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できない自分を受け入れる/体外受精2度目も陰性だったときの話

2023年1月から不妊治療を始めました。
そして先日、11月のある火曜日。二度目の体外受精での胚移植の結果、陰性であることを告げられました。

二度目の今回は妊娠する。「出産」までたどり着けなくとも、すくなくとも胚移植の14日後の判定結果は陽性になる。そう思っていたので驚きました。診察室で医師に告げられたとにも、驚きのまま曖昧に笑うことしか、できませんでした。

そして安い金額の支払いと処方箋のもらえない受付を終え帰宅すると、夫は何も声をかけてこなかった。
私はなにか言ってもらいたいような、何も言ってもらいたくないような、自分でも判断のつかない感情で、なんとなくぼーっとしつつお風呂に入りました。「今から薬をつづけなくていいんだもんな。楽だな。」と考えながらお腹にある貼付タイプの薬をぺりぺりと剥がしました。「前より剥がすの、うまくなったな。」なんて思ったりして。

火曜日は、正社員で働く私の勤務日です。
この日は前日の月曜日の休日をずらしてもらった「公休扱い」での平日休みでした。
1月から約1年間。こんな感じで休日をずらしてもらいました。法事や結婚式と嘘をつき、有給休暇を取得したこともあります。でもなんとなく、これを続けるのはもう限界だな。と感じていました。

その日は布団に入って目をつぶってもなかなか眠れません。逆にどんどんどんどん目が冴える。

35歳、体外受精の成功率は25−30%と言われています。
ということは2回体外受精をすると約半数以上は妊娠します。
私はその少数派だった。自分ができない側にいた、ということを強烈に突き付けられたのです。
私はこれまで不妊治療をしていることを誰にも打ち明けていませんでした。実の親にも、姉にも、親友にも。
それは何より自分の精神が弱いことを知っていたから。「できない」側にいることに耐えられる精神力がないことを知っていたからです。

あなたは約半数の人が解ける問題を解くことができますか?

きっと大半の人は「得意なこと」ならできる。「苦手なこと」ならできない。って感じではないでしょうか。数学が得意な人ならきっと解けるし、苦手な人ならきっとできない。
私はこの「できないこと」から逃げてきました。授業科目なら「体育」や「英語」生活なら「マメに連絡すること」や「誕生日を祝うこと」や「祝ってもらうこと」。苦手なので別に立ち向かうこともせず、「しない」「向き合わない」という選択肢をとってきました。

それはなぜか。「できない人」と思われたくなかったからです。
「できない可哀想な人」扱いが心底嫌だったから。
足が遅くて、みんなをがっかりさせた体育のリレー。
「ごめんね。」なんて言えるはずもなく。
次の走者に「足が遅いので走る距離が短くて済むよう、スタートは遅めにお願いします。」なんて建設的な提案もできず。
「できない」自分を許容する強さが私にはないのです。プライドが高く、自尊心が強い。

私は妊活をみんなにカミングアウトすることで「妊娠できない人」「妊娠を望んでいるのにできない可哀想な人」と思われるのが、耐えられないと思ったのです。

でも。
35歳になり、二度体外受精で妊娠すらできず。職場のみんなに打ち明けてみようかなと思いました。
ちなみに直属の上司は数年前まで妊活をしていて、残念ながら今は年齢のこともあり妊娠を諦め、そのことまで職場のみんなに打ち明けています。有給、休日の移動、すべての制度を活用していました。
そう。相談さえすれば、受け入れてもらえる土壌はあるのです。問題は私の心だけ。

歳をとって気持ちが寛大になったのか(死語でいうところのおばさん化というやつなのでしょうか?)、これ以上は職場に迷惑をかけられないという思いなのか、「できない人」を受け入れよう、と思ったのです。
もしくは「できない人」「可哀想な人」って思われたって構わないじゃないか。って思ったのです。そんなふうに思われても、きっといつもどおり仕事はしてくれる。職場の人なのだからそれでいいじゃない。
「できない人」「可哀想な人」って思われたって、自分がいいなら、それでいいじゃない。

「妊活を始めようと思います。」と言ったら
「応援するよ」
「実は心配してた。よかった。」
「病院紹介するよ」と。
みんな私をいたわるような顔で語りかけてくれました。

あー。この「いたわる」ような顔を「可哀想」だと思われている顔だと思って逃げてたんだなー、と気づきました。
そもそも他人の顔の表情なんか正確に読み取れるわけないのにね。
本当はみんな「可哀想」だと思っている顔 をしていたのかもしれない。でも「いたわる」顔だと私は思った。それでいいじゃない。私の真実はこれだ。

二度の体外受精で妊娠できていない私は、少し強さを得た。
これも長い人生の中の、一興なのかな。


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