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【伝説の名作】真木武志『ヴィーナスの命題』考察・解説



・前書き

 真木武志『ヴィーナスの命題』は、いわゆる伝説の名作です。
 伝説というのは、作者がいわゆる商業作家ではなく、この1冊しか出版していないからです。
 佳多山大地『新本格ミステリを識るための100冊』にも"「一発当てて名を刻む」"という標題の10選で挙げられています。
 ですが、読者と作品にとっては、作者の帰趨などどうでもいいでしょう。
 作者名で判断するのは、ただのブランド信仰です。
 そもそも多くの読者にとっては、"「一発当てて名を刻む」"で挙げられたうちの1冊のほうが、だいたいの商業作家の作歴の全作品よりも価値があるでしょう。

 じつは、西尾維新は某作で『ヴィーナスの命題』の真相を丸パクリしています。
 それにもかかわらず、剽窃の謗りを免れうるのは、『ヴィーナスの命題』が「解決編のない推理小説」だからです。
 独自の推理を自作に転用しただけだ、と強弁できるわけです。

 ですが、じつのところ『ヴィーナスの命題』の真相は一意的に解明することができます。
 するべきことは、推理系のボードゲームのように、表に関係者の機会、手段、動機を書きだしていくことだけです(映画『グラス・オニオン』でダニエル・クレイグがやっていたアレです)。

 さて、『ヴィーナスの命題』は谷川流『涼宮ハルヒ』シリーズの「長門有希の100冊」にも挙げられています。
 じつは、『ヴィーナスの命題』の真相は『涼宮ハルヒ』シリーズの某作に直接的に流用されています。

 谷川流と西尾維新という2人のベストセラー作家が、「解決編のない推理小説」である『ヴィーナスの命題』の謎を解き、それを自作に使用して巨万の富を築いたことを思うと、『ヴィーナスの命題』はソロモンの秘宝だったと言っていいでしょう。

 以下『ヴィーナスの命題』の真相を解説します。
 万一、未読のかたがいたら、けっして見ないでください。
 既述のとおり、したことは校舎の見取り図と登場人物のアリバイをまとめたことだけです。
 断っておきますが、こうしたチマチマした作業を求める推理小説はあまり良くないと思います。蔑称でクロスワードパズルと呼ばれるものです。それでもこの作業にとり組んだのは、『ヴィーナスの命題』が傑作だからです。
 読んでいるあいだ、つねに「何が起こっているんだ!?」という混乱がつづく目眩が最高ですので、未読のかたがいたら初見のまま読んでください。
 しかも、『ヴィーナスの命題』は、いわゆる青春ミステリーの傑作でもあります。もっとも、いま青春ミステリーと言うと、アニメの女子高生に欲情する中年男性の読みものという印象なので、なんではありますが…

・見取り図

平面図①(p.12) Y字型の校舎。
平面図②(p.29) 直線の廊下に各クラスが並ぶ教室棟。その中ほどから鉤カッコ型に出た特別教室棟。
 生徒昇降口、自転車小屋脇、体育館側、食堂業者搬入口の4つの出入口。各々に階段。食堂業者搬入口は食堂下。校門からもっとも近いのは食堂業者搬入口。
 1階は事務室、会議室、保健室、等。
 右側に校庭を見下ろす窓。左側に教室の扉。
平面図③(p.58) 2階:3年1-7組。3階:3年8組、2年1-6組。4階:2年7-8組、1年1-5組。
 特別教室棟:1年6-8組。
平面図④(p.61) 科学部は特別教室棟、4階。"一年の三クラスの手前"。
平面図④''(p.64) 科学部の中庭に面した窓は、視界のほとんどが教室棟。
平面図⑤(p.106) 教室棟の端、4-2階に自習室、生徒会室、図書室。
平面図⑥(p.118) [1-2、トイレ、1-1、2-8、2-7]の配置。
 2-7の向こうは下階への階段のみ。3階には購買部、2階には食堂。
平面図⑦(p.119) 教室棟の窓は南向き。グラウンド。教室棟とグラウンドの境界線上に杉並木。
平面図⑧(p.128) 生徒会室から見て、特別教室棟は左。4階の科学部室が見える。
平面図⑨(p.172) 特別教室棟に自転車小屋脇の出入口。
平面図⑩(p.254) 教室棟の廊下は2年8組の反対側に中庭に面した窓がある。

