音がきて人がくるその逆はない

シリーズ・現代川柳と短文NEO/084

 かつて「音速の貴公子」と呼ばれた者がいた。音速といえば秒速三百メートル超である。むろん生身でその速度に達したわけではないにせよ、音速の視界をよく知っていただろう。ところで、稲光が起きて三秒後にドーンと音が鳴ったら、その雷までだいたい一キロである。しかし、それはただの「知識」にすぎない。音速の視界を持っていた貴公子は雷までの距離をどう捉えていたか。いまとなってはそれは不明だが、アイルトン・セナをたんに「貴公子」とだけ呼ぶのはかなり間違っていることははっきりしている

【きょうの現代川柳】
音がきて人がくるその逆はない
/今田健太郎


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