シン・ウルトラマンとポストモダン

5/13にシン・ウルトラマンが公開されて見に行ったので、一番面白かったシーンの感想を投稿しようと思います。ネタバレが含まれるので未見の方はブラウザバック推奨。

僕は特撮とかウルトラマンとか全然知らないのですが、全般的に楽しめました。中でも面白かったのは、ウルトラマンと同化した神永が人間社会を学ぶため、レヴィ・ストロースの「野生の思考」を読むシーン。この本についてはNHKの100分 de 名著の解説がよくまとまっていると思います。要点だけ抜き出すと、現代人が蔑視する未開の社会にも精緻な論理と思考があり、むしろこちら方が現代的な”科学”よりも人間の根源に近いのではないか?という本です。このシーンは単にウルトラマンが人類文化史を学ぶという描写に留まらず、現代人→未開の部族という目線から飛び越えて、技術的に進歩した外星人→未開の地球人という入れ子構造になっている、もしくは現代人の立場が逆転しているのが面白さの一つ。

更に言ってしまうとこのシーンは、シン・ウルトラマンの大きなテーマの一つである「ウルトラマンはなぜ地球を守るのか?」という問い掛けへの回答の一つになっていると僕は考えてならないのです。
つまり、技術的に進んだ外星人や光の星の戦士から見ると、地球人は「未開の部族」に近い存在ですが、神永=ウルトラマン(リピア)はひ弱な地球人の中にも彼らなりの論理を見出し、本質的にはウルトラマンも地球人も変わらないことを理解するから、地球人を守るのです。
これはリピアと神永が同化している描写によって補強されます。
また、「未開の部族なんて滅ぼしてしまえばいい」と考える外星人やゾーフィを“モダニスト”と捉えると、地球人好きのリピアはポストモダンの立場にあると言えるでしょう。これがリピアと他の外星人の根本的な違いなのです。

神永が「野生の思考」を読むというシーンだけでこれだけ話を膨らませることができました。シン・ウルトラマンの過去へのオマージュなんかを拾い始めると、網羅できるのは庵野秀明一人しか居ないのではないでしょうか。


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