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『自分の人生を取り戻す解毒剤のような映画』

『パーマネントバケーション』(1980)


☆監督
ジム・ジャームッシュ

☆出演
ジョン・ルーリー
レイラ・ガスティル
リチャード・ボース


☆STORY
落ちこぼれ気味の16歳の高校生アリーが、自分の周囲にも様々なアウトサイダーのいることに気付き、その出会いがおのずと、旅へ向かう自己の指針を決めていく……。


☆感想
オーソン・ウェルズは「ひとりの映画作家について知るべきことは、すべてその第一作の中に見られる」と発言し、ジム・ジャームッシュは「処女作に作家のすべて」を綺麗に表現した。


彼の卒業制作であり、デビュー作でもある『パーマネントバケーション』。


今では評価されるジャームッシュも

ニューヨーク大学の大学院映画学科の授業は

「商業映画の世界に入って仕事をしていくための教育」

「決まったパターンに基づいた商業的な映画を撮るための技術を訓練する場」

であり、彼との相性は良くなかったらしい。


実際、『パーマネント・バケーション』をニューヨーク大学主催の学生映画祭に出品した際


「こんなのは今までで最低の作品だ」


と酷評を受けたみたいだが、今では何十年と根強くファンの支持を獲得し続けている。


『パーマネントバケーション』を直訳すると「永遠の休暇」。


それが表すのは、主人公の少年の事。

あなたは休暇と聞いて何をする?


遠くに旅行に行ったり?

ショッピングしたり?

趣味に時間を使う事がもしかしたら多いのかもしれない。

けど本作は、ほとんど何もしない。


した事と言ったら、眠れないままニューヨークの寂れた裏通りを歩き回り、一緒に住んでいる少女リーラのアパートにふらっと戻ってきては、狭い部屋でビー・バップのレコードをかけて踊るくらい。


なぜそういうオフビート感のある映画を制作するかと言うと、ジャームッシュの根幹となっている「アンチ・ドラマ」にある。


例えば「売れる映画」の黄金の法則として数々の教則本で示されている脚本の三幕構成やハリウッド流儀のストーリーテリングとかあるけど、全く無縁な、独特の作劇術。


彼にとって彼にとっては人生それ自体が旅であり、何も起こらない日常にも、ある種幻想性を感じさせる、ひとつの寓話へ変貌を遂げる。


ここからが本題です。


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