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ムダ毛は生えるもんなー

花が咲く、草が生える、木が立つ。植える時全部植えるやのに。 植えるは植えると言う行為をした、人あるいはものに焦点を当てている。咲く、生えるやらも、動作主体である花あるいは草に焦点を当てている。 植物と一括りにせず、それぞれをユニークに扱っているのが良い。日本人特有の八百万の神信仰とも、日本人の心の豊かさ、機微を描く能力の高さの表れとも取れる。誇らしい。 一方で、 それぞれの植物に優劣をつけているようにも見える。 花が咲いてくれた。草が生えてきやがった。木が立ってる。 そう

    • チョキ出す癖ある

      「人は、完全のたのもしさに接すると、まづ、だらしなくげらげら笑ふものらしい。」ってメンヘラの文豪が言うてたけど、なんか分かる。過ぎると、笑ってまう。クソボール打ってヒットにするイチロー、ハードル全倒しで優勝するアレンジョンソン、コケかけでタックルを受けたのに向こうが飛んでいくジョナロムー。全部、過ぎておもろい。 高校の時友達がジャンケンの必勝法調べて、チョキだしたら勝てる言うてたんも、過ぎるからわろてまうんやろな。

      • Dream Fiter

        やっと桜が咲いた。嬉しそうに、写真に収める人がちらほらいる。快晴ではなく、どんよりとした曇り空なので、桜だーと言う興奮は少ない。みんなが思い描いている桜の色、実際には梅の色。富士山ももっとなだらかやし。特徴をより強調してしまう、人間の癖。日常生活でも気をつけたい。本当の桜は薄く、白っぽい。

        • 扉を開けると

          今日は真也と古着屋に行く。 真也はサークルの友達で、同じアパートに住んでいる。 俺が201で真也が303。 真也は、この前行きたかったゼミに入れず、泣きながら母親に電話していた。 面白かったので笑ってしまいそうだったが、下唇を噛み、悲しみを共有していると言わんばかりに、ゆっくりと深く頷きながら、必死に堪えた。 ちなみに今は笑っている。 ガチャっと音がなり真也が入ってくる。 インターホンを鳴らさず入ってくるこの関係性、無骨でいい。 泣きながら母親に電話する奴は、インターホンを

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        • エッセイ
          3本
        • だいがくせい
          7本
        • 物語
          2本

        記事

          デュフッ

          今日は6月23日。 誕生日前日。 現在23時55分なので、あと5分でハタチになる。 どうやらバイト中に誕生日を迎えそうだ。 勿論、キャバクラのいちボーイの誕生日を知る人なんかこの場にいる訳はない。 俺は誕生日に対して人並みの思い入れがあるので、誰からも祝福されないであろうこの状況が少し寂しい。 かと言って、「僕今日誕生日なんですよ!」とあっけらかんに言うキャラでもないので、1人寂しく心で祝う覚悟を決める。 6月24日午前0時4分。 業務をこなしている間に誕生日を迎えてい

          デュフッ

          キッチンタイマー

          たいき「で、どこ行くん?」 未知「ガスト」 たいき「ガスト?」 未知「え、嫌?」 たいき「ちょ、ガストは嫌やな」 未知「え、まじ...じゃあマクドは?」 たいき「マクド?」 省吾「嫌やって、なんでそんなマクド好きなん」 未知「いや、なんかあるやん、マクド出したらいきなり物事決まり出すみたいなん」 たいき「マクドナルド理論ね」 未知「そうそう」 省吾「なにそれ?」 たいき「なんかマクドみたいな最低案を出すことによって、みんなが意見出しやすなるみたいなやつ」 省吾「へぇー」 結

          キッチンタイマー

          そんなんあり?

          今日はバイト。 結婚式場で働いている。 お客様の要望に合わせ、音楽や思い出映像を流したりするのが仕事。 最初は、ミキサー調整を間違え新郎新婦を無音で入場させたり、ケーキ入刀直前に会場を暗闇に包んだり、両親への手紙で余興用のhip hop音源を流したりと、散々なことをやってきたが、今では退屈に思えるぐらい、完璧にこなしている。 基本的に、プログラム進行中の時間はひたすら待ち。 だからペアによってはとても気まずい。 シフト表を確認する時、みんなそっとペアも見ている。 今日の

          そんなんあり?