・アリバイ

アリバイ①(pp.10-5)
・由也と柳瀬は中庭に面した廊下にいる。
・西日は見えない(p.10)。影が差していて、いまは暗闇(p.12)。
・4階(p.12)。
・柳瀬は廊下の角を曲がって去る(p.14)。
・午後7時直前(p.15)
アリバイ②③(pp.10-5、17-8)
・同時刻、公文と美久子は中庭(pp.10-15)。
・公文と美久子は中庭からプレハブ小屋へ。そのとき、牧永は自転車置場に(p.17)。美久子は自転車置場へ。
・午後7時丁度、公文は堤防(p.18)
アリバイ④(p.19)
・同時刻、柳瀬は堤防(運転中)(p.19)。
アリバイ⑤⑥(pp.19-21)
・しのぶ、ツーリング(pp.19-21)。
・しのぶ、柳瀬(運転中)、コンビニの駐車場(p.21)。
アリバイ⑦(p.68)
・午後7時15-20分。由也、救急車とすれ違う。
アリバイ⑧(p.120)
・益子と由也は午後7時過ぎまで校舎に残っていた。科学部室にいた。
アリバイ⑨(pp.171-2)
・由也は午前中に登校。図書室。午後2時過ぎ、鞄の下に書置き"重大な用件アリ"を発見。
アリバイ⑩(p.256)
・"七月二十五日、月曜。午後七時ごろ。/そのとき、乃木由也は益子巧に「好きだ」と告白していた。"
アリバイ⑪(pp.260-1)
・告白のあと、益子は由也を拒絶。
・益子はその日は自転車通学だった。特別教室棟から自転車小屋脇の出入口に去った。由也は生徒昇降口に逃走した。

 アリバイを時系列順に整理すると、以下のとおりになる。

18:50
・綿中:グラウンドを離れる。
19:00
・黛:2年8組
・少女A:2年8組
---
・由也:科学部
・益子:科学部
・しのぶ:教室棟4階廊下
---
・公文:堤防
・柳瀬:堤防
19:X
・黛:2年8組の窓を開け、「来てくれたんだ」と言う。
19:Y1
・益子:科学部室から特別教室棟の階段、自転車小屋脇の出入口へ。…その後、自転車小屋へ。自転車に乗って下校。
19:Y2
・由也:科学部室から教室棟の階段、生徒昇降口へ。逃げる足音と、自分を追う足音を聞く。
19:Y3
・少女A:逃げる由也の背中を目撃。
19:Y2-3
・しのぶ:重なった足音を聞く。
19:Z
・しのぶ:コンビニの駐車場
・柳瀬:コンビニの駐車場(19:00-Zまでのアリバイ)
19:15-20
・由也:救急車とすれ違う。
・公文:堤防(19:00-20までのアリバイ)
19:01-20
・森林:校内巡回、施錠。退勤。

・解答と解説

 まず確実なこととして、事件当時、公文と柳瀬は校外にいた。よって、この2人は事件にまったく関係がない。
 公文家の問題が黛の変死事件と混線していることが、『ヴィーナスの命題』の読者を混乱させる主因だ。公文家の問題は誤導で、その点で、『ヴィーナスの命題』は長編推理小説の古典的なプロットに則していると言える。

 主な問題は少女Aの正体だ。可能性は①匿名 ②益子 ③柳瀬 ④しのぶ ⑤架空 のいずれかだ。
 上述の理由から③柳瀬はありえない。
 ⑤架空は、少女Aが掲示板の伝言を剥がしていたこと(pp.198-9)からありえない。伝言は高槻としのぶが作成したものだ。少女Aへの回答は高槻の管轄(pp.105-6)。"蒙を啓く"という表現はしのぶのもの(p.110)。少女Aが架空だとすると、高槻としのぶが創作したものだが、ならば第三者が目撃する以前に伝言を撤去するはずがない。
 なお、少女Aが実在であることはほぼ自明だが、本作がいわゆる信頼できない語り手によるものであることを鑑み、論証した。

