初めてサウナに行った日のこと。

雨だった。

雨の日の外出は億劫だった。

しかし私は今日、行くと決めていた。
人生で初めてのサウナに。

***

「サウナほんとやばいから!」
「一回行ったら絶対ハマる!」
「週8で行ってる。キマる!」

2年前ぐらいだろうか、周囲でこんな声が増えたのは。最初は、「なにおじさんみたいなこといってるの笑」と思っていたが、あまりにも視界に入ってる同世代のサウナーたち。頭がすっきりして心身ともに状態が良くなるとゴリ推ししてくる。

ととのうってなんだ…
サ活ってなんだ…
サウナイキタイってなんだ…

気が付いたころには気になってしょうがない存在になっていた。

実はサウナに行こうと思ったことが過去に実は2回あったが、どっちも失敗した。

1度目はサウナ激推しされた冬の帰り道。思い切って立ち寄ったら休館日だった。

2度目はちゃんと営業日にいった。別料金だという前提知識がなく、普通にお風呂だけ入ってしまった。実家の近くにあるようなスーパー銭湯では全て料金込みのことが多かったので、単純に銭湯慣れしてなくて2連敗だった。

***

あれから1年以上経ち、私はいまだにサウナデビューできていなかった。

"このままサウナを知らずに20代を終えてしまっていいのだろうか。"

そんなことを考えていた3月1日。
定期的に集まるメンバーとお茶をしているとなぜかサウナの話題になった。

「ととのうって別世界いけるらしい」
「メンタル的にすっきりするらしい」
「一回ハマったら抜けれなくなるらしい」

誰一人サウナ経験が無かった私たちの会話は、完全に怪しい粉の話をしていると勘違いされても仕方がなかった。

このままではだれも正解を知らないまま終わってしまう。それだけは避けたかったので、次会うまでに各自ととのう約束をした。

うち一人はその日の夜に早くもデビューを果たした。

結果ととのいはしなかった。

そりゃそうだ。プロサウナーたちがいる領域に、むしろ一回で行かせてもらう方がおこがましいのかもしれない。

とはいえ私もサウナデビューすると心には決めた。もう失敗はできない。前日に出来るありとあらゆる準備をした。

事前にいくサウナをチェックし、休館日でないことを確認。スケジュールに「サウナ」と入れたのは人生初めてだった。

***

雨の月曜日 夕方5時。
混んでなさそうな時間を選んでいくことにした。

キャプチャ

みんなの期待を背負って全国大会にいく先輩のような気分だった。

そして私の初サウナはこうだった。

▼流れ(3セット)
・9分→7分→8分
・水風呂 15秒→30秒→45秒
・休憩7分

▼結果
・1セット目
まずいつまではいればいいのかわからない。少ししんどくなるまで、と聞いていたが意外としんどくない…。途中で鼓動が速くなってきたので、出てみることにした。

初めての水風呂、即死しそうになった。思ったより冷たい。冷たすぎる。一瞬ででてしまった。ドラマ「サ道」で原田泰造さんが、水風呂は一気に肩まで使っているとじわじわ温かくなってくると言ってたのを思い出して、次は肩まで入ろうと心に誓った。

ととのい椅子とよばれる椅子が2か所しかなく、たまたま座ってる人がいたのでどうしたらいいかわからない。そうしているうちに休憩時間をもてあました。

・2セット目
私が行ったときはサウナ慣れした若い女性が2名ほどいた。ひとりはRifaの小顔ローラーを持ち込んでてコロコロしている。もうひとりはマイ帽子のようなものを被っていた。何のためなのかわからない。テレビで見るサウナだと男性がテレビ見ながらじっと座ってるイメージだったけど、この場の基本形は体育座りらしい。テレビがない代わりになぜか小洒落たクラシックが鳴っていた。

2度目の水風呂は肩まで浸かると決めてた。・・・耐えた。なんでこんな苦行してるんだろうと思い涙がでそうになった。…と思っていたら、んん??少しずつ寒さが治まってくる。とおもったのもつかの間。バブルがついてるタイプの水風呂により、すぐに冷たい水が押し寄せて寒くなる。30秒が限界だった。

今度は椅子が空いてた。とりあえず座ってぼーーとしてみた。腰から太ももにかけてとんでもなく冷えてた身体が、少しずつ常温に戻ってくる感覚がすごく不思議。この先にととのいがあるのだろうか。

・3セット目
ルートは慣れてきた。ただこれがラストチャンスのでととのいに対するプレッシャーが生まれていた。サウナに入っている間、問いが生まれた。「そもそも”ととのう”ことをゴールにサウナに入っていいんだろうか?・・・・・・・・・別にいいだろうな。」すぐに問いは消えた。

ラストの水風呂。やっぱり寒い。バブルがキツイ。
どれだけ頑張っても1分も入れなかった。

いよいよラストの休憩タイム。
じわじわと身体が温まってくる・・・。目をつぶったりボーとライトを眺めたりしていた、その時だった。



「あの~、カギ忘れてませんか?」



プロサウナ女子に声かけられた。PDCAを回すことに必死になりすぎてサウナ室にカギを置いてきてしまっていた。

「あ、すみません!ありがとうございます!」

全ての集中力が切れた。


***


こうして私のサウナデビューは終わった。残念ながらととのいの世界に行くことはできなかった。

でも、(サウナ以外のことを考えなかったから)頭がすごくすっきりして、身体も軽くなった気がする。3セット全うできたことで満足も少しあった。

1回目でととのえるとは思ってない。またリベンジしようと思った。

サウナ―の先輩方。
私の入り方に改善の余地があったら、教えてください。

私のサウナメンターになってください。
どうか、ととのうまで見届けてください。

***

サウナからでた頃、雨は止んでいた。
心も少し晴れてきた。

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