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私は、何を遺していきたいのだろう

「生物とは、遺伝子が自らを外敵から守るために築き上げた『生存機械』に他ならない」──。

私たちは遺伝子を受け継ぎ遺していくために作られた機械でしかないと40年以上も前に提唱したのはリチャード・ドーキンスだ。

ずっと読もうと思いながら積読にしていたこの本を手に取ったのは、消費文化総研の課題図書に設定したことがきっかけだった。

あまりの読みづらさに途中挫折しそうになりながらも、11章の『ミーム――新たな自己複製子』に到達したとき、この章を読むために私はこの苦行を乗り越えてきたのだ、と思った。

ミームという単語自体は、これまで何度も耳にしてきた。

主にスタートアップ界隈で、企業文化を受け継いでいくもの、のような感覚で使われていたように思う。

なんとなく聞き流していた単語がはじめて使われた原点に図らずも触れることになった奇跡に、まずはただただ驚いた。

そして章の題名にもあるとおり、ミーム(meme)は遺伝子(gene)と同じ自己複製の単位として名付けられた概念だ。

リチャード・ドーキンスは、たとえ遺伝子ではなかったとしても自己複製子こそが生物の基本単位であり、進化のベースになるものだと主張する。

そしてこの地球上で、人間だけが手に入れた遺伝子とは別の自己複製し、それがミームなのだと。

この章を読んで自分の中でスッと腑に落ちたのは、文化を伝え残していく上で会社や個人は遺伝子でいう生存機械にすぎず、個体を残すこと自体に意味はないという以前からぼんやり考えていたことを明文化されたからだろうと思う。

よく考えてみると、会社組織の寿命は人間より長いわけではなく、むしろ平均寿命でみれば人間の寿命の方が長いかもしれない。(東京商工リサーチによれば、2018年の倒産企業の平均寿命は23.9年だったらしい)

しかしなぜか私たちは企業の方が長く生き延びるものだと思い込んでしまうし、『ゴーイングコンサーン』という言葉に代表されるように、永遠の命を前提に企業の未来を考えている。

昨年、高橋祥子さんのゼミを担当していたとき『不老不死は実現するべきか?』をテーマに議論したことがある。

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