 ④しのぶも、③架空と同じ理由によりありえない。

 ②益子は蓋然的だ。匿名の第三者を除去でき、節倹的だからだ。
 だが、19:00に少女Aは2年8組、益子は科学部にいたというアリバイにより否定される。
 傍証として、少女Aはしのぶを自宅まで尾行しているが(p.253)、由也と益子はすでにしのぶの自宅を訪ねている(p.67、p.226)。

 したがって、少女Aは①匿名ということになる。

 少女Aが実在し、なおかつ無関係な第三者であることから、その証言は信憑性のあるものとなる。
 したがって、少女Aの証言どおり、黛は2年8組の窓を開け「来てくれたんだ」と言ったことになる。
 黛が少女Aに虚勢を張るはずはない。よって、たしかに黛は窓から意中の人物を見たことになる。
 アリバイから、その人物は柳瀬ではありえない。
 ここで逆転が起こる。
 黛の意中の人物は益子だった。

 黛が書置きした2年1組の席(p.196)は、柳瀬ではなく益子のものだった。
 由也は益子が好きだ。由也と黛は相似している(p.230、p.242)。

 "しかし”彼女”は柳瀬ではなかった(総傍点)。
 月曜の夕暮れに重なっていた物語。
 だが一方は入れ替わっていた(総傍点)。柳瀬が知らないはずだ。何故なら彼女は――"(p.250)

 あえて叙述トリックと言ってもよい。この文章で、黛が呼びだした相手が益子であることについて、嘘はつかれていない。
 誤導的なだけで虚偽ではないという叙述トリックは子供騙しだが、本作はすでに、いわゆる性別誤認トリックを弄している。また、虚偽を述べないかぎりはいいというポリシーは、しのぶのものでもある(p.163)。

 そして、黛が窓から益子に呼びかけたことで、さらなる真相が明らかになる。
 黛を殺害する機会は、黛が窓から益子に呼びかけたときだけだ。よって、殺害犯は少女Aということになる。

 益子は黛の死を確証していなかった(pp.31-32)ため、転落死は目撃していないものと思われる。
 だが、黛の死の前後の事情については知っていた。
 ここで重要なのは、由也がしのぶにした偽証(pp.171-2)だ。偽証では、益子は教室棟の生徒昇降口、由也は特別教室棟の自転車小屋脇から出た。だが実際には、益子は自転車小屋脇、由也は生徒昇降口から出た(pp.260-1)。
 こうして、由也には黛の殺害の機会があったことになる。
 火曜日から一貫して、益子は由也が黛を殺害したことを疑っていた。

 この状況から演繹される、各登場人物の意図と行動は以下のとおり。
 しのぶは益子が由也を疑うだろうことを推測。益子に黛の自殺を納得させる。由也と益子の告白をやり直させる。高槻はしのぶに協力。
 黛が2年8組でなく2年1組から転落したというのは、しのぶの創作。実際にはただ少女Aが2年8組から転落死させた。少女Aが前後不覚だったことに便乗し、黛の自殺を捏造、少女Aと由也に納得させる。
 火曜日、高槻が発見した開いた窓は、2年1組でなく、2年8組のもの。高槻はたんに自分のクラスである2年8組に向かった。しのぶが高槻に代理させたのもそのため(p.30)。偽装工作はしていないし、2年1組が生徒会室への経路にあるということも後付け。高槻の役割は、たんに黛の自殺を印象づけること。しのぶが注意を払っていたのもそのこと(p.130)。本来、この作話は不要だったが、少女Aが暴走しはじめたため、より訴求的な「真実」として追加した。
 由也は黛の自殺が捏造だということを知っている(p.262)。
 由也は少女Aに襲撃されたことで、犯人が少女Aであること、益子に誤解されていること、しのぶの意図を理解(p.180)。以後、しのぶの意図に従う。
 益子はしのぶの意図のとおりに騙される。それが『解決前夜』の意味。
 牧永は公文聡美の自殺と黛の変死の類似性から、公文聡美の自殺の原因が三角関係にあったことを理解(p.82)。しのぶの意図を察知。益子にしのぶの意図と動機を伝えようとした(p.161、p.184)。

