"ワンテーマ"の時代
こないだ本屋さんでふと雑誌「Soup.」を手にとって思ったこと。
あれ、Soup.ってこんなにおしゃれな雑誌だったっけ。
これまでのSoup.はCanCamやViViといった一般的な女性ファッション誌と同じような、白ホリをバックにモデルが元気な笑顔を見せている写真の上にタイトルがバーッと羅列した表紙のイメージでした。
でも私が手にとったSoup.9月号はふんわりした写真に最小限の文字で、大人っぽく落ち着いた雰囲気。
もしかして似た名前の別の雑誌が創刊されたのか!?と思わず出版社と雑誌名を確かめてしまったほど。
調べてみるとちょうど1年前くらいから徐々に表紙の文字数とカラー数が減り、去年の冬あたりに今のデザインに落ち着いたようです。
最近徐々にウケる雑誌の表紙が変わりつつあるなあと思っていたところだったのですが、Soup.の表紙デザインが変わったのはそんな変化を象徴しているように思います。
(▼こちらは2013年8月号の表紙。たった3年でここまで変わるとは!)
消費者のライフスタイルすべてを囲い込もうとするのは無謀なこと
これまでの雑誌は2013年のSoup.のように顔のまわりを埋め尽くすように文字が書かれているものが主流でしたが、最近はひとつのテーマを全面にだして、文字数も使用カラーも抑えめにした余白のある表紙が増えてきているように思います。
女性向け人気キュレーションメディアMERYの雑誌もしかり。
同じくWebメディア発のNEXTWEEKENDもしかり。
最近個人的に注目している雑誌 nice things.もかなりシンプルな表紙です。
こうした変化の理由として、ひとつはすでに受け取る情報量が多すぎる状況になっていること、そして消費者が自分で情報を選びとってカスタマイズする時代になってきていることがあげられるように思います。
これまでは情報源がマスメディアに集中していたため、ひとつの雑誌に様々な情報を載せ、その豊富さで選んでもらうことが必要でした。
しかしライフスタイルが多様化し、WebメディアやSNSなど接するメディアも多岐にわたるようになったことで、自分にあう情報だけ取り入れる"いいとこどり"が主流になりつつあります。
例えばここ数年で最大のヒットといえる女性誌"VERY"の読者も常にVERYを参考にしているわけではなく、キナリノや4yuuu!を参考にしたり、検索にInstagramを使ったりといった行動をとっているはずです。
つまり最初から最後まで、消費者のライフスタイルすべてを囲い込もうとするのは無理に等しい。
だからこそはじめから「選択肢のひとつである」と割り切って、ひとつのテーマにフォーカスしたメディアが選ばれる傾向にあるのだと思います。
Soup.9月号を例にすると、これまでの雑誌であればサブテーマ程度であったはずの「めがね×ヘアメイク」に絞って前面に押し出したことで、万人ウケはしなくても刺さる人には刺さる、しかもこれまでSoup.に興味を持っていなかった人にもリーチできる誌面になっています。
一人に与えられた24時間という限られた時間。
そこで選ばれるためには、いかにひとつのことにフォーカスするかがますます重要な時代になりつつあるのを感じます。
"ワンテーマの時代"は雑誌だけじゃなく、ショップもサービスも同じこと。
"ワンテーマの時代"は雑誌が特に象徴的ですが、ショップやサービスも同じことのように思います。
日頃ポップアップショップについての相談を受ける中で企画についての相談も多いのですが、よくあるのがブランドの商品を一通り並べるという手法。
ブランド自体にエッジが立っていてストーリーがある場合はそれでも問題ないのですが、多くのブランドはそうではないのが現状です。
さらにポップアップショップですべての商品を紹介してしまうと、次回以降は「もう行かなくてもいいや」ということにもなりかねません。
だからこそ1回1回きちんとテーマを決め、ターゲットをしぼった企画が必要になってきます。
雑誌づくりと同じように売場づくりを考える。
そんな"編集視点"が、今後さらに求められていくように感じます。
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昔からずっと、"百貨店の最大のライバルは雑誌だ"と公言してきました。
リアルの場が売買する場所から体験する場所に変化しつつある今、それぞれの役割はより近いものになってきているように感じます。
あまり意識してなかったけど、雑誌研究が好きなのは自然とこういうことを感じていたからなのかも。
これからもひっそり研究を重ねていきたいと思います。
※こちらのnoteの表紙画像はSoup.10月号の表紙をお借りしました
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