古典や名作を挫折せずに読み切る秘策 #BOOKTALK

好きな作家を聞かれたとき、高校生の頃から答えていたのは三島由紀夫と山崎豊子、そして松本清張。
教科書に載っていた作品にハマって夏目漱石や梶井基次郎の他の作品を読んだり、みんなが『恋空』にハマっている中で三浦綾子の『塩狩峠』で号泣したり、読書家としてはやや古風な人生を歩んできました。

大人になった今もその趣味は変わらずで、毎月まとめている『今月読んだ本』を眺めていると本屋さんのベストセラーの棚には並ばない本ばかり読んでいるなと改めて思います。

とはいえ私も抽象度が高い哲学書や歴史認識がなければ読み解けないような硬派なルポ、読み下しが難しい古典などは、目で追いながら寝落ちしてしまうこともしばしば。
難しい本がすらすら読めるほど頭がいいわけではないし、なんとか読めても自分の解釈があっているのか不安になることばかりです。

それでも古典とうまく付き合い、自分のまなびとして取り入れられているのは、古典を読む際に『読む順番』を意識しているからだと思います。

たとえば孫子の兵法といえば戦略論における基礎の基礎ですが、急に岩波文庫から出ている原著を読もうとすると大半の人は挫折します。
内容以前に言葉遣いが難しい上に、時代背景や過去の発言と照らし合わせなければその教えの意味がわからないことが多いからです。

だからこそ私はまず手厚く解説してある超訳版や経営者が出している『孫子の兵法にまなぶ』系の本がないかを探します。

ちなみに孫子でいうと守屋洋さんの著書はハズレがないと思います。

こうした超訳本である程度要旨を掴んだ上で原著を読めば、すでに意味自体は理解できている状態なので多少言い回しが古めかしくても内容がすっと頭に入りやすくなります。

超訳本を1冊読んでその著者が気に入ったら、できれば複数の関連著書を読んで多面的に理解しておくとより理解が深まると思います。

私は古典を含め、歴史的事件や特定分野を調べたいときはだいたい一度に5冊ほど関連書籍を買い、バーっと読んで一番読みやすそうな本から順に読んでいきます。

このあたりはいろんな流派があって、あえて難しいものをはじめに読んだ方がいいという考え方もあるのですが、私の場合は難しすぎると途中で寝てしまう(!)ので、その時の自分のレベルにフィットしたものを選ぶようにしています。

で!!!ですね!!!!!!!!!!


私はついに見つけてしまったのです…!古典入門として最強のシリーズを…!!!

それがNHKでおなじみの『100分de名著』のテキスト!!!!!!!

ちなみに『100分de名著』はNHKの番組で、25分×4回、つまり1ヶ月でその本の概要をわかりやすく解説するという番組なのですが、このテキスト版がわかりやすい上に薄くて読みやすい。
文字も大きくて表現もわかりやすいので、個人的にはKindleでサクサク読んじゃうのがおすすめです。
だいたい2時間もあればさらっと読んでしまえるはず。

私はちょうど9月にロシアに行っていたとき、どうしても風姿花伝が読みたくなってKindle版を探していたときにたまたまNHKテキストに出会ったのですが、そこからお気に入りすぎてすでに10冊ほど読破したと思います。

もちろんそこから一歩進んで原著を読んだ本もいくつかありますし、番組の中で紹介されていた関連書籍や著者の別の本を購入して読んだりと読書の幅に厚みを出してくれた神番組…!

ということでもちろんNHKオンデマンドにお布施して番組も視聴しています。

25分という絶妙な再生時間と、ラジオ的に耳で聞くだけでも十分内容が入ってくる構成なので、朝支度をするときはたいてい100分de名著を視聴しつつ、そこで気になったものをさらにテキストで買い、読んで面白かったものを原著で読む、というサイクルで最近は読書生活を営んでいます。
本当にNHKさまさまです。

しかも名著の解説をしてくださる先生も豪華で、その著者の研究の第一人者である大学教授であることが多く、著者の来歴や時代背景、当時の他の著作と絡めたその本の立ち位置など立体的に解説してもらえるのですでに読んだことがある本でもまなびが多い番組だと思います。

あとは一冊の本だけではなく『夏目漱石スペシャル』や『河合隼雄スペシャル』など著者特集の回もあり、時系列ごとに著者の思想がどう変わったのか、それぞれの作品で何を表現したかったのかといった解説が聞けるのも魅力。

『本は好きだけど古典はハードルが高くて…』と思っている読書家のみなさんに全力でおすすめしたいシリーズ&番組です。

ちなみにNHKと何の関係もない私がなぜこんなに熱弁しているかというと、NHKオンデマンドの利用者を増やすことで

アプリをもっと使いやすくして欲しい

からです…!!!

願わくばシリーズものは『次を見る』で再生されてほしいし、アプリトップに『視聴中のシリーズ』がでてほしい…
そのためには私だけの課金では足りないのではないか…!!!!

ということでこれを読んだ人全員に課金してほしい、今すぐに。

もともと私は朝ドラ見たさにNHKオンデマンドに課金した勢なのですが、Nスペの『映像の世紀』をはじめとするドキュメンタリーシリーズのクオリティに感動し、これも暇さえあればちまちま観ています。

また、NHKオンデマンド以外にもNetflixのドキュメンタリーがきっかけでアメリカの移民問題に興味を持って本を読んだり、ロシア帝国史の概要を学んだりと映像コンテンツだからこそ新しく興味をもてたものがたくさんあります。

私たちはつい難しいテーマを避けてわかりやすく面白いものに飛び付きがちだけど、世界をよくするにはひとりひとりが『難しいこと』『面倒くさいこと』にもう少しだけ興味をもつことだとわたしは思うのです。

だからこそ入門コンテンツや映像によって『本当に大切なこと』に興味を持ち、自分の頭で考える力を養うことが必要なんじゃないだろうか、と。

古典や過去の名作にアプローチすることを、自分の教養を誇示するためのスタンプラリーにしてしまわず、きちんと自分の血肉にしていくために。

私の『古典との付き合い方』が少しでも参考になれば嬉しいです。

***

『本の読み方』に関連して…!
1/12(日)に青山ブックセンターで『私たちの読み方、考え方』というテーマでイベントを開催します!

当日は今回書いたような古典との付き合い方や影響を受けた本などを3人の豪華ゲストと対話形式でお話していきます。

3人とも、私が本の話をするならこの人と対談したい!と思っていたメンバーなのでとっても楽しみ〜!
ということで1月をどうぞおたのしみに!

★noteの記事にする前のネタを、Twitterでつぶやいたりしています。


サポートからコメントをいただくのがいちばんの励みです。いつもありがとうございます!