 重なっていたのは、由也と少女Aの逃走経路。ローファーの足音は重なっていたのではなく、そもそも少女Aの1つしかなかった。追う足音。逃げる足音は、益子が逃げたことからの由也の錯覚。
 しのぶが益子の懸念を晴らそうとしたのは、公文聡美が三角関係の状況("これが頂点")で自殺したため。
 しのぶはけっして入手できないものとして、"大きな物語"を欲している。その補償として、"より大きな物語"、すなわち最大多数の最大幸福を築いている。「ヴィーナスの命題」=しのぶの仮説:現実は記憶の再生にすぎない、とは、いわゆる歴史の終わりのこと。そこでは真実は相対的なもので、つねに捏造されたものでしかない。いわゆるアンチ・ミステリーの論点。

・後書き

 ネタバレになるため、前書きでは谷川流と西尾維新がどの自作に『ヴィーナスの命題』の真相を転用したのかは伏せました。
 もちろん、『涼宮ハルヒの憂鬱』と『きみとぼくの壊れた世界』です。
 『涼宮ハルヒの憂鬱』は、ハルヒに世界の興亡がかかっているという破滅的な現実を、その他の登場人物が全員で隠蔽し、ハルヒとキョンの青春ラブコメに変造するというものです。そのままですね
 『きみとぼくの壊れた世界』は、アンチ・ミステリーであり、探偵役の病院坂黒猫が世界を定立することが語られます。そして、事件の真相は、主人公の櫃内様刻が関与しないうちに、登場人物たちが容疑者から外していたというものでした。最終的に、不幸な現実は欺瞞され、最大多数の最大幸福という虚構が築かれます。だいぶそのままですね
 ちなみに、哲学者の小泉義之は、『きみとぼくの壊れた世界』について『あたかも壊れた世界』という名評論を書いています。小泉義之は『ヴィーナスの命題』が『きみとぼくの壊れた世界』の元ネタであることは知らないでしょうが、『ヴィーナスの命題』が小泉義之の専門であるフランス現代思想を援用していることを鑑みると、マッチポンプが成立しています。

・補足資料(索引)

○巻頭言
p.5 公文聡美の遺言。"「これが頂点だと思うんです」"。

○解決前夜
p.8 巧の疑問。自分はこの1週間の出来事を、まったく間違えて理解していたのではないか。つまり、黛は自殺でなく殺人だったのではないか。

○月曜(7月25日)
○1
pp.10-15 由也。4階、渡り廊下。"――何故、おれは窓をあけたのか?(傍点)"
 アリバイ①②
p.12 平面図①
○2
p.17 アリバイ③
p.19 アリバイ④
○3
pp.19-21 しのぶ。"また、ひとつの物語がはじまった。"(p.19)。
 "このパズルが”投身自殺”と名付けられてしまうことも、彼女にはわかっていた。"(p.20)
 しのぶ。白い乗用車がコンビニの駐車場に駐車するところを目撃。"新たな物語"(p.21)
 アリバイ⑤⑥

○火曜
○5
p.29 平面図②
p.30 高槻。黒板脇の窓が開いていること、黛の死体を発見。しのぶの指示の意味を理解(「あなたが適任」「私だと説得力に欠ける」)。
○7
p.31 益子。テニスコートの金網越しに、ブルーシートを確認。
pp.32-3 益子と由也、校門で遭遇。益子はボロ自転車、由也はマウンテンバイクで登校。 
pp.36 由也曰く「グラウンド側から開いている窓を見た」。
pp.36-7 由也が黛を殺害する動機。
 益子は由也に自首を勧告。

○水曜
○10
p.58 平面図③
○11
p.61 平面図④
p.64 平面図④'
 しのぶは視力2.5。
p.66 しのぶは"大きな物語"を欲している。
p.68 アリバイ⑦
○13
p.72 益子と由也、しのぶに証言。午後7時頃まで居残り、会っていた。益子が呼びだし、「成央祭でウェイトレスをすべき」と言った。
p.73 しのぶ。明日(木曜日)、由也がキレると予言。
○16
p.82 牧永。「だから死ななきゃならなかったんだ。だからしのぶ先輩は」。

