Black Country, New Road 歌詞解釈 "Chaos Space Marine"編
イントロダクション
以前、Black Country, New Roadの"Ants From Up There"というアルバムに収録されている”Snow Globes”という曲の歌詞に関する考察記事を書いたのですが、①同アルバムに収録されているどの曲も歌詞が難解であること、②このアルバムは作品を通して登場するモチーフやメタファーが面白いので他の曲についてもやることで新たなつながり・アルバムを一貫したテーマが見えてくるかもしれないと思ったこと、を踏まえ1曲ずつ同じようなことをしてみようと思い立ちました。(全曲やるかはさておき…)
ということでインスト曲のTrack 1 "Intro"を飛ばしてTrack 2 "Chaos Space Marine"から始めてみたいと思います。
もちろん、かなり個人的な解釈なので誤りや思い込みを多く含むことが予想されます。編集可能なのがnoteのいいところなので、それらに気付いた方は優しく指摘してくださると幸いです。
歌詞
WarHammer40,000
この曲について考えるうえで、まずタイトルの意味が気になる。その謎を解くために、とあるテーブルゲームとそのキャラクターについて知っておく必要がある。
そのテーブルゲーム(ミニチュアゲーム)とは"WarHammer40,000"であり、Wikipediaによると以下のようなゲームである。
タイトルである"Chaos Space Marine"とはこのミニチュアゲームに登場するキャラクターの名前だったのだ。私はこのゲームについての知識が皆無なのでなぜこのキャラクターをタイトルに選んだか考えるためにもう少し調べる必要がある。ゲーム内の"ケイオス・スペースマリーン"は以下のような設定を持つキャラであるようだ。
ゲームの背景ストーリーを完璧に理解・解説することはあまりに多くの労力を要すると思われるが、曲の解釈には上の太字部分を理解しておけばいいように思う。
歌詞解釈
以上を踏まえて歌詞について考えてみる。歌詞は以下のように始まる。
"And though England is mine, I must leave it all behind. The war is over"
"Lift the anchors set an open course for New York state lines"
「イングランドは手に入れたが、去らないといけない。錨をあげ、ニューヨークに向かう」といったところであろうか。これはまさにChaos Space Marine的な態度であるように思える。つまり、所属を離れアナーキーな態度で旅を始める、といったところが通じるように感じられる。その後も以下のような"Home = England, London"での後悔や疑念が続く。
"I think of all that went wrong"
"Love they made there (England, London), will it really last anytime?"
このような歌詞やChorusでの以下のような内容を踏まえると、この曲の大きなテーマは、"Home = England, London, body"を離れ、新たな安住の地を求めて旅を始める、ということであると考える。
"So I'm leaving this body and I'm never coming home again"
"I'm becoming a worm now, and I'm looking for a place to live"
しかし面白いことに、このようにこの曲はアルバムの(Introを除いて)最初の曲として最適な、片道切符の旅の始まりを示唆する内容である一方で、この曲にはOutroで次のようにアルバムの締めくくりともとれる内容も含まれている。
"I'm coming home"
"Billie Eilish Style"
"A concorde will fly"
"Ignore the hole I've dug again"
これらは次のような理由でアルバムの締めくくりのように感じられる。まず、"Never coming home again"という同曲中での宣言と矛盾するように、"I'm coming home"と帰還を宣言している。さらに、その他の3つの文は以下のようにアルバムの他の収録曲の一節の引用となっている。
"Billie Eilish Style":Track 5 "Good Will Hunting"で再登場する。
"A concorde will fly":Track 3 "Concorde"およびTrack 10 "Basketball Shoes"で再登場する。さらに"Concorde"はアルバムのアートワークにもなっており、アルバム中でも最重要なモチーフといえる。
"Ignore the hole I've dug again":Track 6 "Haldern"で再登場する。
"Billie Eilish Style"についてさらに穿ちすぎな考察をしてみる。彼女のデビューアルバムである"When We All Fall Asleep, Where Do We Go?"での最終曲"goodbye"は歌詞全体がアルバム収録曲の歌詞の一節を引用する形で構成されている。
つまり、(分かりにくいと思うが)"Billie Eilish Style"というアルバムの他の収録曲の歌詞の一節を引用するという行為そのものがBillie Eilish Styleなのだ。
まとめ
以上のように、この曲は"Home = England, London, body"を離れ、新たな安住の地を求めてアナーキーな旅を始める"という内容のオープニングトラックであると同時に、開始点とは異なっているかもしれないが"Home"への帰還と、アルバムの他の収録曲の内容を振り返るクローザーのような役割も果たす位置付けであるように思える。("goodbye"がそうであるように。)
あるいは要約・Abstractのような役割と捉えることもできるのかもしれない。論文などの文書において要約を全体の頭に配置するように、BC,NRはこの曲をアルバムの最初に配置した、と。
次回以降は"Chaos Space Marine"で開始点と終着点が示された、または要約された"Ants From Up There"の旅の道中に相当するそれぞれの収録曲について考察していきたい。では。
"In time, you will find…"
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