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「応援したい」と思わせる才能

誰かを「応援したい」と思いはじめた瞬間のことを、覚えているだろうか。

がんばっている姿を見たときや、自分には成し遂げられないようなすごいことを達成したとき。
「応援したい人」とのストーリーは、人の数だけ無数にある。

私はといえば、いつも「苦難を乗り越える姿」にどうしても惹かれてしまう。

努力してもなかなか結果が出ないとか、ハンデや環境の制約があって思い通りにできないとか、不幸なことがあって一時的に調子を落としているとか。

そういう自分の力ではどうしようもないことを、どうにか努力で乗り越えようとする姿に美しさを感じ、つい応援したくなってしまう。

私の好きな人たちは、みんなそういう「闘う美しさ」を持っている。

彼らに惹かれるのはきっと根が怠惰な自分へのコンプレックスの裏返しでもあり、「こうなりたい」という自己投影でもある。

応援という行為は、多かれ少なかれ自分の姿を重ね、自分の代わりに頑張ってもらいたいという気持ちを含んでいるように思う。

しかし最近、これまでの自分の系統とは異なる選手を応援するようになった。

「おっくん」ことヤクルトの奥村選手だ。

つい最近まで、おっくんについてプロフィール以上のことをほとんど知らなかった。

しかし開幕がいつになるかわからず、球団の活動も休止となってしまった今、ヤクルトの選手たちがこぞって個人のアカウントでライブ配信をしてくれるようになった。

たまたま見ていた上田のライブ配信におっくんがゲストとして参加したのが、おっくんをちゃんと認識するきっかけになった。

そのあとも自分のアカウントでライブ配信をしたり、ストーリーズでの質問回答をしたりしているのを見て、「なんていい子なのだろう!」といたく感動してしまった。

上辺だけではなく心からチームやファンに感謝し、なるべく誰も傷つけないように言葉を選びながら伝えようとする真摯な姿勢を見て、いっぺんにファンになってしまったのだ。

実はおっくんも今年のキャンプで大怪我をして手術を受け、1年近くリハビリしなければならない状況なので、「苦難を乗り越えようとしている」際中でもある。

ただ、私がおっくんを応援したいと思ったのは、彼の「応援を受け取る力」の高さが一番の要因のような気がしている。

おっくんは、ファンの応援を喜びいっぱいに受け取る人だ。
試合前後に出待ちして声をかけられるのも自分は嬉しい、応援してもらえてありがたいと語り、差し入れで手作りのお菓子は受け取れないと答える際には「本当は食べたいけれど」と丁寧に添える。

そして夢は「1億人に応援されること」なのだという。

野球選手にもいろんなタイプがあって、シャイだったり口下手だったりしてファンサービスが得意ではない人もいる。
それ自体は良し悪しの問題ではなく、性格や立場からくる違いでしかないし、そのことだけで応援したい気持ちが薄れるわけでもない。

でもやっぱり、おっくんのように素直に人からの愛を受け取り、丁寧に答えていける人は、たくさんの人に応援してもらえるのだろうな、と思う。

しかも結果に関わらず応援してくれるファンが多ければ、少しくらい不調な時期があっても、怪我や病気で離脱しても、諦めることなく「またあの場所に戻ろう」と思えるのではないだろうか。

応援してもらえる才能を持つ人は、困難すらもしなやかに乗り越えていけるはずだ。

おっくんのはにかむような笑顔が早くグラウンドで見られますように。

それまで、お互い健康に安全に日々を過ごしていきましょう。

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