今週読んだ海外記事と雑感(2020.2.29)

今週もNewsPicksでピックしたニュースとコメントを転記してまとめておきます。
文末の有料パートは海外記事の解説です。

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Amazonが動画コマースの実験を開始

Amazonが3月から始まる新シリーズ「Making the Cut」でビデオコマースを本格展開。コンテスト形式のリアリティショーで受賞したブランドのアイテムを放送中にAmazon上で購入できるようにするとのこと。Amazonはファッション・アクセサリー領域に力を入れており、動画コマースに注力することでスタンダードアイテムだけではなくトレンドアイテムも購入しやすくするのが狙いのよう。似た施策としてはNetflixが「Next in Fashion」でYNAPと提携し、受賞ブランドをECで販売する仕組みを作っていますが、Amazonはどちらも自前だからこその強みを生かしたかたち。
個人的には日本オリジナルの「Beauty the Bible」もコマース向きなコンテンツだなと思いながら見ていたのですが、こうした流れを見込んでの作品だったのかも。
実際の動線が気になるところですが、そのうち動画上で気に入ったものをそのまま買える仕組みになっていくのだろうなと思います。

TikTokマーケティング戦国時代のはじまり

TikTokのマーケティング活用事例3選。3つめのコスメブランド「e.l.f Cosmetics」がヒット曲をもとにオリジナル曲を作り、そのハッシュタグでの投稿が爆発的にヒットした事例が面白い。TikTokはこれまでのSNS以上にいかに「ユーザーがアレンジしたくなるネタをつくるか」が重要になっていくのだろうなと思います。ただ、このハッシュタグ投稿の再生回数が12億回をこえたとはいえ、それがどうブランドエンゲージメントや最終的な売り上げにつながるのかが難しいところでもありそう。宣伝色が強くなりすぎず、それでもブランドをアピールするもの、という絶妙なバランスの企画が求められそうだなと。
ちなみにTikTokをみていると料理動画やフィットネス動画も多く、YouTubeへの導線としても機能しているようなので、how-toがわかりやすい商材はそういう使い方もありなのかなと思います。

Instagramでオーガニックリーチを増やしたBirdy Greyの施策

Instagramの投票機能を使ってオーガニックリーチを増やしているBirdy Greyの施策例。Birdy Greyのアカウントに「POLL TIME」というハイライトがあり、ここから実際に投稿されてきた投票コンテンツを見ることができます。Birdy Greyの投票の使い方として、商品開発に役立てる意図もあるようですが、「このドレス好き?」「この色かわいいと思う?」などの質問をした上で「Yesだったらショップに行ってみて!」とECへの遷移を促す投稿がうまい印象。
また、ブライズメイドのドレスや小物などの費用は花嫁とブライズメイドどっちもち?など花嫁自身も気になるテーマの質問をしているのがユニークです。
投票コンテンツのエンゲージメントは2%程度のようなので、ここでの反応を鵜呑みにするのは危険な面もありますが、調査というよりも顧客とのインタラクティブなやりとりとそれによるエンゲージメント形成がメインの目的なのかなと思います。
最後にBluecoreの担当者が話している通り、Instagramを単に商品の訴求のためのものとしてだけではなく、関係構築や再訪問のフックにするなど様々な目的をもってコンテンツを作るのが重要な気がします。

なぜデザインメディアが「家」を作ったのか

インテリアメディアであり、アフィリエイト形式でコマースも行うHunkerがショールームとイベントスペースを兼ねた「Hunker House」をオープン。Hunkerはそもそもメディアとしてもマルチな機能をもっており、メディアでありながら商品のキュレーションプラットフォームでもあるので、このショールームが商品の販売に寄与しているのはもちろん、イベントを通してアフィリエイトに対応するブランドが増えるなどBtoBの面でも効果を発揮しているとのこと。
日本でもスタートアップを中心にイベントスペースやコミュニティラウンジを併設するところが増えてきましたが、今後メディアも自分たちの世界観を体現しながら、顧客やステークホルダーとつながる場所をもつ事例が増えていきそうです。

