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だから、『ラ・ラ・ランド』は何度も観たくなる【映画 ラ・ラ・ランド】

※この記事は、作品の内容に触れます。


“People love what other people are passionate about.”

「人は、誰かが情熱をもって打ち込んでいる姿に惹かれる。」

ロサンゼルスで女優の夢を追う主人公、ミアの言葉。
私がこの映画でいちばん好きなセリフだ。

この作品に出会ったのは、中学を卒業して間もない15歳の3月。
友人と映画館で観た映画『ラ・ラ・ランド(2016)』の衝撃は、21歳になった今でも鮮明に覚えている。
それくらい、なにか強く、心動かされたのだ。

ストーリー、映像、音楽、演技。そのすべてからエネルギーをうけ、きらきらした幸福感に包まれて、私は映画館をでた。

この映画は希望に満ち溢れている
そう感じた。

もう正確には数えていないけれど、公開されてから6年のあいだで、15回は観た。
もしかしたら、それ以上。
つまり、私はこの作品に夢中である。

4回も映画館に足を運んだ。
そのうちの1回は、今年の2月。
2週間の限定上映があると知った私は、自宅から500キロ離れた岡山県倉敷市まで、弾丸日帰り旅行をした。このためだけに。

それくらい大好きな作品。

『ラ・ラ・ランド』in倉敷。500キロの価値は充分にある。

『ラ・ラ・ランド』は、ロサンゼルスで夢をかなえようとする男女、セブとミアの物語である。ともに励まし合い、ぶつかり合いながら、夢に向かって進んでゆくラブストーリーだ。

ラ・ラ・ランドとは、ロサンゼルスの別称で、「夢見がちな人」をからかうスラングである。

プロのジャズピアニストを目指すセブが、彼の姉から「まともな社会人」になることを求められるシーンがある。ここでいう「まともな社会人」とは、結婚して、金銭的に安定した生活を送る人間のことだ。

いい年した大人が夢を追うことに、世の中は寛容だろうか?
私が思うに、きっと多くの大人が「まともな社会人」であろうと努めている。

しかしこの作品には、「いくつになっても夢を追い続けること自体が美しい」というメッセージが込められている。
物語の後半でミアが歌う「Audition」は、そんな世間からバカにされがちな夢追い人へのリスペクトが詰まった、印象的なシーンだ。


私がはじめてこの作品を観たときのことを振り返ってみると、期待と不安が入り混じる、複雑な時期だったように思う。

4月から始まる高校生活に胸を躍らせる一方で、仲のいい友人はいない新しい環境、未知の世界に身を置くことの心細さ。
得体のしれない、大きなものに向かっていかなきゃいけない気がして、すごく不安だった。

しかし主人公2人が夢を追う姿は、希望を持ちつづけること、自分のなかの情熱を絶やさないことがどれほど素晴らしくて、素敵なことかを教えてくれた。

もちろん、「望めば夢は叶う」そんな薄っぺらいことを言いたいのではない。
そのチャンスが自分にめぐってきたとき、どんな道を選ぶのか、怖くて確信が持てないものを、どれだけ信じられるか。

私がこの作品に背中を押されたことは、間違いない。

ラ・ラ・ランドは、希望に満ち溢れている。
でも、私がこんなにも夢中になる理由は、それだけじゃない。

今日に至るまで、何度もこの作品を観ているのは、ただストーリーに惹かれたからではない。それだけなら、すぐに飽きてしまうだろう。

映像、キャスト、音楽。
そのすべてが回数を重ねるほどに、あるいは観るタイミングごとに、新たな気づきや発見があるからだ。

たとえば、衣装。
ラ・ラ・ランドで印象的なのは、ミアが身に着ける黄色いドレスだろう。華やかな映画ポスターが話題になった。
衣装チェンジは、主人公2人合わせて100回。
黄色は「少女らしさ」、逆に黒は「大人の女性」。服の色と心情をリンクさせ、次々に変化していく。

また、ラ・ラ・ランドは名作「雨に唄えば」など、他の映画のワンシーンが数多くオマージュされている点も特徴的。
探しながら観るのも面白い。

音楽に関していえば、劇中の曲は1つの曲がシーンごとにテイストを変えて何度も流れる。その変化にも2人の心情が表現されている。
監督の前作「セッション(2015)」の曲が使用されるという、粋な演出も。

このように、ストーリーに絡めて作品の細部にも注目してみる。すると、何度も違った楽しみ方ができる。

観るタイミングによっても、全く異なる感情を抱く作品だと思う。
たとえば、ラストのシーン。

私の場合、最初に観たときと今では、真逆の感情を抱いている。
恋愛をとるのか、夢を掴むのか。ハッピーエンドか、バッドエンドか。

私自身の価値観の変化が、作品のとらえ方にそのまま反映される。
自分の経験と重なるシーンもありながら、共感したり、理解できなかったり。観るたびに作品にも自分にも、気づきがある。

そういうわけで私は、『ラ・ラ・ランド』を観ればいつだって胸がいっぱい、大満足できてしまう。

ラストのシーン、みなさんはどう感じるだろうか。この作品を何度見て、何度新しい発見をするだろうか。
きっと1年後、はたまた数年後に観たときには、全く印象の異なる作品になっているだろう。

希望に満ち溢れた高揚感と、観る度に感じる新鮮さ。
だから、ラ・ラ・ランドは何度も観たくなる。


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