見出し画像

胸腰筋膜とは何者

胸腰筋膜ってなんとなく知ってるけどどんな組織で構成されているのかって結構曖昧だったりします。

背中に付着している筋膜組織というのは間違いないのですがどんな組織で、どんな役割で、何に働いて、などなんとなくの認識が多いと思うので、今回はこの辺りを紐解いていきたいと思います。

まず言えることは、胸腰筋膜はとても重要な筋膜組織ということです。

なぜ重要なのかというと、

・脊椎を安定させる
・仙腸関節を安定させる
・脊椎、骨盤、下肢間の張力伝達機能

このような役割があります。

その為、胸腰筋膜に関わる筋を知ればストレッチやトレーニングなどに応用が効くと思います。スポーツパフォーマンスを向上させることや痛みを改善するためのヒントになると思います。

胸腰筋膜(Thoracolumbar fasia 以下TLF)について見ていきましょう。

・胸腰筋膜とは

TLFを説明していく前に、まずは筋膜についての認識を確認します。

筋膜とは、浅筋膜、深筋膜、髄膜筋膜、内臓筋膜の4つに分けられます。

この中でTLFは深筋膜に分類されます。深筋膜は全身の筋骨格系全体を覆う一続きの筋膜でコラーゲン線維から構成されます。

深筋膜のコラーゲン線維は腱や靱帯など規則正しい配列とは違い、不規則な配列をしているので一方向だけでなく多方向の張力に対して適応があります。逆を言えば腱や靱帯は一定方向のストレスにしか対応することができません。

つまり、TLFは強固なつくりとなっている、ということになります。

以上を踏まえた上でTLFについて解説していきます。

TLFは頚部・胸部・腰部と分かれていて、腰部では3層構造となっています。

後層は腰椎と仙椎の棘突起、棘上靱帯に付着し、広背筋と大殿筋を連結しています。

中間層は腰椎横突起と横突間靱帯に付着し、腹横筋・内腹斜筋・外腹斜筋と連続性があります。

前層は腰方形筋を包み大腰筋と連結し、腰椎横突起の前面に付着しています。

さらに、TLFには感覚受容器の存在が認められていて、温痛覚を感知する自由神経終末や触覚を感知するルフィニ小体やパチニ小体が存在しています。豊富な神経組織の確認がされています。

以上のことからTLFには前面や後面、側面から様々な筋肉が連結しているので体幹の安定性や脊柱の安定性には非常に重要だと考えられます。また、自由神経終末なども豊富に存在することから痛みにも関係することが予測されます。

・どんな時に働くの?

TLFに付着している組織が分かって神経組織も豊富に存在しつくりが強固なのは分かりました。それではどのような時に何が働いてTLFの張力が高まり、仙骨や脊椎の安定性が高まるのでしょうか。この辺りを見ていきたいと思います。

TLFの張力を発揮させるためには伸長されて緊張した状態が必要です。

これには、

①    体幹を前傾し腰椎を屈曲
②    TLFに直接付着する筋の自動収縮で伸長される

つまり、筋膜が伸長されるポジションでTLFに関与する筋の収縮が起これば「伸長されて緊張した状態」を作ることができます。

実際に腹横筋や内腹斜筋の収縮によってTLFに伝達される力は腰椎に伸展トルクをもたらすことが分かっています。腹横筋の収縮によって腰椎中間位における分節的安定性に関与
していることも分かっています。

さらに、広背筋や大殿筋もTLFへの腰部伸展トルクをもたらします。

例えばリフティング動作の際にTLFは張力を発生させますがこの時、大殿筋は股関節を安定させ制御するのに働きます。広背筋は上腕骨~骨盤や脊椎に付着するので長いモーメントアームを利用して腰部伸展モーメントを発揮させることができます。

つまり、広背筋と大殿筋をともに働かせることでTLFには張力が働き剛性が高まります。さらに、腹横筋や内腹斜筋の収縮によっても腰部を安定させながら伸展トルクを発揮させることができます。

このような働きによって、

・脊椎を安定させる
・仙腸関節を安定させる
・脊椎、骨盤、下肢間の張力伝達機能

を担うことができます。

逆を言えばこれだけ安定性の役割がある組織なので腹横筋や内腹斜筋などローカル筋の弱化や大殿筋の萎縮などがあれば不安定となり腰部にメカニカルストレスが生まれて痛みとなって現れます。

まとめ

・胸腰筋膜は前層・中間層・後層が存在する
・神経組織が豊富に存在するので痛みを感じる
・張力が発揮されることによって腰部の安定性に繋がる

参考文献

原著第2版 筋骨格系のキネシオロジー

成田:脊柱理学療法マネジメント

F H Willard:The thoracolumbar fascia: anatomy, function and clinical considerations

由留木裕子、他:腰背部痛における胸腰筋膜の関与

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?