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今週読んだ海外記事と雑感(2020.6.6)

今週もNewsPicksでピックしたニュースとコメントを転記してまとめておきます。
有料部分はニュースへの雑感です。

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いつから店舗を再開させるべきか?ブランドたちが直面する現実

アメリカでも徐々に店舗の再開がはじまっていますが、5月に入ってからの客足も前年同月の40%程度と戻りは遅く、ランニングコストを鑑みてあえて再開しない選択をするブランドも多いようです。特にD2Cをはじめ、ECでの売上が好調なブランドはすでに売上高のほとんどをオンラインが占めているため、店舗オープンのインセンティブがないとのこと。一方で、店舗の閉鎖は店頭の販売員のみならず、エリアマネージャーや店舗運営をサポートする企業など影響範囲も大きいという指摘も。Zoom接客もこれまでの店舗接客とは評価方法が変わるため、オンラインにフィットした制度設計が必要となりそうです。

AmazonやTargetも。暴動によって小売が受ける影響

デモが激化している影響で、Amazonが一部地域で配達を停止。Targetも店舗を閉鎖するなど大きな影響が出ています。店舗の営業再開がはじまり、ドライブスルーピックアップなどの取り組みで各社ともに業績回復への道筋を模索していたタイミングだっただけに、暴動によって買い物に出かける人が減るだけでなく配達も制限されることで景気回復はさらに遠のきそうです。特に激しさを増すNYやワシントン、シカゴといったエリアに住む人々の安全を祈るばかりです。

接客予約は新たな店舗のかたちになるか?

今後も店舗内の密集を避けて接客をするために、予約制の接客が増えていくかもしれない、という話。Zoom接客をはじめるブランドもでてきましたが、営業再開によって予約接客が実店舗にも波及。レストラン予約サービスのOpenTableがアパレルやコスメの店舗予約に参入しようとしている変化も興味深いところです。
とはいえ、もし1時間の枠を抑えたとするとある程度の売上が見込めなければコストの方が高くつく可能性もあるため、導入できるブランドは限られそうでもあります。記事で紹介されているA.P.Cくらいの価格帯であれば2着ほど買ってもらえればもとがとれそうですが、ルミネくらいの価格帯だと客単価が1万円もいかないことも多いので、難しいところだなと。会員限定にしたり、購買可能性の高い顧客のみにシークレットで招待を送るといった工夫が必要そう。
逆にこれまでオンラインをベースに商業施設のポップアップで顧客との接点を作ってきたブランドはイベントスペースを借りて予約制の試着会を1回数人のキャパで開くといった工夫も必要になってきそうです。

ソーシャルディスタンス時代の店舗が取り入れるべきテクノロジー

https://www.voguebusiness.com/technology/the-tech-behind-social-distance-selling

今後の店舗で活用するべきテクノロジーをまとめた記事。アメリカでは店舗での商品ピックアップを使ったことがある人が半数になったという数字もあるほど浸透していますが、その裏にはRFIDを活用した在庫管理の効率化とアプリを使ったピックアップ体験の改善があるようです。日本の場合はそもそもEC在庫と店頭在庫の管理を一元化するところから、という企業が多そうですが、その上でリアルタイムに在庫状況を共有し、それを顧客が閲覧できるかたちまで整えられれば生活がもとに戻ったあとも買い物体験の利便性が飛躍的に上がりそう。
「店舗は商品を受け取るための場所で、買い物は来店前に終わっているべき」という考え方はまさにそのとおりで、買い物がすでに終わっているからこそ「何か買わされるかも」という恐怖をもつことなく店内の商品を見たり販売員と会話したりできるのではないかと思います。
特に今はSNSで目星をつけて買い物する人が増えていますが、店頭に買い物に行くと人気商品は売り切れていることが多く、「無駄な時間を過ごした」というがっかり感も大きくなります。
パンデミックの状況下に関わらず、こうした買い物の利便性を高めるためのDXは必要不可欠なものになっていくはずです。

Alibabaがアメリカ市場でのスモールビジネスオーナー支援策を発表

ECの需要増大に伴い、プラットフォームの競争も激化。Amazonは第一四半期で昨年対比26%の売上増を記録しており、FacebookのShopsやShopifyの支援策に対し、アリババは資金繰りの改善とオンライン展示会需要のための施策を行い、アメリカ市場を拡大しようとしています。これまでは実店舗だけで運営していた企業が次々にECをはじめているタイミングなので、各社しのぎを削っていることが伝わってきます。
記事からは読み取れなかったのですが、アリババが米国内だけではなく中国への越境ECのサポートもしているのであれば、この機会にアリババでアカウントを作りたいお店も増えそう。
アリババの場合はメインECとしてだけではなく、たとえば日本でも自社ECと楽天を2つ持っている企業があるように、そのネットワークを価値として中国市場への足掛かりにできる、という訴求がフィットしそうな気がしています。

