[連載]私の”L”-①lady-
《「LL magazine」というマガジン名にちなみ、毎号「L」のつく言葉をテーマにエッセーを書いていきます。》
La・dy[léidi]名(複-dies)貴婦人、淑女、令嬢 他
レディーのイメージ。
上品な口調、しっとり上質なお洋服、ミステリアスかつ慎ましやかな微笑み。
無垢で、奔放で、清楚で、大胆で、貞淑で、自由で、儚くて、タフネス。
オードリー・ヘップバーンで、ダイアナ妃で、マリリン・モンロー。
どれもレディーで、どれも素敵で、でもそれじゃあ、どんなだったら私もレディー?
答えがわからず、過去のレディーたちの名言にうっとりしたり、憧れの香水をがんばって手に入れたりして
少し満足してみるけれど。
毎日なんて続かなくて、
気が付くとよれよれのティーシャツでポテチなんかをつまんじゃっている。
背伸びをがんばるレディーごっこは、いつでもなんかはできなくて
せめて目指すは「ひとことレディー」。
*
もう亡くなってしまったけれど、私の祖母が、食事のお店のお会計で、
いつも口にすることばがあった。
「あら、お安いのね」
別にリッチではなかった祖母だから、見栄や嫌味ではなかったことば。
「あんなに美味しいお料理なのに」
「あんなに素敵なサービスなのに」
「こんなお値段で良いだなんて」
「いいのかしら、おどろきだわ」
そんな感謝の想いをこめて、祖母は丁寧に支払っていた。
素敵なお財布を持つとか、お財布なんか出さないとか、そんなお話をしているようでは、まだまだお子様なのかもね。
あくまで謙虚に、自分を取り巻くものを賛美しながら生きていく。
おばあちゃんは、間違いなく
そんな素敵なレディーだった。
(撮影-S model-RIKO)
【この作品はLL Magazine8月号に寄稿しています】
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