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名作を名作のままフィニッシュさせるために #BOOKTALK

『名作が途中から駄作になってしまうのはどうしてなんでしょうか』──。

先週開催した #BOOKTALK イベントで深津さんと話していたとき、ひょんなことからそんな話になりました。

3000冊以上の漫画を読み、途中で打ち切りになったり未完のまま終わったりと漫画読者として酸いも甘いも噛み分けてきた(?)深津さん。
本の話から脱線して漫画の話をしていたら、漫画は連載であるがゆえに『途中から面白くなくなる』現象があるよな、とふと気付きました。

小説も連載から書籍化するパターンはありますが、は書き下ろしで出版されることも多く、その場合は執筆途中に読者からの声や映像化などの外野の声にわずらわされることなく自分の世界に閉じこもって書き上げることができます。

しかし漫画はほとんどが連載ものであり、人気がでたら話を引き延ばしたり、映像化にあわせて盛り上がるシーンの時期を調整したりと『大人の事情』が挟まってきてしまうのです。

また連載中に読者からの感想や人気ランキングのようなかたちで反応が可視化されてしまうと、サービス精神によってもともとの軸からブレてしまうこともあるはず。

だからこそ名作と呼ばれる作品はどれもそうした外野の声に惑わされず、はじめのコンセプトを貫くことがベースにあるのではないかと思うのです。

これはサービスやプロダクトにも言えることで、特に今はSNSによって簡単にフィードバックを受けることができます。

もちろん顧客の声を聞くこと、早めに試して早めに修正することは重要なのですが、外部の声や環境に適応しようとしすぎたがために辞めどきがわからないプロジェクトや機能がゾンビのように残り続けてしまうことも。

つまり名作は一度その称号を得れば永遠に安泰なわけではなく、終わる瞬間まで『駄作になる可能性』と戦い続ける必要があるのです。
しかもいつかは終わりがくるコンテンツとは異なり、会社やサービスはずっと続いていく前提で運営されているもの。

名作を名作のまま維持し続けるには何が必要なのだろう。

対話から生まれたそんな疑問が、冒頭の質問を引き出しました。

でも、漫画にしろサービスにしろ、営利活動であるかぎりは『大人の事情』を完全に無視することはできません。

そこで『もし深津さんが出版社のコンサルをやるとしたら、この問題をどう解決しますか?』と聞いてみました。

深津さんの解決方法は『本編を引き伸ばすのではなくスピンオフ作品をいくつか書いてもらう』こと。

スピンオフ形式にすることで本編が冗長になることなく連載を続けることができ、さらにスピンオフ自体が人気になればそれをまたひとつの独立したコンテンツにしたり、映像化に持っていくこともできるのでは?とのことでした。

またこの施策のポイントは、『はじめての最終回問題』を同時に解決できること。

これはビジネスだとサービスのクローズやプロダクトの生産終了と言い換えることもできるのではないかと思います。

終わらせたことがないままにビッグヒットを作ってしまうと、期待値は膨らむのに本人は未経験という悲惨な状況になってしまう。
だからこそ、別ラインで小さなプロジェクトを走らせて、『終わりの練習』をする必要があるという話はコンテンツだけではなくあらゆるビジネスに転用できる考え方のように思いました。

他にもイベントではテクノロジーがコンテンツのプロットに与える影響や現代作家が時代物を書く際のポリコレコード対応の難しさなど、本を中心にしながらも深津さんならではの視点で『現代コンテンツ論』を語り合った時間でした。

第二部の櫻田さん、第三部の渡邉さんとの対話から私が考えたこともまた改めてnoteにまとめたいと思いますのでお楽しみに!

またこうしたイベントを開催していこうと思うので、興味のある方はPeatixの消費文化総研ページのフォローをどうぞ〜!(もちろんnoteでも告知していきます)


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