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#短編小説
【小説】窃盗と5の高さ
風とオレンジの町と言われていた。カラリと暑い日に、薄っすらと汗ばんだ肌を撫でていく風が通り抜けると、この町の人たちは「オレンジが磨かれている」と言って目を細める。目を細めるのには2つの理由がある。1つは風に舞う砂ぼこりから目を守るため。もう1つは、貧しい者の粗末な姿を視界に入れないためである。
市場が一番活気づく時間帯。少年はボロ切れ一枚と砂ぼこりをまとって、オレンジ売りの店先を伺っていた。
風とオレンジの町と言われていた。カラリと暑い日に、薄っすらと汗ばんだ肌を撫でていく風が通り抜けると、この町の人たちは「オレンジが磨かれている」と言って目を細める。目を細めるのには2つの理由がある。1つは風に舞う砂ぼこりから目を守るため。もう1つは、貧しい者の粗末な姿を視界に入れないためである。
市場が一番活気づく時間帯。少年はボロ切れ一枚と砂ぼこりをまとって、オレンジ売りの店先を伺っていた。