サガン鳥栖は本当に経営危機なのか?

以前から注目してましたが、報道を掻い摘んだ限りだといよいよ危険だと感じたので、調べてみました。今の考えを書き出しておこうと思います。Jリーグのサガン鳥栖の経営危機の件です。

サガン鳥栖が20億円の赤字を抱えるまで

まずは事実の確認として、佐賀新聞の記事を拝借します。

サッカー・J1サガン鳥栖の運営会社サガン・ドリームス(竹原稔社長)は26日、第16期(2019年2月~20年1月)の収支決算を発表した。広告収入が8億1千万円(前期22億9千万円)と大きく減少したことなどが響き、当期純損益は約20億円の赤字となった。赤字は2期連続。約20億円の当期純損失については、ほぼ同額を増資でまかなって対応した。

私がサガン鳥栖の経営が大変そうだと予感したのはフェルナンド・トーレス選手を獲得した辺りからです。トーレス選手の年俸はネット上で調べた限りだと5〜8億円だったそうです。そして2018年、2019年の2年間在籍しました。

オーナーの資金力が盤石な名古屋グランパス(トヨタ)やヴィッセル神戸(楽天)であれば、この程度の選手の獲得は納得ができます。あるいは、浦和レッズや鹿島アントラーズなどのような常に優勝を狙える戦力を整えているチームであれば、納得ができます。しかし、サガン鳥栖はどちらにも当てはまりません。端的に言えば「背伸び」をした印象でした。

結果的に勝負は失敗でした。2018年は14位、2019年は15位でいずれもJ1残留争いに顔を出しています。ビッグネームの加入がチーム成績にどう影響したのかは私には分からないので省略します。

1つ言えるのは、経験則としてビッグネームが数人加わっただけではチームは劇的に強くなりません。それはフォルラン選手を獲得した2014年のセレッソ大阪(J1・17位=J2降格)に代表されるように、よくあることです。

さらに結果として、大口のスポンサーだったCygamesやDHCのスポンサー撤退が続きました。選手獲得による勝負とスポンサーの撤退は一見して関係無さそうです。

しかし、ここには因果関係があると堀江貴文氏が言及しています。

 堀江氏はサイゲームスに関して「たぶん町田の件は関係ないはず。そもそもスポンサーだから規定には抵触しない」と言及。「おそらく真相は鳥栖の社長が大口スポンサーに断りもなく高額年俸の選手とったり、息子を社長にしてバスケットボールチーム作ったりした挙句、さらに高額のスポンサー要求をしたことによると思われ」と自身の考えを述べ、「せっかく盛り上がってたのに大変だよねこれから」と気遣っている。

堀江氏の見解は引用に留めます。DHCの撤退の背景に関する真相は不明です。

「存続」だけを考えれば楽観できる?

サガン鳥栖の経営危機を考えるにあたって最も大切なのはクラブを存続させることです。攻めの経営方針をやめて、守りに徹すること。一旦はそれだけを考えられるか否かが最大の焦点かと思います。

そして存続という点で考えれば、割と楽観できると考えます。ただし、痛みは伴います。おそらく規模を縮小せざるをえないでしょう。まずは固定費を抑えることです。すなわち選手の刷新です。残念ながら安い年俸を受け入れてもらえる選手に頼らざるをえないと思います。またはJ3に場を移してアマチュア選手を軸として戦うのも選択肢です。

クラブライセンス制度の詳細を調べきれませんでしたが、少なくとも3期連続の当期純損失を出さなければサガン鳥栖の場合はJリーグから退場する必然性はありません。まずはどんな手を使ってでも単年黒字化を目指せれば、それで問題ないはずです。

補足として、先に引用した記事では「赤字」と表現していますが、当期純損失は増資で賄ったそうなので、Jリーグクラブライセンス上は赤字扱いとなっていないようです。『クラブライセンス交付第一審機関(FIB)決定による2020シーズンに関するJリーグクラブライセンス判定の概要』によると、昨年9月時点で2期以上の連続赤字を指摘されているのは新潟、山口、琉球の3クラブです。債務超過はなしとされています。

REALSPORTSの記事によると、サガン鳥栖の竹原社長はこのようにコメントをしているそうです。

「J1で戦うために背伸びをして、ご心配をおかけした事実を見つめて今後につなげたい。人件費を削って、皆さまからよく言われる身の丈に合った経営で確実な未来を築けるようにしたい」

コメントを読む限りはあえて攻めの経営をして失敗したと総括しているようです。まずは色気を出さずに守りの経営に切り替えられるか否かに注目です。

サポーターとストーリーを共有できるか

他にも楽観出来る根拠はあります。それはサッカー専用スタジアムと、長年J1を戦ってきたブランド力です。負けが込んでしまっても観客数は激減しないと予想します。奇しくも「大幅赤字からの脱却」というストーリーが作れるので、新しい経営者と共に乗り越えようという結束力も期待できます。

ちなみに近所には大分トリニータというクラブがあり、このクラブも大幅な赤字(約12億円)から一時はJ3降格まで経験しましたが、現在はJ1を舞台に戦うまで成長しました。その過程については議論の余地があるにせよ、サポーターとストーリーを共有するという点においては強力なエピソードになります。

さらに不幸中の幸いとして、2020年のシーズンはJ1からJ2への降格がありません。サガン鳥栖は今年がどれだけ最悪なシーズンを過ごしたとしても、来年もJ1を舞台に戦えます。J1とそれ以外では収入を得るにあたっての価値に雲泥の差があります。これは大きな利点です。

サガン鳥栖の経営危機は過剰反応?

以上をまとめると、「クラブ存続のための経営に切り替え」「戦力の大幅削減を成し遂げ」「サポーターの心を掴み続ける」という3つが継続できれば問題ないはずです。それでうまく利益を重ね続けられれば、いずれは20億円の赤字は解消できるはずです。

今回色々と気になって調べたところ、サガン鳥栖が経営危機であるというのは過剰反応だった気がしました。少なくともJリーグが判断基準としている財務状況においては問題がありません。

「サポーターの心を掴み続ける」という点においては現在はサポーターミーティングが行われたということで、経営者とサポーターの対話が行われています。そこでサポーターに納得感のある説明がなされたかがひとつ焦点であると見ています。

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