見出し画像

今月読んだ本一覧(2020.2)

今月読んだ本の覚え書き。全部で7冊の本を読みました。
こうして振り返ってみると、読んだ本がすべてゆるやかにつながっているような気がしてくるから不思議。

1. 老舗企業の存続メカニズム

今月読んで一番よかった一冊。
論文なので普通のビジネス書に比べると難解で読みづらい部分もありますが、これまでふわっと語られてきた「老舗の流儀」をシステマチックに論じた一冊です。

特に冒頭で老舗企業の研究のあゆみを整理した「文献レビュー」が全体像の把握にとてもわかりやすく、引用されている論文も読んでみようと思いました。
あと海外では老舗企業研究はあまり進んでいないようで、カテゴリとして「ファミリービジネス」になるという話も初めて知って驚き。
この分野は100年以上続く企業が3万社以上(!)もある日本ならではの強みがある分野だと思うので、もっと研究が進むといいなと思います。

老舗企業の長期存続は、基本的な存在根拠を一貫して維持しようとするとともに地域環境に対し組織文化を変えながら対応する試みとの融合によって可能となる

この本は老舗企業としてよく取り上げられる百貨店や呉服、和菓子といった業態ではなく、宮大工という建設業にフォーカスを当てている点がユニーク。

BtoC企業はどうしてもブランドや家訓、哲学といった部分が注目されがちなのですが、BtoBで長く続いている企業の理由を探ることでもっとシステム的に分解できないか、という試みです。

その結論として、「ビジネスモデルではなくビジネスシステムで考える」という話がでてきて、これがとても面白かった。

老舗企業の存続とその軌跡は、先行研究が想定してきたような市場原理への適応でも、暖簾や技術といったコア・コンピタンスの保持によってもたらされるものではなく、事業を営むにあたって承業経営者がいかなる他社と関係を取り結ぶのか、そして関係を取り結んだ(無理やり関係を取り結ばされた)他者(政府、金融機関など)との関係に依存してくるのである。

この考察は、宮大工企業のほとんどが寺社や藩などの「お抱え」であったこと、さらに明治の変革期にもいかに中央政府と関係をもてたかによってその後の事業サイズが大きく変わったことから導き出されたもの。

逆に言えばBtoBだからこそ言えるところもあると思いますが、小売においても長く続いているところは「宮内庁御用達」だったり、昔から藩への献上品として使われていたり、お茶会や季節のお菓子として使われていたりと永続させるシステムができているんですよね。

特に和菓子に老舗企業が多いのは、お茶会という連綿と続く消費イベントがあったことが大きいのではないか、とこの本を読んで改めて感じました。

「モデル」ではなく「システム」で考える。
これもまた近江商人の「三方よし」につながるのかなあ、と思ったり。

他にも技術の伝承や職人のあり方など学ぶこと多かったのでおすすめの一冊。

ちなみにこのツイートは本にインスパイアされたものです。

ここから先は

4,312字
この記事のみ ¥ 200

この記事が参加している募集

サポートからコメントをいただくのがいちばんの励みです。いつもありがとうございます!