ユニクロが変えたもの
日本を代表するブランドとなったユニクロ。
ファッション業界からの評価は賛否両論分かれることも多いですが、認知度・所有率共に押しも押されぬ人気ブランドであることに変わりはありません。
少し前までユニクロのアイテムを身につけていることがわかると「ユニバレ(ユニクロとバレること)」と揶揄され、おしゃれを気にしない人が着るものというイメージがありました。
しかし最近ではどの雑誌もこぞってユニクロのアイテムを活用した特集ページを組み、年代問わずユニクロのアイテムが雑誌に載らない月はないというほど「おしゃれなアイテム」として認識されています。
ふと気づけば上から下までユニクロだった、という日もアラサー女子なら一度は経験があるのではないでしょうか。
こうした状況を「ファッションの画一化」「面白みがない」と捉える向きもありますが、私個人としてはどちらかというと「ファッションセンスの底上げ」の効果の方が大きいように感じています。
どの時代でも、真にファッションに興味があって自分なりに創意工夫したい人は全体のほんの一部です。
そして大多数の人は自分の好みよりもその時々の流行りに左右されて洋服を買い、一部の人は全くファッションに興味がありません。
この割合がだいたい2:6:2だとすると、2割のファッションに興味がない層のおしゃれ度をあげたこと、そして6割の浮動票を一気にもっていったというのがユニクロの大きな功績だと思っています。
***
昔百貨店で販売をしていたころ、ふと街中で気づいたことがあります。
「あの人もこの人も、今着ている洋服はどこかで買っているんだ!
『洋服を買う』のは誰もがしていることで、その場所としてうちが選ばれるかどうかなんだ!」
冷静に考えれば当たり前なのですが、目の前のお客様しか見ていない販売職にとっては「お客様が洋服を買わなくなっている」ように感じてしまうんです。
でも洋服の耐用年数が大幅に伸びるわけでもなく、人が消費する洋服の量は実はそう大きく変わっていなくて、ただリプレイスされているだけなのだと気付いた時の衝撃は計り知れませんでした。
ファッションを自己表現の手段として捉えている、洋服好きな2割のお客様は変わらずに足を運んでくれる。
でも、「平均程度のおしゃれでいい」「周りから浮かなければいい」という6割の人たちはどんどんユニクロやGUに流れていく。
それはユニクロがファッションのインフラになりつつあるからです。
ではユニクロ以外のファッションブランドは淘汰されるしかないのかというと、それもまた違うと思います。
クローゼットにおけるユニクロ比率は上がっていても、100%ユニクロという人はいないはず。
これからの戦い方としては、
①ユニクロ=シンプルなアイテムと共生する
もしくは
②ハレの日を演出することに特化する
のどちらかが大きな戦略の二軸であるように思います。
ユニクロにもワンピースやちょっと高めのカシミヤニットといった商品がありますが、基本的にはシンプルな日常着です。
だからこそ日常着としてユニクロがあることを受け入れた上でちょっとしたアクセントになるようなアイテムや、逆に特別な日を演出するためのハレの一着を作るという戦略が戦いやすいように思います。
例えばこれまでパンツ1着は2万円弱するのが当たり前で、そんな大金をだして汚してしまったら…と思うと、白いパンツに手をだせるのは一部のファッションにこだわりのある人たちでした。
でもユニクロであれば3000円以内で購入することができます。
このくらいの金額であればワンシーズンで汚して履けなくなっても元がとれそう、という感覚で手に取る人が増えたことで、街中の白パン率は数年前より格段に高くなっています。(※個人の体感ですw)
こうしてボトムに白やベージュなどの明るい色をもってくることができれば、トップスの自由度もぐっと高まります。
ボトムをユニクロのパンツにしたら、トップスはちょっとアクセントのある変形のものを買ってみようかな、柄物に挑戦してみてもいいかも、そう考えるのが女心です。
そう考えると、ある意味ユニクロはファッションの需要を喚起しているという見方もできるかもしれません。
個人的にはそのうちトップス専門のブランドやカーディガン、コートなどのアウター専門のブランドも増えそうだなと思っています。
***
ファッション業界において、もはやなくてはならない巨人となったユニクロ。
単に敵対視するのではなく、いかにうまく共生してくかを考えるのも、これからのファッションビジネスの現実として必要な視点なのかもしれません。
サポートからコメントをいただくのがいちばんの励みです。いつもありがとうございます!