見出し画像

【R60-SETAGAYA- マッチング事例紹介④】子どもたちの笑顔を作る調理補助~まつばらけやき保育園~

エプロンを着けた先生が号令をかけて子どもたちを集め、子どもたちからは「先生!」と呼ぶ声が飛び交う――そんな、従来想像していたような保育園の風景とは少し違った日常が繰り広げられているのが、松原に開園して2年目のまつばらけやき保育園。同園では、子どもたちは先生を名前で呼びます。子どもも一人の人間として尊重し、さまざまな体験を通して子ども自身が学び、判断し、自発に行動できる力が身に着くように、主体的に活動する能力の基盤を養う保育を行っています。
担当制を導入していない同園では、保育をしている職員も掃除をしたりキッチン補助をしたり、さまざまな仕事を経験します。皆が勉強しながら保育を進めていますが、やはり職員一人一人の学びを保育の場で最大限に活かすために、適度な休息も必要だと考えていました。特に、より細やかに丁寧に取り組みたい調理の場面で、手助けをしてくれる方が地域にいてくれたらと、R60-SETAGAYA-を通して募集を行いました。

今回は、この仕事に取り組んでいるKさんと、まつばらけやき保育園 園長の塚本美咲さんにお話をお聞きしました。

多世代の交流でうまれる効果

R60-SETAGAYA-を通して、保育園内のお仕事を募集しようと考えた背景にはどのような想いがあったのでしょうか。

塚本さん:まだ開園2年目の当園は若い職員が多く、コミュニケーションが不足しがちでした。さまざまな世代の方に園内で活躍していただくことで、交流のきっかけ作りになったり、コミュニケーションの方法について職員一人一人が考える機会ができたら。そう考えていたところ、このR60-SETAGAYA-のお話をいただき、ぜひ募集をしてみようと思い至りました。なかでも給食の提供は、本園と1歳までのお子さんを預かる分園、それぞれに分かれて行っており、普段の食事作りや離乳食作りなど、より細やかに丁寧に取り組みたい部分でした。即戦力になる方に来ていただければと思って、お願いしました。

この案件に応募したのはKさん。大学を卒業後、40年以上ほぼ休みなく仕事をし、65歳で定年退職した時には、しばらく自由に好きなことをして暮らそうと思っていたそうです。ところがKさんの心境に変化が訪れます。

Kさん:同じような生活を3年も続けていると、楽しいだけでは物足りなさを感じるようになりました。また、この1、2年のコロナ禍で人に会う機会が減ったことも影響したのだと思います。自分の中で誰かの役に立ちたいという思いが膨らんでいきました。

KさんはR60-SETAGAYA-に登録をしましたが、仕事を選ぶにあたり決めていたことがありました。それは、「好きなことを楽しみながらできる」を基準にすることでした。

対話を繰り返しながら不安を拭い去る


Kさん:募集内容を見て興味を持ち、軽い気持ちで問い合わせたところ、園長から直接電話をいただきました。当初の希望は午後の4時間程度でしたが、昼食作りがメインの仕事なので朝から来てほしいというお話に、長時間勤務する自信がないことをお伝えしたところ、「一度会ってお話ししましょう」と。あっという間に面談の日が決まっていました。

応募した当初、不安もゼロではなかったKさんでしたが、面談で仕事内容の説明を受けた後に園内を見学すると、園の良さを感じたといいます。

Kさん:園ではみんなが笑顔で、とても良い印象を受けました。ただ、久しぶりの就労であること、また腰痛の持病があり通院中であることなど、唯一心配なのは自身の体力でした。考えあぐねていたところ、園長が「1カ月体験」を提案してくださり、週3日の勤務を、1カ月間試してみることになりました。この時、その後について話し合う日を決めていただけたので、もし無理ならお断りできるという安心感もありました。

保育園側の提案もあり、まずはお試し体験という感覚で始めたKさん。ところが、1カ月間働いてみると、想像していた以上に自分の身体に負担がかかっていたことを実感したそうです。

Kさん:仕事は野菜を切る、食器を洗うなど前屈みの体制がほとんどなので、首・背中・腰の痛みがどんどん酷くなっていきました。4時に仕事を終えてから買い物をして家にたどり着くと、最初にすることは腰痛改善体操。これをしないと夕飯の支度ができない状態でした。

