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これも「読み」ですか? 13

どうも、ラジオポトフの今田です。
現代川柳の「読み」シリーズ第13回です。

これまでの記事は▼以下から。

それでは今回も、現代川柳作家の海馬さんがこしらえた「アサッテの川柳」を駆使して句を選び、鑑賞していきます。アサッテの川柳は、任意の文字列を入れると現代川柳1句をランダムに返してくれるおもしろ空間です。みなさんも試してみましょう。

さて、今回入力した文字列は、別役実の名著『犯罪症候群』(ちくま学芸文庫)第2章のサブタイトルからピックアップした7つです。犯罪にまつわるフレーズが並びます。

こんなかんじ。

では、やっていきます。一気に7句まいります。


【1】

失った世界ガソリンスタンド忌
/川合大祐
■太宰治の忌日が「桜桃忌」なら「ガソリンスタンド忌」は誰の忌日かな〜。と、フレームを与えられて初めてわれわれは思考をはじめる。それは575の定型から詩が生まれるのとすこし似ている。

――入力文字列「非常線」


【2】

出雲大社はコワイ話をしてくれる
/金築雨学

■カタカナで矮小化された恐怖心が相対的に「出雲大社」を大きく見せるような。いや、小さく見せるような。え、どっち。ん、どっちも。動かない光景を動いているように感じさせるのが巧みな印象。

――入力文字列「動機」


【3】

ついてくる犬にもあてがないらしい
/白石維想樓
■呆然と佇んでいる人間。そのかたわらに犬。人間が主体らしいことが「に《も》」の表記でかろうじてわかる気がするが、わかっているのはそれだけという状況が、またよるべないムードを醸成する。

――入力文字列「指名手配」


【4】

馬券裂くとき脳天に夏がある
/尾藤三柳
■破るのではなく、裂く。頭に血がのぼり、炎天下で思考停止するようにぼーっとしている。春夏秋冬に属さない単独行動の「夏」だ。次に秋が来るとは限らない、たんに夏でしかない夏。

――入力文字列「自首」


【5】

うつぶせに混み合っている夜の線描
/大下真理子

■夜の、という1滴のしずくが句に起こした波紋が単語ひとつひとつをエロティックに撫でていくイメージ。線描。混み合う。うつぶせ。よくよく思えばどれもエロティック。思い込みの力。

――入力文字列「推理」


【6】

風博士ラムネの玉を鳴らしおり
/橘高薫風
まず「風博士」は坂口安吾の小説の題であり、登場人物の名前でもある。彼は物語終盤、実際に風になってしまう。は? 本句は、その風がラムネ瓶のビー玉を揺らしたということだろう。は?

――入力文字列「海賊」


【7】

ネバーランドの残り湯を見ろ
/暮田真名
■ピーターパンのそれなのか、それを元にネーミングされたマイケル・ジャクソンの自宅の愛称なのかでふた通りに読めるが、けっきょく残り湯を見るという行為に収斂してひと通りしかないのかも。

――入力文字列「愉快犯」


【おわり】

はいおわりで〜す。このくらいのサイズ感で、だいたい週1ペースでやっていきたいな〜と思っています。今田に鑑賞させたい句がありましたら教えてください。

改めて、各句の作者のみなさん、海馬さん、そして別役実さんにありがとうございましたの11文字をお送りします。急にそんな11文字を言われても別役実さんは困るでしょうが。

ありがとうございました

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