ブレット・トレインのタランティーノ要素、ジョン・ウィックっぽさ

デヴィッド・リーチ監督の「ブレット・トレイン」を観てきました。初代ジョンウィックの共同監督(クレジットなし)、デッドプール2、アトミックブロンドとアクションに凝った作品が得意なので、おすすめの監督の一人です。伊坂幸太郎の原作「マリアビートル」との比較は多くの人が書いているはずなので、別の視点から、タランティーノっぽさとオマージュ、パロディについて手短に挙げられればと思います。若干ネタバレしますので、映画を見てから読むことを推奨。

タランティーノ要素

自分の観測範囲では、本作はクエンティン・タランティーノ作品っぽいと形容されることがよく見とれます。原因としては、
1.トンチキ日本描写
2.ミュージックスコアの使い方
3.登場人物の人となりが長めの回想で出てくる
4.ゴア表現

あたりが挙げられると思います。それと、長めの表現ですが、タランティーノ作品の特徴として「長大なストーリーよりも、状況を用意して、それがどう転ぶかを鑑賞するスケッチ的な要素」が重視されると言いますが、ブレットトレインもそれに似るところはあると感じます。
また、特に自分が強調したいのは、天道虫が檸檬に話をしに行くシーン、天道虫が机の下で拳銃で睾丸を狙っていると脅しをかけますが、これはほぼ間違いなくタランティーノ監督のイングロリアス・バスターズへのオマージュです。
作品全体のタランティーノっぽさと合わせて考えると、デヴィッド・リーチ監督の目指す方向性が見えてくるのではないでしょうか。

ジョン・ウィックっぽさ

一方で、得意のアクションを生かしたジョン・ウィックっぽさもブレットトレインにはあります。環境を生かした格闘シーンが随所に見られるのに加え、セルフオマージュ?(?がつくのはジョン・ウィックパート2以降はチャド・スタエルスキ監督が単独であるため)として、
1.弾丸の切れた銃の投げつけ(三合会への襲撃シーン)
2.顔面への突き刺しカット(パラベラムに似たカットあり)
3.特殊なガンアクション(ベレッタを片手で机を使ってコッキングする)
等々挙げられると思います。
更に、ジョン・ウィック パート4では真田広之が登場予定ですが、ブレット・トレインでも暴れます。偶然の一致でしょうか?

ネタバレを含む部分:ハリウッド流の配慮

原作モノの映像化には当然原作ファンがいる訳ですが、本作では早々に「この映画は原作を元にするけど、原作とは展開が違うよ!」とアナウンスすることで原作ファンに対して一定の配慮をしているように思えます。
それは、峰岸と白い死神の関係性のシーンで、原作ではヤクザの親分として終着駅に出てくる峰岸が、すでに白い死神に下剋上されていることから、原作読者に対しては上記のようなメッセージとなるのではないでしょうか。

新幹線が京都駅に入ってからはオリジナル展開になりますが、原作ではそこまで大きな意味を持たない小道具であるトランクと暴発拳銃がしっかり役割を果たします。劇作における黄金律であるチェーホフの銃に原作よりも忠実であるという点について、評価できると感じます。

最後に、ネット上には予告編を見て「本当に原作を読んでいるのか?」との声が上がってきたそうですが、スズメバチの設定を狼に活かす(原作ではスズメバチは二人一組であることが最後に明かされるが、ブレット・トレインでは狼が「天道虫とスズメバチがコンビだと勘違いして」襲うように改変)などなど、ちゃんと原作を読んでるという考察が上がってきて感心しました。ハリウッドちゃんと仕事するやん。

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