○木曜
○19
p.92 吉隅は1年生時、6-8組。2年生時、7-8組。
 吉隅は2年生時、誤って3階の廊下を行きかけ、戻るときに由也と衝突する。由也は1年生時、6-8組。
 自転車小屋脇の入口から見て、"一年八組から六組まで並んだ"。
○20
p.99 益子。生徒会伝言板。少女Aへの回答を見る。"どうしてこんなにも頭が痛むのだ。"。
 女子生徒はローファー。男子生徒は靴は様々。由也はバスケットシューズ。
○21
p.100 牧永から由也へのプレゼント。益子へのプレゼント(ビニール袋)。
p.105 しのぶの仮説。現実は記憶の再生にすぎない。
○22
pp.105-6 少女Aの2通目の投書。黛の死は殺人。成央祭の中止を要求。
p.106 平面図⑤
pp.107-8 大藪は1階のトイレの窓から脱出したことがある。
 職員室と校長室にセキュリティ。高槻は、4つの出入口にセキュリティがある、という大藪の嘘を信じていた。
○23
p.110 しのぶ「"蒙を啓く"」。
p.113 由也。殺意の発作。しのぶの予言が的中。
○26
p.118 平面図⑥
 黛の席は窓側の中程。
p.119 平面図⑦
p.120 アリバイ⑧
 杉に飛び移ることは不可能。
○19
pp.124-5 益子の調査報告。
 黛の死亡推定時刻:午後7時頃。綿中が午後6時50分頃にグラウンドを離れる。森林が午後7時過ぎに校内巡回、施錠。同20分頃に帰宅。
 死体発見当日:綿中がセキュリティ解除。各出入口、図書室・自習室等を解錠。高槻は午前8時頃登校。
○30
p.128 平面図⑧
p.130 火曜日、しのぶは高槻に関係者が綿中であることを確認。要警戒。
 綿中は旅行へ。
○31
p.134 2年生から奇数クラスが理系、偶数クラスが文系。
 柳瀬は理系。益子は柳瀬に合わせ、理系に。
pp.135-6 1年生時、益子と高槻はクラスメイト。
 益子は芝中の卒業生ではない。
 益子、高槻犯人説。根拠は朝寝の高槻が早朝に登校したこと。
○(31(傍点))
pp.150-1 しのぶの証言。日曜日の夜から月曜日の午後7時過ぎまで、高槻はしのぶの家にいた。
○37
p.161 牧永から益子へのプレゼントは芝中の卒業アルバム。由也と益子で共有。
pp.161-2 益子は自分が黛を殺害するところを悪夢に見る。由也は普段から。
p.163 しのぶは黛の自殺を肯定しない。
○38
pp.164-5 しのぶ。ツーリング中に事故。"また新たな物語"。
pp.171-2 アリバイ⑨、平面図⑨
 由也、しのぶに証言。益子が由也を呼びだす。"「やっぱり重なっていたのね」"。
  由也は自転車通学、益子はバス通学。
  益子が先に帰宅。由也は部室に施錠した後、特別教室棟、自転車小屋脇の出入口から出る。
 "「この事件は、次の月曜日で終わるのよ(総傍点)」"。

○金曜
○40
pp.176-7 2年6組。坂口、おそらく公文の前席。由也、公文の後席。おそらく長谷部の前席。長谷部、窓際の最後尾。
 担任は森林。東出、女子のリーダー格。
○41
p.178-80 由也。特別教室棟4階廊下、階段踊場。"コッ、コッ"という足音に追われる夢。足音のリズムは由也自身。
 由也は突き落とされる。
  足音を聞いていたことを思いだす。
  突き落とした犯人は女子。足音は記憶と同じ。
  しのぶの「物語」を理解。"すべては”彼女”のために――(総傍点)"、"重なってしまったんだ――(総傍点)"(p.180)。
p.184 牧永から"迷える子羊"へのプレゼント。芝中の人間関係と公文聡美の転落死を提示する新聞記事。由也が受領。
p.189 牧永は益子に宛てた。
○43
p.191 3年8組は文理の別のない、東大選抜クラス。
 益子は女。
p.192 1年生時、由也は特別教室棟にいたため、益子と離れていた。
p.196 終業式の日、黛は3階廊下を走っていた。柳瀬はそれを目撃。
p.198 "ああ――窓は、逃げ道だったんだ。(総傍点)"。
○44
pp.198-9 公文と長谷部が生徒会伝言板前。
 "彼女"=少女A=由也を突き落とした犯人。
 回答。"少女Aさんへ――ちょうど一週間後、あの時間、あの場所にて"。ノックを確約させる。
 少女Aは回答を剥がす。
○45
p.199 しのぶの事故は、バイクがパンクさせられていたため。
p.200 少女Aの投書(3通目)。"成央祭を中止しないと、自殺します。"。
 回答はしのぶと高槻による少女Aの誘導。しのぶ"「月曜の朝の布石の意味」"。

