見出し画像

[連載]私の”L”-①lady-

《「LL magazine」というマガジン名にちなみ、毎号「L」のつく言葉をテーマにエッセーを書いていきます。》

La・dy[léidi]名(複-dies)貴婦人、淑女、令嬢 他


レディーのイメージ。
上品な口調、しっとり上質なお洋服、ミステリアスかつ慎ましやかな微笑み。
無垢で、奔放で、清楚で、大胆で、貞淑で、自由で、儚くて、タフネス。
オードリー・ヘップバーンで、ダイアナ妃で、マリリン・モンロー。

どれもレディーで、どれも素敵で、でもそれじゃあ、どんなだったら私もレディー?

答えがわからず、過去のレディーたちの名言にうっとりしたり、憧れの香水をがんばって手に入れたりして
少し満足してみるけれど。

毎日なんて続かなくて、
気が付くとよれよれのティーシャツでポテチなんかをつまんじゃっている。

背伸びをがんばるレディーごっこは、いつでもなんかはできなくて
せめて目指すは「ひとことレディー」。


もう亡くなってしまったけれど、私の祖母が、食事のお店のお会計で、
いつも口にすることばがあった。

「あら、お安いのね」

別にリッチではなかった祖母だから、見栄や嫌味ではなかったことば。


「あんなに美味しいお料理なのに」
「あんなに素敵なサービスなのに」
「こんなお値段で良いだなんて」
「いいのかしら、おどろきだわ」


そんな感謝の想いをこめて、祖母は丁寧に支払っていた。

素敵なお財布を持つとか、お財布なんか出さないとか、そんなお話をしているようでは、まだまだお子様なのかもね。

あくまで謙虚に、自分を取り巻くものを賛美しながら生きていく。
おばあちゃんは、間違いなく
そんな素敵なレディーだった。

(撮影-S  model-RIKO)

【この作品はLL Magazine8月号に寄稿しています】

サポーターの方にはささやかですが、暑中見舞い·寒中見舞い·バースデーカードのいずれかをお届けいたします。届きますお礼メールをご確認ください。