身体に負担を感じたKさんは、空いた時間に趣味に向き合う気にもなれず、いったんは仕事を続けるのは難しいかもしれないと考えたそう。その矢先、「午前中だけでよいから通しで来てもらえないか」と、園から提案があったといいます。

塚本さん:調理の仕事は立ち仕事でもあり、決して楽な仕事内容ではありません。ご自身でも体調に不安を感じられていたので、無理のない範囲でご活躍いただければと思い、随時勤務時間等の見直しをさせていただきました。

画像1

そこで、勤務日数をこれまでの3日から4日にして、1日に働く時間を午前中の3時間と短時間に変更。保育園側からのこの提案は、Kさんの身体への負担を軽減させたそうです。今では腰痛も改善し、空いた午後の時間を有効に使えるようになったので、充実した日々を送っているとKさんは話してくれました。

お互いに無理のない関係が生んだ信頼


今回の出会いは、利用者の就労への不安に丁寧に向き合いながら、事業者とともにお互いのニーズに合わせた就労形態を模索していった事例だといえるでしょう。事業者のニーズに合わせようと利用者が無理をして働くのではなく、自分の体調に耳を傾けながらゆっくり環境に身体をなじませていくことは、その後の精神的余裕にもつながるのかもしれません。

塚本さん:ある日、Kさんから「本園と分園、両方の補助に入ることもできます」と声を掛けていただきました。実際に働き始め、どの時間帯に人員を必要としているのか把握してくださっていたからだと思います。このご提案は大変ありがたかったです。現在では、本園と分園の両方でご活躍いただいています。また、Kさんは、とても柔和で笑顔の素敵な方。いつも気持ちよく挨拶をしてくださり、誰に対しても丁寧な対応をしてくださるので、若い職員に良い刺激となるとともに、職場の雰囲気も明るくなり、感謝しています。

Kさんは現在、調理の現場で働きながら、若い世代の職員と話をすることに新鮮味を感じつつ、子どもたちの声や笑顔、仕草に元気を貰っているといいます。毎日楽しく過ごせて幸せだと感じ、気分が華やかになった気がすると語ってくれました。

Kさん:調理の仕事に携わって、今まで使ったことのない食材の使い方や新しいレシピが覚えられ、我が家の食生活が少し豊かになったこともよかった点ですね。職員は親切かつ丁寧に教えてくださる方ばかりで、居心地の良いところ。体力が続く限り、そして望まれる限り、できるだけ長く続けたいと思っています。

今回のマッチングで、調理の仕事からだけでなく、園で過ごすこと自体からも多くのものを享受しているKさんですが、それは保育園側も同じ。もともと依頼していた調理の仕事だけでなく、Kさんの人間的な厚みが保育園にもたらしてくれるものへの効果を感じているようです。お互いのニーズをすり合わせる作業を何度も行う中で、信頼関係が培われていった結果だといえるかもしれません。

R60-SETAGAYA-で探す、心地の良い場所


これまで折に触れてKさんから進捗を聞かせていただいていたので、「できる限り続けて働いていきたい」というお話を聞くと、嬉しい気持ちになります。今回のマッチングは、利用者の不安に事業者が寄り添い、丁寧なやり取りを繰り返し行ったことで、お互いにとってベストな状況を見つけることができた例。

「双方の希望がかなうためにはどうしたらよいかをお互いに考えられたのは、R60-SETAGAYA-ならではのメリット。他の求人から応募するより恵まれていると思います。R60-SETAGAYA-に参加して、本当に良かった」とKさん。

この言葉にあらためて、仕事とは何か、そして地域でつながることの意味を考えさせられました。

R60-SETAGAYA-では、仕事を探すプラットフォームとしてだけではなく、さまざまな働き方を事業者とともに模索することができます。ぜひ次はあなたも、R60-SETAGAYA-で新しい景色を見てみませんか。

---------------------------------------------------------------
Facebook、Twitterからも情報を発信しています!
【Facebook】https://www.facebook.com/GberSetagaya
【Twitter】https://twitter.com/GberSetagaya
---------------------------------------------------------------
お問い合わせは以下へご連絡ください。

(世田谷区事業者の方)

(世田谷区民の方)

働くをRe:DESIGNする
R60-SETAGAYA-
世田谷版GBER運営オフィス(運営:非営利型株式会社Polaris)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?