          合流

          未知「どうする?誰か誘う?」 省吾「あぁーどっちでもええけど」 未知「誰やろ、たいきとか?」 省吾「あぁ家おるんちゃう」 省吾「あぁおるわ」 未知「なんでわかるん」 省吾「チャリある」 たいき「なんしてんの?」 2階の窓から上裸のたいきが出てきた。 未知「省吾とご飯食べに行くねんけど、たいきも来てや」 たいき「とりあえず降りるわ」 ギリギリパンツが隠れるロンTでたいきが出てきた。 ということは、さっきはパンイチ。 もしくは全裸。これより先の想像はお互いのためにやめてお

          無骨

          今日は久しぶりに地元の友達と遊ぶ。 幼稚園の頃からの幼馴染だ。 「明日飯行こ」 「ええよ」 「ほな18時第二」 半年ぶりに会うのだが、放課後約束するような手軽さ。 「帰ってきてんねや?」 「どこにする?」 など、無いのが良い。 そっちのがカッコいい。 無骨っぽくて良い。 思えば昔からそうだ。 遊ぶ約束はおろか、泊まりの約束もできるだけ詳細を詰めないようにしている。 その方が無骨っぽくてカッコいい。 できれば親とのコミュニケーションも無骨でありたいが、どこかなりきれない

          合格発表

          「よっしゃぁーーー!!!!」 今、スマホを片手に大声で叫んでいる、これが俺、佐藤省吾。 あまり大きな声では言えないが、人の家である。 しかも、あまり大きな声では言えないが、朝10時。 さらに、あまり大きな声では言えないが、休日なので平日で言う朝7時。 ただ、第一志望に合格したのだ。 多めにみても良いと思う。 だって落ちていたら、ババ抜き終盤で10が足りないことに気づいた時みたいになっていたはず。 今、目の前で絶賛焼き上がり中の、ふわふわスフレパンケーキも萎んでいたはず

          とある夏の日 #1

          「波を起こせるプールがある」 この物語のはじまりを決めるならこの一言だと思う。 部活終わり、クラブハウスで着替えながらRはそう言った。 とある夏の日だった。 甲子園を目指しているわけでもない僕らにとって、部活とはある種のコミニティー的側面が強く、盛り上がるのはいつも練習前か終わりである。 その日も一通りの練習を適当にこなし、太陽が本気を出し始める頃には花火だ、海だ、プールだと、迫り来る夏休みの計画を話し合っていた。 そんな時Rが言った。 波を起こせるプールがある。 この一

          とある夏の日 #1

          まどろみ

          10時17分目が覚める。 最悪の起床だ。明日こそは7時に起きようと決意した昨夜の自分にあわす顔がない。 いや、しかしアラームをかけていない時点で、昨日の自分も甘えているではないか。 某少年探偵の足元にも及ばない推理とともに、昨日の自分と妙な協力関係が生まれた気がした。 最近は外に出ないせいか、夜すぐに眠れない。昨日も11時に床に就いたが眠ったのは2時過ぎぐらいであった。 眠れない夜は本を読む。そう決めている。部屋の電気を消し、豆電球のようなものをつけ読書を始める。

          まどろみ

          昼下がりのスクランブル

          ガシャンッ!という音とともに、あたり一面が濃い黄色に染まった。間髪挟まず、我が我がと愛犬3匹がそれに群がる。ゾンビ映画さながらのその光景を前に私は立ち尽くしていた。現実世界に引き戻されたといった方がいいかもしれない。耳から片っぽだけ外れたイヤホンから、さっきまで心地よかった流行りのポップスが、私を嘲笑するように淡々と聞こえてくる。 9時12分、遮光カーテンの間から漏れてくる光を頼りに目を覚ます。昨夜は10時ごろ寝床についたが、なかなか眠ることができず本を読みながら眠気を待っ

          昼下がりのスクランブル