HUNTER×HUNTER考察 ヒソカ対クロロ戦の考察

はじめに

共闘である。

ブラックボイスについて

クロロは最初にブラックボイスを発動した時、声ではなく携帯で操作していた。なので、このときは実際にブラックボイスを盗んでいたと思われる。
それを前提にブラックボイスという能力をみてみよう。これは操作系能力であり、アンテナを刺した人間を手持ちの携帯を使って操作する能力である。
では、この携帯は能力で具現化したものだろうか。おそらくは違うだろう。実際に通話しているところからみても、実物だと思われる。
クロロはまずアンテナを取り出して審判に刺し、その後携帯を取り出してブラックボイスを発動させている。
なので、念を込めたアンテナを刺し、携帯をブラックボイスの能力で操作端末に変えるというのが能力の実態だろう。
だからこそ戦いの後、携帯の返却をクロロはシャルナークに電話で話していたのである。これは能力の返還ではなく、実体としての携帯およびアンテナのやりとりなのだ。

シャルナークとコルトピ共闘説

最初の戦闘でブラックボイスのアンテナが消えたくだりがある。ヒソカは釣り糸を結んで回収したと考えていたが、おそらくこれはシャルナーク自身が回収(ヒソカがクロロに気を取られている間に)したと思われる。
クロロの偽物にブラックボイスを併用したと見られる時には、おそらくシャルナーク自身がブラックボイスを使用していたのだろう。
マチが回収したという見解もあるが、マチはおそらく今回の闘いに加わっていない。クロロが晒したカードで闘うといっているので、共闘はしても他の能力は使わないと思われる。
まあ、あくまでこれは予想でしかないが、クロロは今回嘘は言っていない。本当のことを話していないだけである。なので、ここで念糸が使われた可能性は低いはずだ。
クロロが釣り糸のようなものを使ったとのヒソカの考えも、クロロとは真逆にアンテナがあったからであり、別段糸にこだわる必要はない。
さらに、クロロは常に二人の側近と行動することが多かった。クロロからすると、三人単位で戦うことが一番勝率がよいのだろう。そう言った意味でも今回はシャルナークとコルトピ、二人との共闘が考えられる。

ダブルフェイスの厄介な制約

さて、そうした目で見ると、クロロは最初の一度以外はブラックボイスもギャラリーフェイクも使用するところが見られない
これは、おそらくダブルフェイスの厄介な制約に繋がるものとみられる。
つまり、栞を挟んだ能力は、栞を外した時点で能力が返却されるというものだ。これは予想でしかないが、この能力のマイナス面を今回はプラスとして使用するためにクロロは能力の説明をしたのではないかと思われる。
サンアンドムーンもダブルフェイスも能力を説明するメリットはない。
それでもダブルフェイスについて説明する必要があった。サンアンドムーンについては、そのカモフラージュである(死後に強まる念を説明すれば、そちらの方が重要に思える。これも一種のミスディレクションだろう)。
つまり、栞を挟めば何度でも使用可能と思わせること。それ自体が目的なのである。
そう思える根拠は、栞を閉じても能力が使えるため体術向上の効果は甚だ大きいといいつつ、オーダースタンプを使用中は栞を挟まず片手で本を広げながら闘っていたからだ。

おそらくこの直接攻撃は、コルトピによるギャラリーフェイクを隠すためのものだろう。そうしてギャラリーフェイクで大量のコピー人形を作らせて、オーダースタンプを一旦解除。サンアンドムーンで人形を何体か爆弾化した後、偽物クロロを作りシャルナークに操作させた。
その間、再度サンアンドムーンで人形を爆弾にする作業へ。
あとは大量のコピー人形をオーダースタンプで操って完了である。
途中思いの外客が逃げていないなとのヒソカの感想も、ヒソカの想定を超えて大量に人形が作られていたことも、早い段階でコピー人形が作られていたとすれば説明もつく。
シャルナークが回収したアンテナは、一本はヒソカが壊し、もう一本は爆発でなくなる。なので、借りていたアンテナはない、のだ。

ダブルフェイスの制約が能力の説明というのもたまに見るが、ありえない。それは、ダブルフェイスがスキルハンターを知っている前提での能力だからだ。それならスキルハンターの説明も毎回しないといけなくなる。ヒソカがスキルハンターを知っていたから説明を省くなんてことも普通に考えてあり得ないだろう。

クロロのスタイル

ついでに、クロロのセリフ「ただの殺し合いだからこそ、闘い方は大事だろう? 勝敗なんかよりはるかにな」は伏線で、これが共闘であることを示唆していると思われる。
闘い方、つまりタイマンはしないと最初から公言しているのである。これはクロロのスタイルであり、晒したカードで闘っている以上、別に嘘はついていないのである。

