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花束と陰謀(R18s番外編『花束みたいな恋をした』編集後期)

毎度お世話になってます、R18sの米山です!僕がこの番組のnoteを投稿するのはこれで2回目ですね。そろそろ直木賞ノミネートの声がかかる頃でしょうか。

↑こちらは前回僕が執筆したnoteです。ラジオの音声を編集する面倒くささについてウダウダと文句を垂れるという内容になっていますので、「ラジオの音声を編集する面倒くささについての文句読むの大好き!」という人はぜひ読んでみてください。「ラジオの音声を編集する面倒くささについての文句なんか読みたくないよ〜!」と思った人は、ぜひこのまま今回のnoteを読んでいってください。今回はなんと趣向を変えて、ラジオの音声を編集する面白さについて書こうと思っています!こっちならきっと気に入るはずです!


↑笑うところです


さて、今回番組で扱ったのは『花束みたいな恋をした』でした。巷のシティボーイにシティガールが絶賛している超話題作。俺らのようなカントリーサイドボーイが観に行ってもいいものだろうか、なんて思いながら観てきました。語ってきました。

さあ、お待ちかねの編集タイムです。今回は編集する前からワクワクしていました。なぜなら収録の時点で(今回は面白い回になるな…)と確信していたからです。

収録で面白かったのは、四人の映画に対する感じ方が全くバラバラだったことです。劇中のサブカル描写の軽薄さにバチギレしているオタク(私です)もいれば、反対にそこから作者の意図を読み取るオタク(角田です)もいます。ストーリー上の猫の扱いに怒っているただの猫好き(山下です)がいるかと思えば、鬼チョイ役の清原果耶をなぜか気に入ったただの女優好き(福山です)もいます。四人それぞれで見ている部分や感じたことが全く違うのだなあと感心するほどでした。多様性を実現しているRadio18sを今後ともよろしくお願いします。

そんなバラバラな四人が話し合っていくうちに、この映画に隠されたテーマ、いわば脚本家の陰謀のようなものが見えてきたのは特に面白かったです。世間の多くの人々が気づいていないだろうことに、自分たちが気づいてしまった…!という興奮がありました。俺たち、スパイみたいじゃん…!IMFの凄腕スパイとしてこの発見を世間に公開してやろうと俺は編集作業に取り掛かったわけですが、ここで一つの問題が。

俺が収録中に話した内容に、誤りがあったのです。

劇中の台詞の揚げ足を取るようにして「恋人に花の名を教えるというのは、ライター気取りがブログに書き残した言葉ではなく、森鴎外の書いた言葉なんですよ(笑)」と話している数時間前の自分の声を聞き、ふと違和感を覚えてGoogleを開きました。

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ヒットしない…

必死に記憶を手繰り寄せていくと、それは森鴎外が書き残した言葉ではなく、川端康成が『掌の小説』にて書き残した言葉だったのが思い出されました。Googleで検索をかけてみると、こちらはやはりヒットします。米山、大誤算。カッコつけて雑学を披露したつもりだったのに、文豪の名前を取り違えるという恥ずかしいミスを全世界に発信する寸前まで来ています。デロリアンに乗って自分の首を絞めに行けたらどんなに良かったか。こんなミスを公開してしまっては、それこそ俺のような面倒くさいオタクからケチをつけるお便りが届いてしまうかも知れません。「何が偏差値約70の映画部やねん」とか言われたらどうしよう?何も言い返せないな。

しかし、ここで諦めるほど米山はヤワな男ではありません。よし。この発言をなかったことにしよう。そう決めて編集作業に本腰を入れることにしました。自分の音声編集技術を持ってすれば、自分の発言を改変することなど容易いはずです。さあ、俺も『花束みたいな恋をした』の脚本家よろしく陰謀を張り巡らしていきます。

まず考えたのは「話題ごとカットする」というやり方でした。しかしこれは意外と難しい。ラジオでの会話は連想ゲーム的に繋がっていくのが基本で、あとになって以前の会話を回収するということもしばしばあります。そして何より自分が全編通して「森鴎外」を連呼している。ここで話題ごとカットしてしまっては、後々の話が繋がらなくなる恐れがあるので断念。

次に考えたのが「自分の声だけ録り直す」という方法です。しかし今回は一人一人音声を別録りするZoom収録ではなく、四人の会話を一つのマイクで録音するという収録方法を取っていたため、自分の声をカットすると他のメンバーの声も同時にカットされてしまいます。すると、自分の声だけが聞こえる部分を丁寧にカットして、一つずつ録り直す必要があります。あとは自分の演技力次第です。静かな部屋で、収録時のテンションで、森鴎外と言っていた部分を川端康成に置き換えて、もう一度話せばいいだけ。自分ならできるはず。

二時間後

そこには全てを諦め、自分の醜態をインターネットの海に葬った男の悲しい背中がありました。もう悔しいとかそういう感情はありませんでした。自分に清々しいほど演技力が無かったため、一度チャレンジしたら「これはもう無理だな」と諦められたのが良かったんだと思います。むしろ、あの下手な演技をネット上に公開する方がよっぽど危険でした。本来ならこの陰謀自体もう無かったことにしたいのですが、ただ情報を訂正するだけでは癪だったのでこういう形で自分の勇姿を残しておくことにします。嘘はいけませんね。

そんなこんなで出来上がった、陰謀が錯綜するRadio18s番外編『花束みたいな恋をした』は各種ポッドキャストサービスから絶賛配信中です。この回は人気らしく他のエピソードよりも再生数が伸びているようです。ありがたい…!誰も俺のミスに気づかないといいな…!

↓ラジオ本編のご視聴はこちらのリンクから↓
http://linktr.ee/Radio18s

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