○土曜
○46
p.216 由也。"入れ替わっている(傍点)。そして、重なった(傍点)。"。

○日曜
○47
p.220 由也はプレゼントの情報で、益子に牧永を追わせた。
p.221 牧永曰く、益子は公文聡美に似ている。
p.223 由也の推測。牧永は高槻としのぶを争って負けた。
○48
p.225 由也の挑発に対し、牧永は「3秒で解けた」。
○49
p.226-7 由也。益子に電話。解決前夜。
p.230 しのぶ曰く、黛については"「乃木が一番わかっているはず」"。
p.231 "益子巧が大好きだからだ。"
pp.231-2 前年度の冬、黛は益子に柳瀬の進路選択を教えることを要求。益子は嘘をつき、結果、黛は2年8組へ。

○ふたたび、月曜
○50
pp.242 由也と黛の人生は重なる。
 しのぶが由也に書置き。"主人公サマ(傍点)へ――午後七時、四階の二ー八にて。"。
○52
p.248 益子は”指定された教室"へ。
○53
p.248-9 2年8組教室。
 由也、高槻。少女Aと磨りガラス越しに対面。
pp.249-50 少女Aは黛に呼びだされた。
 "しかし”彼女”は柳瀬ではなかった(総傍点)。/月曜の夕暮れにかさなっていた物語。/だが一方は入れ替わっていた(総傍点)。"
 由也の推測。終業式の日、黛は柳瀬の席に書置き。だが、すでに席替えが行われていた。
 黛は少女Aを嘲罵。
 "「トツゼンでした、カレ、マドをあけて(傍点)――」"、"「キテクレタンダ、ッテ――」"。
 その後は記憶が曖昧。
p.250 高槻の疎明。26日、食堂業者搬入口から入校。生徒会室に向かう途中で、2年1組の窓が開いていることに気づく。2年8組から投身自殺したことに偽装。
p.252 由也。少女Aの足音は、事件当日の足音とリズムが同じ。"逃げていく足音と重なっていた(傍点)"、"後ろから、自分を追いかけてくるような足音(傍点)が迫っていた。"。由也も逃走中だった。
 由也の足音は"キュッ、キュッ"。
○54
p.253 少女A。しのぶを自宅まで尾行。
 少女Aが逃亡するとき、由也が自分の前を走っていた。
 由也の自転車をパンクさせた。しのぶのバイクをパンクさせた。
 しのぶは少女Aを匿名に保つ。
○55
pp.254-5 由也。教室棟4階廊下でしのぶと対面。
 平面図⑩
 事件当時、しのぶは教室棟4階廊下にいた。
 しのぶ曰く「足音を聞いていただけ」。「後でその意味を理解」「生きているひとを優先すべきだと思った」。
 しのぶは重なったローファーの足音とバスケットシューズの足音を聞いた。
 しのぶは科学部室で由也が益子に告白するところを目撃していた。
p.256 アリバイ⑩
 しのぶの最優先は"ささやかだけれど綺麗な物語(総傍点)"。
○56
p.257 高槻曰く、少女Aは2年1組の生徒、元の柳瀬の席、おそらく東部中学の卒業生。しのぶは少女Aに関心がない。
 高槻は益子が自転車小屋から中庭に向かい、さらに下校するところを目撃。
p.258 しのぶの目的は、この日に益子と由也を出会わせること。
 3年前、高槻は公文聡美のために公文と決闘。その結果が"頂点"。
p.259 しのぶは"より大きな物語"を欲している。
○58
pp.260-1 由也は2年1組の教室に行くことを指示された。
 アリバイ⑪
p.262 黛は2年1組から"飛び降りたことになった(傍点)"。
p.264 益子の返答。

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