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90日間 ヨーロッパ放浪記 6 ~バチカン市国~

ローマに来たら何を見るべきだろう。ヨーロッパを理解するためには、キリスト教の理解が不可欠だ。つまり、カトリックの総本山たるバチカン市国は必見だろう。よし、ローマ教皇に会いに行こう。同じ窯の飯は食えないが、同じ空気を吸うというやつだ。

バチカン市国へ入国

バチカンは"国"とはいえ、実際的な感覚では国ではない。ローマに点在するたくさんの歴史的な建物の一つ、というのが率直な感想だ。ただ、入場に列が出来るあたりは空港と同じかもしれない。

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ローマでは常に荘厳な建物に圧倒される。僕がかつて滞在した英語圏にはないものがこれだ。圧倒的な歴史、荘厳さである。一つの建物がすごいわけではなく、街全体がすごい建物で構成されている。語彙力が死んでしまっているが、これだけのものを人の手で作るというのはどれだけ大変なのだろう。細かな彫刻一つ一つまで手作りをさせた当時の圧倒的な権力、財力は今の僕には想像もつかない。

さて、旅の仲間であるジョンとマシューがこちらである。奥のおじさんはガイドだろうか。一般人の可能性も大いに有り得る。距離感が近い街、それがローマなのだ。

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ところで、彼らが信用に足る人物であるかどうか、その判断に役立ったアイテムがこの写真に写っている。一眼レフカメラだ。ジョンは一眼レフカメラを大事にしていた。僕もこの旅のために中古の一眼カメラを購入したのだが、旅の思い出を美しく残したいという心意気。そして、これは海外旅行に行き、一眼レフカメラを買うほどの余裕があることを証明している。

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さて、いよいよバチカンの中に入る。

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"おぉ、ジーザス…"

キリスト教徒でなくても思わずつぶやいてしまうだろう。もうジーザス以外に言葉が出てこない。

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もうゲームです。映画です。謎の世界観、中世ヨーロッパはここに存在した。日本のそれとは全く違う方向性ではあるが、石の持つ耐久時間の長さを最大限に利用した、現代にまで続く圧倒的な空間である。

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もし侍がこれを見たら度肝を抜かれただろう。現代日本人の僕ですらシャッターを切る手が止まらないほど、美しいものが次々と現れる。

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しかし、しかしだ。数時間もすると流石に疲れてくる。画家が命を込めて描いたかもしれない絵を人々はいちべつもくれずに歩き去っていく。人は慣れる生き物なのだ。

今回僕は一人で旅をしていたが、もし友人と長期間の旅をする場合気をつけて欲しいことがある。

それは、興味の度合いが違うと辛い、ということだ。

目的地について最初の10分は良い。1時間も良いだろう。しかし、数時間後に最初と同じペースで感動している友人とツアーを続けられるだろうか。大体わかったから先に進みたいとき、自分のペースで自由に動けるかは旅の充実にとって大事なのだ。

僕の場合は、ここで彼らと別れた。なぜなら見るべき対象があまりに広いし、さっきあったばかりの友人のために自分のローマ観光を制限する必要はない。
想像してみてほしい。あなたは丸一日の自由時間を持っている。そして、ディズニーランド、ディズニーシー、USJの3つのパークに一瞬で移動出来るとしよう。もしここで自由に観光して良いと言われた時、どうすれば一番楽しめるだろうか。どこから見るか、何をするか、どこで休むか。きっと優先度はバラバラだろう。しかもここは二度と訪問しないかもしれない遠い遠い異国のテーマパークなのだ。

一人で街を歩く僕は好きに写真を撮る。観光地や名所と言われる場所は素晴らしいが、やはり何気ない街が好きだ。自分の目で美を、興味を見つけ出すのだ。観光地のパンフレットを作りにきたわけではないのだ。

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ただの道路ですら異国を感じて気分が高揚する。

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レストランに入りたい誘惑に駆られるが、無駄遣いをするわけにはいかない。これは3ヶ月も続く旅だ。とてもじゃないが毎食レストランに入る余裕はない。ひとしきり街をぶらぶら歩き、路上の屋台で買ったパニーニをかじりながら宿に戻る。これがローマか。バチカンだけが輝くわけではなく、街全体が統一されたテーマを持っている。日本には見られない街づくりの意志を感じることができた。

この日は、暗くなりきる前に宿に戻った。まだ旅のリズムが掴めていないし、明日への準備もある。初日から疲れすぎるわけにもいかない。宿のwi-fiでネットサーフィンをするのも楽しみだ。ちなみに、この旅のために小型のノートパソコンを購入した。通常より一回り小さく、調べ物とネットくらいにしか使えないが、移動が多いバックパッカーには最適だ。当時にスマホがあったら、旅の様子もかなり変わっていただろう。

宿の清潔さは今ひとつだが、二日目になると不思議と自分の部屋のような気がしてくる。昨夜と同じベッドに横たわり、写真とともに一日をふり返る。初日にしては悪くなかった。いや、スタートとしては上々ではないだろうか。遠くから薄っすらと流れるMTVの音楽を聞きながら、早めに休むことにした。

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