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#9 心理的事実と客観的事実を分ける 23/12/5

みなさん、こんにちは。
今日は2つの事実を考えてみます。

とりわけピープルマネジメントの役割を担っている方向けに整理してみます。

まず、事実は、客観的事実と心理的事実に分解できると考えます。前者は、データやエビデンスなど、誰が見てもその事象・事実は、変わらない、変えようがないファクトです。一方、後者は、その人が感じたり、思ったり、考えたり、思考したり、感情に導かれる、人の心とつながった性質のファクトです。その人にとっての真実といっても良いかもしれません。

この2つの事実が存在すること、それを分けて認識すること、その上で使えるようになると、マネージメントがスムーズになります。

たとえば、評価査定のシーンを取り上げます。
当社でも10月は半期の評価プロセスが回ります。評価キャリブレーション会議の一コマです。実際の話を参考にデフォルメしています。

メンバーの鈴木さん(仮称)の業績目標は、あるSaaSサービスの既存顧客維持率95%です(解約率・チャーンレート5%です)。期末実績の維持率は90%でした。目標達成に向けたアクションやKPIのプロセスに分解すると、達成できた指標もあれば、そうでない取り組みもありました。結果は、目標未達成です。

客観的事実は、目標を5%下回る未達成です。誰が見ても、解釈や認識の相違は生まれません。よって、達成の評価にはなりません(実際は、目標以外成果・貢献、全体の比較とバランスなど相対も考慮します。話を単純化するためにここでは割愛します)。

しかし、評価結果通知の面談後、鈴木さん(仮称)から、わたしたち人事宛にメールが届きました。
「上長からの評価結果に納得できない、不満である。見直しできないのか」との主張でした。そのメールには、Word2ページに渡る資料が添付されていました。プロジェクトの状況や、起きていた問題、鈴木さんがどのような立ち回りをしてきたか、訴えとして記述されていました。

「プロジェクトリーダーと部下のコミュニケーションが良くない中、私がハブになっていた」
「幾名が離脱していく中、私の業務範囲も広がり、残業時間も増えた。それによって私も不調の時期があったが踏ん張った」
「そのような環境で、成果の達成基準には至らなかったが、標準的な評価よりも下なのは納得ができない。私より楽な業務をしている人に、良い評価がついていると、多方面から聞いている」
「環境の悪い中で、負担も増え、体調も崩し、評価も標準的よりも低い、がんばったのに損をした気分です」

このような主張でした。
業績目標の達成度を基準とした内容ではなく、タフな環境下でがんばった事実、に焦点を当てています。これが、心理的事実です。

評価は、目標達成度を主たる根拠にして決めています。これが、評価する側の見ている景色です。一方、評価を受ける側の鈴木さんが見ている景色は、がんばった自分です。こうして、お互いに見ている事実が異なることは、往々にして起こります。

鈴木さんも、客観的事実を認識してないわけではないでしょう。むしろ、達成できなかった事実は認識しているでしょう。でも、その背景や状況、その環境下でがんばった自分の事実、を見てほしかったのではないでしょうか。もっと言えば、その点に評価の重みを乗せてほしかったのかもしれません。

客観的事実と、それに基づく判断・決断がブレることは、マネージメントする側の姿勢として好ましくありません。フェアネスと一貫性の観点からも、意思決定のものさしはブレずに維持することが良いと考えます。

ですが、相手が聴いてほしい、共感してほしいと思う心理的事実に対しても目を向ける姿勢は持ちえているとマネージメントはスムーズです。それを受け止めた上で、次につながるセルフフィードバックがはたらくよう、マネージメントに携わる方は理解して対応できると良い、そう考えています。

みなさんの会社では、評価に関する不満や認識の違いにどう対処されていますか。
それではまた。

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