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魅力的なコンテンツをつくるために重要なこととは【コンテンツをつくるときに参考にする良書-後半-】

センスが良くなる良書読解とは?

編集者の伊藤直樹と、心理学研究家の秦由佳が各ジャンルにおける良書を選び、コンテンツつくりに欠かせないクリエイティブセンスのヒントを探る番組です。このnoteは”読む良書読解”です。

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この記事の続きです。



伊藤

コメントをくださった方がいいことを発言されていて、「ペプシはコカコーラがいないと困ってしまう」と。これ、僕、まさに真理だなと思って。ライバルがいるからこそ、コーラ業界が切磋琢磨して盛り上がると。

本には分析心理学の父・カール・ユングの言葉も引用されています。「幸福という言葉は悲しみという言葉とバランスを取らなければ意味を失う」。すごいですよね。

伊藤

わかります。悲しみの感情がわからないと幸せの感情は理解できないですからね。

本当に。そういう意味で、この本には「美徳という言葉も悪徳という言葉とバランスを取らなければ意味を失う」と書いてあるんです。「美徳と悪徳のバランスを取りながら、両方取り入れましょう」と。基本、ブランディングというのは偏らせていくようなイメージを持ってしまいがちと思うんですが、そんなに単純なものじゃない。状況に応じて7つのトリガーの調合を微調整するわけです。たとえば、信頼というトリガーを引き上げたからといって、信頼だけでは魅力的にはなりません。男性でも女性でも思い当たる節があると思いますが、あの人すごくいい人だけどなんかちょっと魅力的じゃないんだよな~という人いるじゃないですか。

伊藤

めちゃくちゃわかりますね。ちょっと悪そうな人のほうがモテたりとかする、あれですね。

そう。そういう意味では悪徳と信頼って相性がいい。

伊藤

悪徳と信頼は相性がいいってかなりの盲点でした。

たとえば、威信というトリガーがありまして、これには権威とか、ちょっと特殊は能力とかも入っています。たとえば、霊感があるとか、人のわからないことがわかるとか、それは威信でもあるし、神秘的な感じもありますよね。威信と神秘性は相性がいいんです。スピリチュアル業界ってすごく神秘性が高い業界ですが、ここに学者とか現実的にお金を稼いでいる経営者という威信があると、すごくバランスがよくなって多くの人が魅了されます。

伊藤

なるほど。最近流行っているコラボ系も、相性のいいトリガーでコラボするとうまくいくわけですね。

いいコンテンツをつくろうとすると、無意識に完成度を高めて、完璧を求めてしまいがちじゃないですか。だけど、そこにちょっとのダサさとか、抜けをつくらないと本当の意味で魅力的にはならない。そういった絶妙なさじ加減をこの7つのトリガーで勉強しましょうというのがこの本なんです。

伊藤

私はいちばん信頼が取りたいですね。信頼を積み上げて、皆さまのお役に立ちたいと思っているわけですが。

信頼だけではつまらない人になっちゃいますよ(笑)。でも、私が大事にするのもベースは信頼ですね。信頼のボリュームが基本的に高くて、どのコンテンツに関しても信頼というのは最重要視します。しかし、それだけだと魅力的ではないし、下手すると「あの人のやっていることはいつも同じ」と言われたり、飽きられてしまうので、欲望と神秘性と悪徳はけっこう使います。この本には、魅了や魅力は性的な欲求に根付くと書いてあります。根本の目的はやっぱり性的な魅了っていうのかな。いかに子孫を残すかっていうのがベースにあるというところがものすごく面白いわけでです。

伊藤

そのあたりもその本に書かれているのですか?

もちろん。フェロモンの話とかも出てきます。

伊藤

マーケティングの本なのか恋愛の本なのか(笑)。

真っ暗闇の中でも魅力的な人は魅力的なのかっていう面白い実験があるんですど、どっちだと思います?

伊藤

暗闇でも人間はフェロモンで魅力的かそうじゃないか、わかるんだと思います。

正解。やっぱり悪徳だな、伊藤さんは(笑)。

伊藤

クイズに正解するごとにどんどん悪徳になっていく。

ところで、私、今日、あるカフェでごはんを食べたんですね。そのカフェはいいお野菜を使っているとか、体にやさしいことをけっこうアピールしていました。環境も良くて、空気感も良くて、全体的にすごくいい感じのカフェです。その店でごはんを食べるのは初めてで、ハンバーグランチを頼んだんですよ。そしたら副菜が2つついてきました。それがまさかのホテルの朝食バイキングとかに出てくるようなきんぴらごぼうと、これもホテルのバイキングに出てきそうなマカロニサラダだったわけです。

ごはんは酵素玄米というこだわりがあるのに、あまりにもミスマッチで……。しかも、私はホテルのバイキングでバイトしたことがあるので、その副菜がどの程度の質のものかわかってしまったわけです。せっかくいい店なのに、もったいないなと思いましたね。そして大事な話のオチはここからです。じゃあ、もったいないなと思ったからと言って、そのカフェにもう行かないかというと、多分、行くんですよね。

