見出し画像

あなたはいつだって、私たちの夢だから

「山田選手、ただいまのホームランで通算200本塁打を達成いたしました」

サヨナラ満塁ホームランによる劇的な幕切れに湧く球場で傘を振りながら、自分が記録的な瞬間に立ち会ったことにアナウンスを聞いてやっと気づいた。

その瞬間、私は一気に2年前の記憶に引き戻された。

同じく神宮の一塁側の席で、山田哲人の100本塁打に立ち会って泣いた日のことを。

あのときの涙は、哲人の記念すべきホームランに立ち会えた嬉し涙だった。

そして今回の涙には、苦しい時期を挟みながらも持ち直し、いつまでも私たちの夢であり続けてくれる姿への、感謝の想いがこもっている。

---

普段「お哲」と呼んでいるので、ここからはいつも通りの呼び名を使わせていただきます
(結婚式の友人代表スピーチ風)

2016年の終盤戦で背中に死球を受けてから、お哲はそれまでの快進撃が嘘かのように調子を崩していた。

それでもなんとか2年連続トリプルスリーも獲得できたし、オフに入って休めばまた復活するだろうと誰もが楽観視していた。

しかし2017年は不調が続き、神宮に行ってもお哲のバットから快音がなる回数がめっきり減ってしまった。

死球がきっかけでイップスを患うケースもあり、もしこのまま復活しなかったら…と不安に思い始めた頃。

通算100本目のホームランボールが、夏の青空に吸い込まれていった。

歴史的瞬間に立ち会えた嬉しさはもちろん、ああやっぱりお哲は大丈夫だ、私たちの希望だと安心して涙が出たことを覚えている。

結局2017年は本来の力を発揮できないままに終わってしまったけれど、私たちのお哲は2018年にパワーアップして帰ってきた。

去年の不調はなんだったのかと思うほど打ちまくり、3度目のトリプルスリーを達成。

「夢へと続く道」は、途切れることなくたしかに私たちの目の前に続いていた。

お哲が打席に立つと、球場全体が「やま〜だてつと!」の掛け声に包まれる。
前奏付きの独特の応援歌は、他球団ファンもつい口ずさんでしまう中毒性を持っている。

応援歌がそれだけ記憶に残る理由は、歌詞やリズムがわかりやすいからだけではない。

お哲はいつだって淡々と試合に出場し、打って走って守って、また明日もグラウンドに立っている。

怪我人の多いヤクルトでは珍しく、これまで長期離脱をしたこともない。

いつ行っても神宮にはお哲がいて、期待通りにヒットを打ったり盗塁をしたりホームランを打ったりして歓声を浴びている。

もはやそんな光景はヤクルトファンにとって当たり前で、今年もお哲のトリプルスリー達成か!?の報道に「山田哲人ならやれそうだよね」と思ってしまう。

複数回達成した選手自体がはじめてのことなのに、私たちは無意識のうちに少しずつ贅沢になっている。

さらに今年は19歳の村上くんが次々に記録を塗り替えるほどの活躍を見せ、みんなの希望はもうひとつ増えた。

日に日に増えていく「村上宗隆」と書かれたタオルやユニフォームは、これまで期待と希望を一身に受けてきたお哲の目にどう映っていたのうだろう。(まぁお哲のことだから「注目が分散されてラッキー」と思ってそうではある)

そんな心配もさせないほど、どんなときでも気負わず淡々と打席に入るお哲の姿が私は好きだ。

昨日9回裏ツーアウト満塁で迎えた打席でさえ、内心はきっと記録とサヨナラのことを考えて気合を入れていたはずだけど、力みのないいつも通りのお哲だった。

「いや、(40-40は)さすがに無理っす笑」
とはにかみながら答えたヒーローインタビューも、普段からあまり大きなことを言わないお哲らしくてこちらまで笑ってしまった。

そういえば、今年神宮でお哲のヒロインを見たのはこれがはじめてだったかもしれない。(※そもそもヤクルトの負け試合が多すぎ問題)

2年前と同じように、記念プレートを掲げ、お立ち台でマイクを向けられるお哲。

同じ100本だけど、今回2年ちょっとで積み上げた100本は、期待の若手時代とはまた違う意味がある。

相手チームからは入念な対策を講じられ、ファンからはできて当たり前のプレッシャーをかけられ、自分の代わりになる若手が育ってくる恐怖と戦い、トッププレイヤーとして積み重ねてきた100本。

でも、お哲にとってこれはまだまだ通過点だ。

スタンド越えて打球は はるかな夢へと続く
行け山田 新たな時代を

お哲の道はきっと、私たちが想像もできないほど遠くまで続いている。
その姿をリアルタイムで応援し、ファンとして一緒に道を歩んでいるということ。
その事実だけで、私は今日も「ヤクルトファンでよかった」と思うのだ。

---

2年前に100号HRに立ち会ったときの記録を漁っていたら、当時書いたnoteが出てきた。
あまりの文章力の低さに目も当てられずちゃんと読めなかったけれど、今と同じことを言っているなぁと思う部分もあった。

みんな哲人のことを天才だと言うけれど、私はそれ以上に本当に努力の人だなと思っています。
そして誰よりも負けず嫌いだし、いつだって高みを目指している。
調子に乗ったり、このへんでいいやという甘えの気持ちがでてくる弱さを知っているからこそ、いつも謙虚に自分の足りないところを意識している。
ひとつひとつの記録もすごいけれど、この姿勢こそが彼のすごいところであり、私たちが見ている夢の正体なのだと思います。

いつか夢へと続く道が終着点を迎える日がきたとしても、これまで歩いてきた道がずっと私たちに夢を与え続けてくれるはず。

山田哲人は、私たちの夢そのものだから。

\お哲、200HRおめでとう/



サポートからコメントをいただくのがいちばんの励みです。いつもありがとうございます!