毎回株価をチェックしたり、売り時・買い時を間違えて、一喜一憂するのがあまり好きではないので、まとめて給与ぶっこんで後は静観、5%くらいで運用できてたら万々歳じゃん、という考え方なので、この考え方にならっています。

2020年はリセッションが来そうなので、やや心配ですが、これも長期で見たら回復してくると思うので、直近で必要そうなお金以外は、世界経済にまとめてぶっこんでおこうと思います。

そろそろ投資とかも始めないとなーと思ってる人にはおすすめの本です。


■8位 ディープテック 世界の未来を切り拓く「眠れる技術」

ディープテックとは、「テクノロジーを使い根深い課題を解決していく考え方、もしくはその活動」のこと。具体例が豊富で非常に読みやすい一冊です。「テクノロジーをどうマネタイズするのか?どう社会課題解決につつなげていくのか?」という問いは向こう10年・20年問われ続けていくだろうし、GAFAを真似することは現実的ではない日本のこれからの戦い方が示されており、非常に視座が上がります。非常に読みやすいので、大企業の人間もベンチャーの人間も学生もこの本は是非読んでおいたほうがよいと思います。

個人的にアジアのマーケットに向き合うということは、ヨーロッパやアメリカの人間と比較したときに日本人にアドバンテージがあると思っており、こういったビジネスにいつか携わってみたいなと思わせてくれる一冊でした。

■9位 シャオミのすべて: 世界最強のIoTプラットフォームはこうして生まれた

去年一番衝撃を受けた会社です。2010年に設立された会社だですが、たった10年で、とんでもないスピードで成長してきています。史上最速で一兆円の売上を達成し、(Googleより2年、Facebookより1年早い)破竹の勢いで成長を続ける中国のIoT会社の会社がいかに成長をしてきたのかを時系列で解説しています。話題としては少し古い気がしますが、恥ずかしながら自分はあまり情報を持っていなかったので、まとめて読んでみましたが、そのスピード感、規模感に圧倒されました。

15日に一社のペースで投資をし、77社のベンチャーに投資。うち4社がユニコーンに。Miエコシステムと呼ばれるネットワークを形成し走り抜けてきているXiaomi。日本の会社や国内のスタートアップの界隈特有の雰囲気に浸かりゆでガエル気味になっていた自分は一気に目が冷めました。

■10位 FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

話題になっているから、これくらいは読んでおいたほうがいいよね、というノリで読んだ本。


分厚いけれど、一貫して、「ネガティブなニュースに踊らされすぎず、ファクトを読みうぜ」という主張がされている。報道のされかたや取り扱われ方によって、人は必要以上に世の中が悪くなってしまっているように感じてしまいがち。「悪い」と「よくなっていいる」は両立するし、悪いニュースが増えたからといって、悪い出来事が増えているとは限らない。

ビジネスの場面においても、ネガティブな報告や、課題にばかり目が行きがちで、バタバタとその場限りの打ち手を打つことで、状況が悪化してしまうことってありますよね。そんなときはふと冷静になって、「ファクトフルネス」し、時系列に沿って考えたり、全体感をもって事象を捉えると、打ち手も変わってきたりする。

たとえば人事の領域でも、「自社の従業員満足度の数字が下がっている」からといって必要以上に慌ててトンチンカンな打ち手やアクションをしてしまったりすると余計従業員の不満が募ったり、見なくてもいいことが見えてきてしまったり。

近視眼的にならず、冷静に全体を見ることの重要性を教えてくれる一冊でした。

2020年もたくさん本を読んで発信できればと思ってますので、よろしかったらフォローお願いします


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