伊藤

そのエピソードってブランディングとは何かを考えさせられますね。

そのときに思ったのは、お店って料理だけがコンテンツではなく、居心地の良さとか立地だとか来ているお客さんの感じとか空間的な部分も大きくて。総合的なコンテンツと言えるから、すごく幅が広い。だけど、私たちがやっているような、オンラインでセミナーするとか、オンラインで教材を売るとかっていうのは状況が違う。コロナでリアルなライブができないと、空間づくりというものを通して、非言語のメッセージを伝えることがちょっと難しくなるじゃないですか。

伊藤

そうですね。難しい。

だからこそ、みんな無意識のうちにコンテンツ単体にエネルギーを注ぎ過ぎちゃうことがよくあるのです。それってさっきのお店でいうと、料理にエネルギーを使うみたいな感じなんですけど、でも正直、ブランドってそれだけでつくられるものではない。たとえば、私がビジネス系の講座でお伝えするのは、コンテンツの中身も大事だけど届け方も大事、手に取ってもらうときのプロセスもすごく大事だということ。

本だったら紙をめくる質感とかあるじゃないですか。私たちも工夫すれば、いろんなトリガーをいろんなところにつくることができるんですね。たとえば、購入までのサイクルがすごく神秘的であるとか、購入した商品はすごく信頼度が高いとか。買うまでのプロセスも含めて、いろんな快感を無意識に味わっているということがあるわけじゃないですか。それを工夫することは本来すごく楽しいことだけど、ビジネスっていうものを楽しめないときは、商品が売れるか売れないか、何をつくるかつくらないか、何を伝えるか伝えないか、そんなことに集中し過ぎているときだと思うんですね。

伊藤

そこまで考えられるのは達人の領域ですよ。

結論として、それをこの本で学んだということです。この本に出会うまではコンテンツだけに集中していたけれど、そのあたりの意識が変わっていきましたね。

伊藤

よくわかります。書籍だったら、サイン会で手渡したり、書店で手に取ってもらったりすることも重要だってことですよね。

そう。人によっては本屋に行って買うという行為が重要だし、アマゾンのランキングで本を購入するのが重要という人もいる。買いやすいから魅力的というわけではない。この本が印象的だったのは、プロモーションの話ではなく、ブランディングの話ということです。基本的に、どう人を魅了していくかという話なんです。それと実際に販売をするとか、何かをプロモーションするというのは違う話じゃないですか。でもこれを無視して、魅了するコンテンツをつくろうという意思なくしてプロモーションをかけるのはいかがなものかということを学ばせてもらいました。

あとこの本は3つのパートに分かれており、最後のパート3では「魅了するためのアタックプラン」が以下のように示されています。

ステージ1/評価 あなたのブランドやメッセージはどれくらい魅力的?
ステージ2/開発 魅力を想像し、高める
ステージ3/実行 あなたの魅力を輝かせる


つまり、魅了するコンテンツをつくるということは、己のクリエイティビティをあきらめていないということだし、あきらめなかったらすごく楽しいんです。

伊藤

あきらめないとどうして楽しいんですか?

答えがないから。

伊藤

ふつうは答えがほしいですよね。

生きていると先々の傾向が読めないってことがよくあるじゃないですか。イライラする人も多いですが、私は傾向が読めないってすごく楽しいことだと思っています。傾向が読めない→だれかが正解を言い切ることができない→旗を立てることが自由にできる、という構図になるわけです。「私はこれを正解ってことにする」って、言い出しっぺができてしまうんですね。この言い出しっぺができる感じが楽しいんです。

伊藤

旗を立てることのできる人間が、無理して組織に属して自分の個性を消すというのはもったいないことだと思います。そういう人がこの本を読んで「自分の旗を立てるんだ」と感じてもらえるといいですね。

この本には、「人々が互いにつながりあえる機会として、あなたはどのようなものを提供していますか?」という問いかけがあります。

伊藤

僕は何かを提供しているかな?

これは7つのトリガーによってブランディングを進めていくうえで、重要な問いかけです。あなたのブランディングがうまくいくとあなたのファンが生まれますが、ファンはあなたとつながりたいと思っているのではありません。ファン同士がつながりたいと思っているのです。それについての問いかけなんですね。

伊藤

いや、深いなあ。

だから、ブランディングで大切なのは、お客さんとかファンのためにぶれないことです。あなたのブランディングがぶれたら、ファンは、あれが好き、これが好きって言って、バラバラになっちゃうじゃないですか。良いブランディングは、ファン同士をつなげるのです。



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次回は、伊藤直樹さんが紹介する良書『具体と抽象 世界が変わって見える知性のしくみ』(細谷功著)について。(6月21日更新)

「具体=わかりやすさ」、「抽象=知性」と捉え、人間の知性を支える頭脳的活動を読み解きます。


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