中国でコスメブランドの「タピオカコラボ」が人気の理由

中国でコスメブランドがタピオカブランドとコラボした限定アイテムを発売したところ大ヒットとなり、グローバルブランドがこぞって人気タピオカブランドとコラボしはじめている現象がとても面白い。特に人気のHeyteaはテンセントから出資を受けたスタートアップですが、こうしてブランドとコラボすることでIPビジネスに移行できれば、単にお店でモノを売るだけではない新しいブランドのあり方のよい例になりそうです。
そういえば日本でもラデュレのコスメが人気になって定番ブランドとして販売されているし、韓国コスメもたしかお菓子ブランドとのコラボがあったような。東アジアは「かわいい食べ物/飲み物」のブランド価値が高いのでしょうか。

LVMHのティファニー買収プランが再交渉へ

11月に発表されたLVMHのティファニー買収ですが、ここにきてパンデミックと情勢不安から難航しているもよう。WWDの第一報ではLVMHが買収を断念しようとしているようなニュアンスでしたが、BOFの記事を読む限りだとLVMHがより有利な条件を引き出すために再交渉しているような雰囲気です。
少し前にビクトリアズシークレットの交渉も決裂と報道がありましたが、今後合併や買収が白紙に戻る事例が増えていきそうです。

Walmartが巨大本社施設プロジェクト続行を宣言

多くの企業がリモートワーク を推奨し、Shopifyは早々に「全社員リモートワーク化」を発表している中、ウォルマートは昨年発表した東京ドーム30個分もの巨大な本社施設プロジェクトをそのまま進めると社長自らアナウンス。これはどちらが正しいという問題ではなく、企業の出自の問題でもあるのかもしれません。
ウォルマートのようなリアルなものを扱う企業は顧客に提供する価値もリアルな体験がベースになることを考えると、社員が実際に会って時間や空間を共有することでしか作れないものもあるはず。
どうしてもしばらくは「人と接さないデザイン」に意識がいきがちですが、この施設が完成するのは2025年(!)なので、もっとロングスパンで考えた結果なのかなと思います。

百貨店業界に未来はあるか

Neiman MarcusとJ.C. Penneyが破産申請し、Lord&TaylorやMacy’sも大規模なリストラを進めるなど業界全体が苦境に立たされている米百貨店ですが、そもそもオーバーストア気味であったこと、品揃えが時代の変化に追いついていないことなどこれまでの問題点が一気に噴出した結果が出ているのではないか、という指摘。これは百貨店のみならずモールにも共通する問題です。
日本もそうですが、格差が広がった結果中間層がいなくなり、中間層に「少しいい暮らし」を提供していた百貨店の存在意義が揺らいでいるという構造的な問題も挙げられています。
またECの台頭によって実店舗以外の選択肢が増えたため、今後店舗数を減らしていくことは避けられないという話は私も同感です。伝統的な小売業が現在苦しんでいるのは現在の規模で不動産と従業員を維持し続けるほど従来の店舗に需要がなくなっているからであり、整理して身軽になった上でバイヤーの審美眼とこれまでのよいぶらんどとのつながりといったソフトパワーを活用できれば!復活の余地は十分にあるはずだと思います。

「細身にこだわるブランド」がなぜ中国で大ヒットしたのか?

細身の女性に向けて小さめのワンサイズしか作らないことで議論になっているブランド「Brandy Melville」が中国で大人気に。中国は日本や韓国以上に細身であることが美の基準でもある文化なので、このブランドの洋服を着ることがひとつのステータスともなっているもよう。ただ、細身なだけではなくキャミソールやミニスカートなど露出の多いアイテムも多いため、その観点からも批判が起きているようです。
記事中のコメントにもあるとおり痩せている人だけが似合う服を着たいと思うこと自体は個人の自由ですが、それによって健康を壊す可能性もあることを考えると、太っているからこそ似合うとか、背が高い/低いからこそ似合うといった複数のバリエーションができてくるとより理想なのではないかと思います。

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私がよく読んでいる海外メディアにBusiness of Fashionがあるのですが、昨年あたりから中国のカテゴリができて毎週中国ネタの記事がでてきて興味深い。
JingDailyも中国にフォーカスしたメディアですが、BoFはベースがイギリスだけあって欧米圏の視点から見た中国市場について書かれているので、東アジア文化圏が世界でどの立ち位置にいるかがわかりやすいなと思います。

今週はタピオカコラボと細身信仰の2本を取り上げたのですが、これどちらも日本人の感覚としては、わざわざ記事で取り上げる必要があるほどユニークな現象ではない感覚があるんですよね。

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