燃焼と再生



「完全犯罪に興味はありませんか」


ツイードのキャバジンとコーデュロイを身にまとった一ッ目の男がおれにそう言った。



「なに、簡単なことですよ」

一ッ目の男が笑いながら言った。口なんてどこにあるんだ? しかし、そんなことはどうでもいい。



「生まれてきて、死ぬまで生きる、ただそれだけです」

この男は初めて会ったはずなのに、なんとなく知り合いのような気がして、いや、むしろそれ以上の親近感を覚えていた。



おれたちがいるのは紫色のビームの上で、それ以外は闇だ。ここはどこなんだ、とおれが訊くと、彼はある意味では地球だよ、と答えた。

俺は言った。ところで君は何者なんだ?



「おれは男だよ。この地球に生まれた」

ああ、そうかい、それがなにか? おれは思った。そして、言った。

「おれだって男だよ。地球という星に生まれた」



「君も、そしておれも、罪悪なんだよ」

彼はそう言った。

「本当はみんなわかってるんだよ。でも直視するのが怖いから考えないようにしているだけで」

さらに彼は続けた。

「社交も享楽も、すべてそれの逃避なんだよ。ほら、見てごらん」



彼の指差す先には燃えている星があった。

「すべては燃えている。君だって、おれだってそうさ。そして、燃えつきたら、蘇ってまた燃える」




おれにはおそらく彼の言った内容の1割も理解できていないだろう。でもなぜか、おれにもそんな気がした。そして思った。すべて燃えつきてしまえ、と。




彼との会話は、きっと誰とも共有はできないだろう。でも、だからこそそれが真実なんだって思えた。

そして、彼は言った。



10



「おれは男だよ。わけあってこんな姿でいるけれど、おれだって君と同じ星に生まれた男なんだよ」

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