作者の解説で「両者を勃てながらキッチリ勝敗をつける」「クロロの能力を削っておく」という表現があるからタイマンだとの意見があるが、別にこれは共闘でもおかしくないだろう。
両者の闘いに対するスタンスの違いを勃てながら勝敗はつけているし、クロロは相手の能力を借りて騙しているのだから、能力を削る表現でも問題ない。騙すと言っても嘘はついてないクロロ。その上で相手の行動を誘導するクロロに対し、意味のない嘘もついて心理誘導するヒソカ。中々に対照的である。

おわりに

個人のマジック対決を望んだヒソカだけど、サクラを仕込んだクロロの集団マジックに負けたお話。
タイマンだったらクロロ側の心理描写や説明シーンが入ると思われ。
よくある共闘説の否定で、見つかるリスク云々言ってるけど、見つかったら見つかったで普通に共闘して倒すだけだろ。それこそ能力をおおっぴらに使えるし、畢竟、天空闘技場に来た時点でヒソカの敗北は決まっていた。
だからこそのマチのセリフである。
ヒソカに見つかった時点でコルトピやシャルナークが殺される?
さすがに二人をなめすぎ。そのあとの展開からそう思うのもしゃーないけど、油断してるところを各個撃破ならともかく、もともとヒソカは団長が一人にならないからってことでクラピカに依頼するくらいには警戒してるっつーの。
じゃあなぜ最初から共闘にしないのか?
んなことしたらヒソカが逃げるでしょうよ。ヒソカの欲求を全て受け入れたように見せて、ヒソカの強みである心理戦をしかけ必要以上に考えさせることで行動を縛り、どうしようもない状況に追い込む。最終的にはバレようがバレまいが関係なく力技で倒す。そういう作戦だったから、最後に想定以上の人形が襲ってきて、ヒソカは生き返った後気づいたわけで。
タイマンならわざわざ電話で指示するようなシーンもいれないと思われ。
感度云々もあったけど、あれは戦闘後。今回は戦闘前。それもクロロに向けて意識向けまくってる中、シャルたちが直接攻撃してくるならまだしも、完全にサポートに徹しているのを感知は流石に無理でしょうよ。
あとは人形を前もって用意すればいいとかいう意見あるけど、同じ人間がたくさんいたら普通にヒソカでなくとも気づくだろ。
同じ人間でないなら、外で作ってチケット持たせて入場させて……。どちらにしても騒ぎになるだろうし、んなめんどくさいことするなら共闘した方が早い。大体そこまでして怪しまれる要素を事前に用意するとは思えない。
最初から怪しければヒソカは警戒するし、上でも書いたけど逃げられたら元も子もないのだ。
ヒソカがやりたいのはタイマンで、ハメられたと思えば逃げてまた機会を伺うに決まってる。
なので必要以上に旅団メンバーを集めることもしないし、武闘派を配置することもないわけだ。

大量の人形用意して、それを爆弾に変えて、オーダースタンプで命令した時点で詰み。
それまで逃げられないようヒソカを思考の檻に閉じ込める。
そんな単純な話なのに、なんで共闘が否定されるのか理解に苦しむ。
クロロがそんな卑怯な真似するわけない?
しますよ。クロロは戦闘狂ではないし、タイマンするならそもそも除念の報酬としてさっさとタイマンしてるでしょうよ。
能力集めて確実に勝てるまで待っていた?
それと共闘することとどっちが卑怯なのか。そこまでするなら確実に勝てるよう共闘だってするだろうよ。
クロロが嘘をついていたならドン引き?
クロロは嘘をついていない。本当のことを話さなかっただけ。ヒソカが勝手に騙されただけ。
ついでに、サンアンドムーンで、人形が固定されるかどうかはわからない。あくまでクロロひとりで能力を使用した場合の推論であって、正しいかどうかは神(冨樫先生)のみぞ知るだろ。

追記

ちなみに、この戦闘ではミスディレクションがふんだんに使用されている。
クロロにヒソカの意識を引きつけてアンテナを回収したり、クロロがヒットアンドアウェイすることで意識を引きつけてギャラリーフェイクで人形を量産したり、偽物クロロに意識を引きつけてオーダースタンプやサンアンドムーンを使用するなどだ。
ヒソカの強さについての考察でも語ったように、「奇術師ヒソカの十八番でヒソカを倒す」「ヒソカとの約束など守るつもりもない」「死ぬ覚悟もない」これらがあったからこそ、ヒソカは復讐を誓うわけである。
もっとわかりやすく説明するならば、テレビゲームでひりつくような試合をしたいと思っていたヒソカに、クロロがハメ技を使って勝利したようなものだ。それもチート技を使って。そりゃキレるだろう。

さらに説明するまでもないと思ったけど、シャルナークとコルトピの殺害方法はヒソカからクロロへのメッセージであり、首だけのコルトピは人形作成を、マリオネットのようなシャルナークは人間を操作していたことを、それぞれ協力していたことを理解しているぞという意味である。

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