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『今の世の中を監督のフィルター越しに、見えてくる物欲にまみれた世界に生きるゾンビ』

『デッド・ドント・ダイ』(2019)

☆監督
ジム・ジャームッシュ


☆出演
アダム・ドライバー
ティルダ・スウィントン
ビル・マーレイ
セレーナ・ゴメス
スティーブ・ブシェミ
イギー・ポップ
RZA


☆STORY
警察官が3人しかいないアメリカの田舎町センターヴィルで、前代未聞の怪事件が発生。
無残に内臓を食いちぎられた女性ふたりの変死体がダイナーで発見された。
困惑しながら出動した警察署長クリフ(ビル・マーレイ)と巡査ロニー(アダム・ドライバー)は、レイシストの農夫、森で野宿する世捨て人、雑貨店のホラーオタク青年、葬儀場のミステリアスな女主人らの奇妙な住民が暮らす町をパトロールするうちに、墓地で何かが地中から這い出したような穴ぼこを発見。
折しも、センターヴィルでは夜になっても太陽がなかなか沈まず、スマホや時計が壊れ、動物たちが失踪する異常現象が続発していた。
やがてロニーの不吉な予感が的中し、無数の死者たちがむくむくと蘇って、唖然とする地元民に噛みつき始める。

☆感想
俳優の豪華さといい、作品のユニークさがなんとも言えないジャームッシュの世界観を存分に味わえる。


中でもカリスマロックンローラーの絶大的な人気を誇るイギーポップは『デッドマン』『コーヒー&シガレッツ』などとジャームッシュと親交が深い。そして同じくWu-Tang ClanのリーダーRZAなども『ゴーストドッグ 』『コーヒー&シガレッツ』以来の出演。

そのイギーポップが本作ではコーヒーゾンビとして出てくる。「コーヒー……」と繰り返しながら人間を襲う。

それが結構笑えるところなんだけど。笑


「あなたは何ゾンビ?」


この映画は一応ゾンビ映画だけど、従来のゾンビとは少し変わって、生前に欲望を抱いていたものに執着し、死んだ後も縛られる。という習性があり「シャルドネ……」と繰り返すワイン好きゾンビや、お菓子ゾンビ、スマホ・ゾンビ、スポーツやファッション、Wi-Fiを求めて彷徨うゾンビももいる。


そのユニークな設定から本作に登場するゾンビは、理性を失い欲望や憎しみに囚われた人間たちの姿とも捉えられる。


(※続きはプロフィール欄のリンクから。)

そのワケは………

ボブという世間から離れ森の中で生活している一般的に変わり者だと言われる人物がいて、ゾンビ騒動の一部始終を覗く傍観者なんだけど、ボブからすれば消費社会の中で生活し、物欲にまみれた世間の人間の方が異常で、彼からすれば生者もゾンビも変わらない、自分の欲にまみれた怪物だという事。


望遠鏡で眺めている世捨て人ボブの姿に、カメラを通じて現実を描くジャームッシュの姿が重なるなと思った。

ここからが本題です。

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