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Kemioは日本の国宝

「地球上のみなさんこんにちは!k・e・m・i・o、kemioで〜す!」
「ということでみなさん、先週一週間も素敵なweekを過ごせたかでしょうか〜!」

いつの頃からか、このあいさつを毎日聞くようになった。
独特の言葉づかいと、「ウチはウチらしく!」と自分のスタイルを貫く姿に元気付けられているのは、私だけではないはずだ。

kemioに興味を持ったのは、著書を読んだことがきっかけだったように思う。

うちら棺桶まで永遠のランウェイ」。
初の著書にしてこのタイトルセンスの高さである。
普段タレント品の類を読まない私も、つい手に取らずにはおれなかった。

私は昔から、言語センスの高い人にめっぽう弱い。
言語センスは、文章力や日本語力とは別物だ。
世界の捉え方とそれを表現する言葉の組み合わせが独特であること。
しかも練りに練った結果ではなく、瞬時に捻り出す姿はさながらアスリートだ。

「普段ほとんど本を読まない」と公言しているにもかかわらずこれだけ言語センスの高い人を見たのは、川谷絵音に次いで二人目である。

個人的には、最近話題になっていたラプンツェルの替え歌がまさにkemioの言語センスの高さを表していると思うのでぜひ見てもらいたい。

▲「自粛といえば、ラプンツェルがプロなんじゃね!?」という発想がすでに天才である

とはいえ、ただ面白いだけのYouTuberなら他にもたくさんいるだろう。
そんな中でkemioが180万もの登録者数を誇る人気YouTuberとなったのは、彼がいつも「素のまま」を肯定するスタンスだからなのではないかと私は考えている。

SNSが発達し、瞬時に世界中の人と自分を比べられる時代に私たちは生きている。
一昔前であれば知りようもなかったきらびやかな暮らしや素晴らしいキャリアを目にする機会が増え、比較対象のレベルもトップラインになってしまった。
必然的に「自分なんて」と思う瞬間が増え、少しでも理想に近づくために普段の生活を取り繕おうとする。
しかし見せかけだけ取り繕おうとする行為は素の自分の否定でもあるため、自己肯定感が下がっていく。

アメリカのティーンの間で、キラキラしたインフルエンサーよりも加工なしで素の自分を出している人の人気が高まっているのもこうした流れが背景にあるのではないかと思う。

そしてkemioはまさにそんな「飾らない」インフルエンサーなのだ。

kemioの動画を見ていると、冒頭で「寝起き5秒だからまじ顔死んでる〜」「昨日飲みすぎちゃって、めっちゃむくんでるの〜!」と話していることがよくある。

▲「Kemioの休日、私とほぼ一緒だ…w」と安心する動画

さらに酔っ払散らかした部屋をそのまま映して片付けの工程をシェアしたり、料理で失敗してもそのままアップしたり、とにかく自然体なのだ。
また普通のYouTuberであれば、撮影途中でチャイムが鳴ったら噛んでうまく言えなかったときに撮りなおすのかもしれないが、kemioはそういうアクシデントすらもそのままアップする(それすらも編集ですごく面白くなっていたりするのだけど)。

▲Kemioの料理シリーズも名言のオンパレード

表に出る人は綺麗なところだけを切り取って見せることが多い中で、「私たちと同じような感覚なんだな」と安心させる力がkemioにはある。

kemioのファンは、飾らないそのままのkemioが好きなのだ。

一方で、数年前の動画を見ていると年々素敵になっていることも感じる。
ブルゾンちえみ、渡辺直美、氷川きよしなど「自分のしたいことに素直になる」というメッセージを発信する人が増えたが、軒並み自分らしくそのままを出すようになってからの方が人気が高まっているように、自分らしくあることは美醜とはまた違う「素敵さ」につながり、人を惹きつける。

ステレオタイプや周りに求められるキャラクターを無理に演じることなく、自分が一番心地いいと思える自分であること。
それが結果的に自分の魅力を上げ、ハッピーな環境を作っていくのだということを、kemioもまた証明しているように思う。

また、kemioから発せられる言葉の端々からも「そのまま」を大事にしている姿勢が伺える。
私はkemioの質問返しシリーズが好きなのだけど、その基本スタンスは「うちらって最高!」である。

▲質問返しのときはいつも以上にしゃべるスピードが異次元

質問者の悩みに対して、kemioは常に「大丈夫だよ」「そのままで素敵だよ」というメッセージを発信している。
それはkemio自身が「普通」とは少し違う部分を持ってきたからこそ培われた精神なのかもしれない。

幼少期から女の子の友達が多く、男らしさと無縁だったことで嫌な目にあってきた話や、自分のセクシャリティについてkemioはさらりと話す。
著書の中で「男性が好き」と書いたことがニュースになったときも「カミングアウトっていうほど大きなことじゃないと思ってたからネットニュースになってびっくりしたー!」と笑っていた。

ファッションも「普通」とは違うし、若くして何のツテもなくアメリカに移住した決断も「普通」ではない。
でもそうした自分の「普通」ではない部分を丸ごと肯定して生きているkemioの姿を見て、ファンは元気をもらっているのだと思う。

はたから見たら辛い経験に思えることも、kemioはとても明るく話す。

「両親はね、今天国でギャルやってるの〜!」
「ずっと芸能界に入りたくてオーディション受けてたんだけど、全部落ちまくってまじさげみだった〜」

人生には辛いことや悲しいこともあって、時にはバット入ったり病み期が訪れたりもするけれど、それもひっくるめて人生を愛していく。
その強さが、人を惹きつける魅力になっている。

「嫌なやつが現れたらスワイプして消してやんな!」

明るく強く生きるギャルの精神は、日本を照らす原動力になっていく。

▲この曲も聞けば聞くほどクセになる

(カバー画像はKemio公式Instagramより引用)

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