見出し画像

私を撮るのは

いつも彼。
彼といっても、
彼氏という訳では無い。

彼との関係は
それはとても曖昧なものだ。

友達かと聞かれたら
悩んで
悩んで
違うと答える。

じゃあ親友かと聞かれたら
多分
それも違う。

それならやっぱり恋人かと聞かれたら
それにはきっぱり
首を横に降る。

じゃあ彼はどういう存在なのかと聞かれたら
やっぱり
カメラマンと
被写体
という関係でしかないのだ。

私と彼の間に
写真のこと以外での会話はほとんど無い。

「次はあの水族館で撮ろう」
とか
「もう少し伏し目がちに」
とか
「この写真をコンテストに応募していいか」
とか。

あまりにも素っ気ない。

そもそも私も
どうして彼の頼みを
受け入れてしまったのか。

あの時、
初めて彼に撮られた時、
悪くない
そう思ってしまったからなのか。

実際、
彼が無意識にシャッターを切ってしまったと
言っていたあの写真の私は
私自身だとは思えないほど
綺麗で、美しかった。

彼のレンズに映っている私は
あんなにも素敵なのかと、
とても嬉しかったのだ。

その後しばらくして
大学の食堂で彼を遠くから見つけた時、
私に気づいて
また撮らせてくれないか
と言ってきた時、
きっと彼も感じたように
私も感じたのだと思う。

運命だと。

だから、この歪な関係でも成り立っている。
でも
いつか彼のことを
彼氏だと
紹介する日が来たりするのかなと
少し考えたりする。

考えるだけ。


#小説 #短編小説 #写真 #カメラ






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?