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昨日から読み始めた「臣女」の続きが気になり過ぎて家事を超特急で終わらせる。

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夫の浮気をきっかけに始まった妻の巨大化は止まるところを知らず、骨、内臓、皮膚、細胞、あらゆる場所があらゆる音をたてながら肥大していく。そしてそれにともなって食べる量が増える。ということは排泄の量も…。夫が「ウンチ帳」なるものをつけているくらい、その量、そして臭気は凄まじいものがあって、こちらにまで臭いが漂ってくるような錯覚すら起こす。
これ以上、妻の存在を隠し切れないと思った夫は妻を連れ出すことにするが…。

怖いもの見たさで後半は一気に読んでしまった。
始めは想像を絶する異常事態についていくのがやっとだったけれど、慣れてくるとだんだんこの夫婦を応援したくなってくるのが不思議だ。

夫は、元浮気相手から何十通と送られてきたメールを見てときめきが蘇って、裸体の写真なんかが送られてきた日にはどうにかしてもう一度抱けないかと画策したりするダメ男。自分と妻以外の人間、世界を常に呪っている。(そのうち元浮気相手まで呪うようになる。)

妻に本気で「愛してる」なんて一度も言ったことはなくて、世話をするのも罪悪感がそうさせるのだけど、そうやって奔走しているうちに以前には感じたことがないくらい純粋に妻を愛しいと思うようになっていく。
この過程が面白い。

この辺りからはもう、本当に二人だけの世界という感じで、意思の疎通が難しくなる瞬間もあるんだけどそこには確かに愛があって、夫同様、異形の者と化した妻が愛おしく思えてくるんだよなぁ。
読めば読むほど不思議な小説だった。

妻が一度だけ変化の途中で美しさを留めた瞬間があるのだけれど、そのシーンは本当に美しい。痛みも汚物もグロテスクさもない穏やかな妻の肢体。なんてことない会話や、巨大化して初めてのセックス、その後のお茶の時間が穏やかに流れていく。でも二人ともこれが最初で最後だと分かっていることの切なさ。さまざまな感情がギュッと凝縮されていて、こちらに迫ってくる。
ラストも切ないんだなぁ。

ずっと、この雰囲気どこかで読んだなぁと思っていたら、解説で小池真理子さんが島尾敏雄の「死の棘」に言及していて、あ!それだ!となった。
学生の頃一度読んで挫折して手放したんだけど、買い直して積まれている。
ヘビーな本が続くことになるけれど、今なら読めるだろうか。

恐る恐る積読の棚から取り出して読む準備をする。
読み始めるかどうかは別として。

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今日は息子の病院があったり、本谷有希子の本をポチポチしたり、他にも色々としたはずなんだけれど「臣女」の余韻が強すぎて日記というより読書感想文になってしまった。

まぁ、そんな日もあるよね。

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