弟子と私の浅夢くずし《0/14》
[関連]
※1作目「神様と11人の私」→https://note.com/ra_wa/n/n4bec367bbfd7
※2作目「おひめさまには内緒の話」→https://note.com/ra_wa/n/n83f26f11427b
※※※
優しさって、なんだろう。
目の前の光景に対して、そんなことを思う。
「シン君は、優しいね」
「そんなことは、ないと思う。俺には、悠里さんのことをつかみきれてない気がするから、分かろうとは思ってる。多分、梁瀬さんみたくはなれないんだろうと思う。彼女の方がずっと優しい」
あの時、好きだった彼はそう言って遠くを見ていた。
「ヒナノは、優しいね」
「どうしたの、唐突に。…ユウとは、ほら、色々あったし、もう身内認定しちゃったから、どうも甘くなっちゃう。優しいというか、放っとけない感じ。
まあ、そういう意味では、前に話してくれた空想の人とかも、ユウ的には『優しい』に入るのかな?私にはちょっと分からないけど」
親友はまた始まった、という顔をして、可笑しそうに笑った。
《キリは、優しいね》
《そうだな》
《否定しないんだ》
《俺はユウと同じくらい優しいよ》
《皮肉かな?》
《どうだろうな。ともかく、ユウに優しいって言ってもらえるのは嬉しいから、ドンドン言ってくれ》
私が空想で作った彼は、茶化して言った。
優しい人たちを思い出す。
寄り添うこと。受け入れること。守ること。応援すること。
どれも優しさだし、正解はないのだろう。
彼らなら、この場をどう立ち回るだろう。
そもそも、こんなことにならないだろうか。
…だが、今ここにいるのはその人たちじゃない、私だ。
※※※
『姫先輩。好きです』
夕暮れの日射しが入る後輩の部屋で、私は薬でぐずぐずになった彼女から告白を受けている。
『ほら、クイズです。抱き締めてくれますか。一緒に死んでくれますか。見殺しにしますか。素敵な偽善者になる、チャンスですよ』
目分量をしくじった優しさに酔ったその目は、いつか鏡で見た誰かに似ていた。
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