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そんなんあり?

今日はバイト。
結婚式場で働いている。
お客様の要望に合わせ、音楽や思い出映像を流したりするのが仕事。

最初は、ミキサー調整を間違え新郎新婦を無音で入場させたり、ケーキ入刀直前に会場を暗闇に包んだり、両親への手紙で余興用のhip hop音源を流したりと、散々なことをやってきたが、今では退屈に思えるぐらい、完璧にこなしている。

基本的に、プログラム進行中の時間はひたすら待ち。
だからペアによってはとても気まずい。
シフト表を確認する時、みんなそっとペアも見ている。

今日のペアは沙織ちゃん。
気まずい度星1。
つまり、全然気まずく無い。
多分同い年。
か、一つ下。
話を聞いている感じそう。

女性に年齢を聞くのはあれ、という例のやつで、聞いていない。
実際は、さして興味も無いし、どっちでもいいと言うのが理由。

沙織ちゃんは大学に行かずフリーターをしている。
ちなみに高校卒業してから、ここ一筋らしい。
だからバイト歴で言うと少し先輩。
これは確実。

沙織ちゃんとは、よくシフトが同じになるので、それなりに話す。
彼女は恋愛話が好きなので、俺の知人かどうか関係なく、誰と誰がどうこうと言う話をよくする。
「私物心ついた時から常に誰かしらのこと好きで、恋愛無しでは生きられないんです」と以前言っていたほど無類の恋愛好きなのだ。

そんな恋愛狂者沙織ちゃんのおかげで、会ったこともない沙織ちゃんの友達と、職場の恋愛事情に詳しい。

今ホールにいるバイトの晃は、同じくホールにいるバイトの美希ちゃんに、絶賛片想い中。
今度デートに誘うらしい。

新郎新婦の近くで微笑んでいる社員の陽子さんは、2年付き合った彼氏と最近別れ、絶賛傷心中。
顔は笑っているけど、きっと心は親への手紙を読む新婦ぐらい泣いているはず。

さおりちゃんの友達かえでちゃん(会ったことないけど)は、ケンジ(沙織ちゃんも会ったことないけど)と、恋愛満喫中。

ちなみに俺はというと...

省吾「好きな人かー、おらんなー」
沙織「えぇーもったいなーい。毎日が色づくよ、絶対した方が良い。」
省吾「みんなそれよく言うよな」
沙織「うん、絶対そう。しな、しな。恋愛楽しいよ」
省吾「あ、そう。そういや沙織ちゃんの今まで付き合った人って、どんな人やったん?」
沙織「え、私? 付き合ったことないよ」

「そんなんあり?」という言葉をこらえ、ゆっくりミキサーを回す。

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