なぜThe Wingは苦戦しているのか?創業者が語る「失敗の本質」

女性専用シェアオフィスとして注目されてきたThe Wingの創業者が語る失敗談と反省点のシェアがとてもまなびある。WeWorkもそうですが、リアルな場所を起点としたコミュニティ形成を売りにするビジネスは、事業規模の拡大と利用者の満足が反比例することも多いのではないかと思います。またそれぞれ国を跨って場所を展開しているので、ブランドとしての統一イメージとローカライズのバランスなど、一筋縄ではいかない部分も多いはず。
これは場所に限ったことではなくD2Cブランドも同じで、利便性ではなく情緒価値で選ばれるものは規模拡大によって誰でもアクセスできるようになると結果的にブランドの希少性や特別感が薄れてしまうため、IT系のユニコーンとは異なる微妙な舵取りが必要になりそう。
それにしても、まだ失敗事例として語られているわけではないのに反省点を公にする透明性がさすがミレニアル世代の起業家という感じですね。RTRのJenniferも、物流で問題が起きたときにこうした振る舞いがうまかった印象があります。
実際の現場では様々な不満も出ていると思いますが、こうしてトップが非を認めて改善を約束する声明をメディアを通して出すことは、これからのPRの考え方としても学ぶところが多いように思います。

Bergdorf Goodmanがバーを作った理由

Bergdorf GoodmanがNY店に新たにバースペースをオープン。店内にバーを作ること自体はそう新しい施策ではありませんが(伊勢丹にもありますね)、これからレストランやカフェよりもバーの体験を起点にしたコミュニティ形成は盛り上がっていくのではないか、と個人的には考えています。
というのも、カフェやレストランは訪れた顧客同士のコミュニティが中心であって、販売員やウェイターとのコミュニケーションにはつながりづらい。つまり、お店での体験がいかによくても、ブランドを知る、エンゲージメントを高めるという点にはなかなか寄与しづらいわけです。
しかしバーカウンターであれば必然的にバーテンダーとの会話がしやすくなるので、単に飲み物を出すだけではなくファッションブランドにちなんだお酒やフードを出したり、お皿やグラスについてもちょっとしたTIPSを話したり、というコミュニケーションが生まれます。
また、伊勢丹のバーの場合はどうしても店舗の中に突然現れるのですが、もっとクローズドにして心理的安全性を高めることが、コミュニティ化の要諦なのではないかと思います。

D2Cバブルの終焉

アメリカにおけるD2Cブランドへの過熱投資が収束し、今後大型の調達は難しくなりそうな機運。リアルなものや場所を扱う事業は成長率よりもユニットエコノミクスを重視すべきであり、急激に売上を成長させてもそのあとのマネタイズに苦労するということが明らかになり、投資家の視線も慎重になってきたようです。
とはいえ今後オンラインとオフラインの融合はあらゆる分野で進んでいくはずなので、これまでのドットコムバブルのようなスピード感ではないにしろ、テック領域のサービスやレンタル、リセールなどの分野には引き続き投資が集まっていきそう。
一方で、記事にあげららてきるウェルネス、コミュニティ、教育などの分野はスケールが難しいものも多いので、起業家側もエクイティによる調達がよいのかデッドによる調達がよいのかは事業の永続性を考えると慎重に検討すべき部分だと思います。

ラグジュアリーブランドがTikTokを活用し始めた背景

ラグジュアリーブランドも続々とTikTokの活用を開始。といっても、他のSNSと違い、自分たちの投稿ではなくTikTokerに投稿を依頼し、オフィシャルアカウントやプライスタグをつけてもらうといったインフルエンサーマーケティングが主流のよう。プラダにいたっては、一切オリジナルコンテンツを投稿していません。それぞれファッションショーを機にTikTokerを起用しはじめたようですが、そのうちショーの音楽やパフォーマンスを一般のユーザーがまねする、というムーブも起きてくるのかなあという気がします。

「バブル」が去った後に残るもの

海外メディアを眺めていて思うのは、D2Cやシェアオフィスといった3年前あたりからもてはやされてきた事業が軒並み苦境に立たされはじめ、投資も冷え込み始めているということ。
バブルの終焉は疑いようのない状況になってきています。

ただ個人的には、このバブルの終焉はD2Cやスペースシェアといったリアルビジネスに価値がなくなるという意味ではないと考えています。

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