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パニック発作:新幹線

地方の会議に出席する為、
新幹線で約1時間半乗車しなければならない時があった。
前日から少し緊張はしていたけれど、
たかが1時間半。
スマホ触ったり外の景色見たりしてたら
あっという間。
きっと大丈夫。
そう考えた。

朝早い時間だったから乗車率が高く、
席もほぼ満席。
窓側の2人席。
隣はまだ空席だった。

席に座って上着を脱いで
荷物を足下に置いて
手にはスマホを持って
流れる外の景色を見ていた。
大丈夫。
景色がキレイだと思えるから
平常心ってこと。
このままいける。

次の停車駅に着いて
隣に人が座って来た。
一瞬挨拶をして窓の外に目を向けた。
隣の人がパソコンを開いて
資料の整理をしている様子が映る。
後1時間少しかな。
隣の方の邪魔にならないようにしないと。
このままじっとしてれば大丈夫。

大きな川が見えた。
あ、なんか不安。
なんか怖い。
ドキドキする。
発作出そう。
どうしよう。
怖い怖い怖い。
心臓がバクバクして来た。
息が吸えない感じがする。
呼吸が苦しくなって来た。
背筋伸ばして座り直す。
外の景色に目が回る。
だめ。
絶対だめ。
死ぬかも知れない。
苦しい。
どうしよう。

身体が支えられない。
息苦しいから背もたれに背中を付けられない。
身体を丸めて頭を前の座席のシートに預ける。
手が震える。
止まらない。
怖い怖い怖い。
外に、外に出たい。
ここから離れたい。

『すみません、お手洗いに、、、』
隣の方にそう伝えたけれど、
動けない。
立ち上がれない。
“具合悪いですか?”
“大丈夫ですか?”
返事が出来ない。
顔も見れない。
視線の先は床しか見えない。
もう無理。
苦しいんです。

隣の方が声を掛けてくれるけれど
反応出来ない。
呼吸が荒くなる私を見て
周りがざわついている。
恥ずかしい。
ごめんなさい。
ここから出して下さい。

車掌さんが2人来て
私を抱きかかえて連れて行く。
通路に出て
多目的室に向かうまで
何度も立ち止まって
呼吸のタイミングを見計らいながら
数分掛けて辿り着く。
車掌さんから持病の有無を聞かれる。
『パニック障害なんです』
『ごめんなさい』
『少しだけここに居させて下さい』
途切れ途切れにやっと言えた。

重病じゃ無いんです。
精神疾患なんです。
大袈裟にしないで欲しいんです。
こういう症状が出る病気なんです。
どうか分かって下さい。
心の中の思いは言葉にならない。

車掌さんが心配して
そばに付いていてくれているけど、
何をどうしていいか分からない様子が伝わって来る。
恥ずかしくて
情けなくて
申し訳なくて
泣けて来る。

会議欠席すれば良かった。
新幹線なんて乗るんじゃ無かった。
外に出たい。
新幹線から降りたい。
早く、早く駅に到着して欲しい。
この空間が耐えられない。
もう嫌だ。

冷や汗が止まらない。
手が痺れて力が入らない。
死ぬかもしれない恐怖感でいっぱい。
呼吸が苦しい。
空気が欲しい。
怖い。
怖いよ。

次の停車駅まで実質15分程だったと思う。
でも私には果てしない時間に感じていた。
停車駅で車掌さんに降ろしてもらい、
荷物も運んで来て頂けた。
ベンチに座ると
別の駅員さんが来て介抱してくれた。
外に出てから30分程。
呼吸の苦しさから少しずつ解放され、
話せる様になった。
事情を説明して謝罪した。

新幹線で隣に座っていた方
車掌さん
乗客の方達
誰にも謝罪やお礼をすること無く
迷惑を掛けたまま去ってしまった私を許して下さい。

もう二度と新幹線には乗りません。
そう思った。

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