幻聴は、現実じゃない

 私は今、統合失調症の薬を飲んでいる。薬を飲む前、私は幻聴に言い返す日々を送っていた。

『サッサと死んだ方が良いよ。その方が楽になれるよ』「うるさい!」
『僕はずっとここでお前を見ているよ』「あっち行って!」
『やっぱり拒絶されてるよ。応援しちゃいけないよ』「消えろ!」
『いい加減にしろ!』「もうやめて!」

 毎日毎日、こんな具合だった。

 この頃私は、この幻聴を「幻聴」とは思っていなかった。「現実」であると思い込んでいた。なぜなら本当に、耳のすぐ横や頭の真上から聞こえてくるからだ。決して頭の中からではない。そしてその声は、必ず知らないおじさんの声だった。

 この私の「現実」を打ち砕いてくれたのは、病院の先生だった。

 初めて病院に行った日、先生は「それはあなたの頭の中だけで起こっていることなんだよ。だから、もし声が聞こえたら『頭の中で起こっているって先生が言ってた!』って、強く念じてごらん」と言った。

 この時初めて、このうるさい声が「幻聴」であるということを知った。

 この日以降も幻聴は続いたが、その度に「先生が言ってた!」と強く念じるようになった。「先生が言ってたんだ!」と言い返してしまうときもあったが、だんだん言い返すことは無くなった。

 そのうち、文字の読み書きがまた出来るようになってきて、ツイッターを再開することになった。そして、幻聴が聞こえたらツイッターに書くようになった。

 ツイッターに記録することで、完全に幻聴を「幻聴」と理解することができるようになった。

 今でも、幻聴は聞こえる。知らないおじさんの声でいきなり頭ごなしに怒鳴られるのは怖いし、精神も摩耗する。だけど、現実とは思っていない。もう、言い返す必要もない。私は大丈夫。きっとこれから、もっと大丈夫になっていくのだと思う。

#思い込みが変わったこと

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