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芥川龍之介 作『地獄変』

俳優が時代劇に備えて乗馬を習ったり小説家が作品にリアリティーを持たせるため取材に赴くように、実際に見たり体験して自分がどう感じたかということは、表現活動において大きな力を持つと思います。

もちろん実際に体験出来ることばかりではありませんから創造力の豊かさは必要ですが、実体験に勝るものはないでしょう。

『地獄変』は、実体験によるリアルを求めるあまり身を滅ぼした絵師、良秀の物語です。

その目で見たものしか描けないと人を傷付け、ついには実の娘を見殺しにしてまで絵を描くことに没頭してしまっては、もはや人ではなくなってしまいます。
この世ならざる者に憑りつかれているであろう良秀は地獄変を描き上げて亡くなってしまいますが、彼は死後、きっと地獄へ行ったのでしょうね。
そんな良秀ですが、クリエイターとしてはある意味幸せだったのかも…なんてふうにも思ってしまいました。

著名な芸術家が身を滅ぼすというのは今も昔もよく聞く話で、天才であればあるほどそういうイメージがありますが、創造するということは、それだけ危うさが伴う行為なのかもしれません。

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