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今週読んだ海外記事と雑感(2020.4.4)

今週もNewsPicksでピックしたニュースとコメントを転記してまとめておきます。
文末の有料パートは海外記事の解説です。

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オーダーメイドブランドがこぞってオンラインフィッティングツールの開発へ

オーダーメイドブランドたちがこぞってオンラインで完結するバーチャルフィッティングを開発しはじめているとのこと。特に採寸が必要なスーツのような商材は売上を店舗に頼っていた部分が大きく、オンラインのやりとりで採寸する方法を各社模索しているようです。
記事の中に出てくる「結婚式やイベントごとは中止ではなく延期になっただけで、必ず開催されるので晴着の需要はなくならない」という話も納得。需要は減ったとしても、完全になくなることはないはず。
またバーチャルフィッティングを通して蓄積された顧客へのアドバイスや好みの傾向などをコンテンツにして未来の顧客が商品を選ぶ際の参考情報にする、といった使い方もできそうなきがします。

リセールサービスのコロナ危機への対応は?

コロナによってリセールプラットフォームが受けている影響についてのまとめ。一時期は「他人のものを売買するのは危険なのではないか」という言説が流れたり、トイレットペーパーなどの必需品の価格が釣り上がったりと混乱が大きかった様子。中古品の売買についてはWHOから大きな危険はないという情報が出ているものの、コスメや食品は危険性が高いはずなので、今後日本でもメルカリやヤフオクなどのプラットフォームがこうした危険性への対応が求められていくかもしれません。
また職を失った人たちが当座の生活費確保のためにモノを売るケースも増えているようですが、近いうちにファッションブランドが余剰在庫を整理するためのセールをやったり大量にアウトレットに商品が並ぶはずなので、売り手にとっては不利な状況になりそうとのこと。
こうした動きもおそらく今後日本で起きるだろうと予測されるため、今から対応を考えておくべきポイントだと思います。

アメリカで急増中の「バーチャルパーティー」とは?

アメリカのエンターテイメント業界では続々と「バーチャルパーティー」の環境が整い始めているもよう。SpotifyがQRコードを使って友人と同時に同じプレイリストを聴ける「Social Listening」機能を実験しはじめたり、 CosmopolitanがNetflixの同時視聴パーティーをオンラインで開催したり。
Spotifyの新機能はまだテスト中のようですが、同時に曲を聴きながらチャットもできるように考え中とのことで、クラブパーティー的なつかいかただけではなく仕事中のプレイリストとして使いつつ時折雑談をするような使い方もありそう。
調べてみたところ、Netflix作品を同時にバーチャル視聴する「Netflix party」なるサービスもできたようで、「みんなで一緒に何かをする」という機運が高まっていることを感じます。
日本でもZOOM飲みが流行りつつありますが、こうしたバーチャルに集まるためのきっかけとして音楽やドラマといったコンテンツを使うのは今後日本でも広がっていくのではないかと思います。

人気ブランドが実践するコロナ危機への対応策

サンフランシスコを拠点とするPeak Designが直面している状況と対策の例を紹介する記事。Peak Designは価格帯3万円以上のバッグブランドなので、特にハイエンドなアイテムを扱うブランドは参考になると思います。
まず、これまでのD2Cの戦略としてタブーとされてきたセールを決断しています。これはファッションなど現在必要性の低い商材を扱うブランドにとってもっとも悩ましい部分だと思いますが、彼らはとにかく在庫を少しでも減らすことを優先しているようです。
そして直営店の閉鎖に伴い、従業員を全員解雇。これは日本の法律では不可能ですが、彼らが自宅からの配信やバーチャル接客を試すことなく速攻でレイオフに踏み切ったという点はことの深刻さを表しています。
まずは半年ほど先までの資金確保を行うこと、その上で固定費を極限まで減らし、現在の在庫消化のためのプランを練ること。そして長期戦に備えて商品の供給体制のみなおしと最悪商品が販売できなくなった場合の打ち手を考えること。
当然といえば当然ですが、こうした打ち手をひとつひとつ丁寧に行っていくことが今のブランドに求められていることだと思います。

ラグジュアリーECのネクストトレンド

ラグジュアリーECが歩んできた20年の歴史をまとめた記事。ちなみに、ラグジュアリー市場全体でみても2000年の128億ドルから2019年には310億ドルと、2倍以上規模が大きくなっている点が興味深い。国別のデータも見てみたいところですが、中国の成長だけでここまで伸びるとは考えづらいので、ECを含むオンラインでの活動が市場規模全体を拡大しているのではないかと思います。
ちなみにオンラインにかぎっていうと、2010年の4.7億ドルから2019年までの10年で37億ドルへと急成長。日本ではラグジュアリーECの需要を体感することは少ないですが、海外では一般的になりつつあることを数字の面からも実感します。
とはいえ、記事にもあるとおりこれまでラグジュアリーECの絶対的勝者は存在せず、リセールやレンタルのサービスも増えてきたことで戦国時代の様相を呈していました。
今はどのサービス、ブランドも苦戦を強いられている時期ですが、この時期にオンラインでの発信や購買体験をブラッシュアップできた企業が頭ひとつ抜けることになるのかもしれません。

ECプラットフォームのスモールビジネス支援策

プラットフォームがスモールビジネス支援のためにはじめた施策についBulletinとGarmentoryの事例をベースに解説した記事。特にオンラインでの販売を卸に頼ってきたブランドは実店舗が閉鎖された今、大打撃を受けています。BulletinではインスタのDMで創業者たちが自らブランドに連絡し、補助金やECの構築などの相談にのるといった支援をしているとのこと。
またGarmentoryではフラッシュセールを開催してブランドの在庫消化を支援しています。
日本でもECに切り替えるブランドは増えてきていますが、個々のブランドの発信には限界があるため、プラットフォームがまとめて発信し、アクセス数を増やすといった施策はますます求められていくはずです。

コロナ後も成長を続けるStockX

コロナの影響でファッションECも打撃を受けている中、スニーカーのリセールプラットフォームであるStockXは前月比4%減程度と大きな影響を受けず奮闘中。オペレーション機能も従来通り運用し、従業員の解雇なしでビジネスを続けていく予定とのことです。
リセール市場が大きく値崩れすることなく活発に売買されているというアメリカの状況は、今後の日本の状況をうらなう上でも重要な情報になりそうです。
また、StockXでは#FlexFromHomeのタグがついた投稿の件数×$1をフードドネーションに寄付するキャンペーンも実施しており、今の状況下で出た利益をきちんと社会に還元しようとしている姿勢も評価されているもよう。
こうしたハッシュタグを活用した寄付キャンペーンは他のブランドもこぞってはじめており、日本でも参考になりそうな施策です。

ロックダウン中でもインフルエンサーブランドのローンチが相次ぐ理由

先日、この時期のブランドローンチの是非について取り上げた記事をピックしましたが、インフルエンサーブランドに関しては予定通りローンチするだけでなく、既存ブランドがインフルエンサーと組んで新たな商品やブランドを作りはじめているとのこと。インフルエンサーはすでにオンライン上にファンがついているため、製造・出荷さえできればそこまで影響を受けないというのがポイントのよう。
さらにインフルエンサーにとっても、企業とのコラボイベントや撮影といった仕事が軒並みキャンセルになり、モノを売らなければという危機感もあるようです。
現状の感染拡大を受けて、製造や物流もストップする可能性はありますが、それらが動いているかぎりは既にオンラインでパワーを持っている人たちと組んで売るのが今のところの最適解なのかもしれません。

コロナがD2Cに与える影響

コロナが昨今のD2Cブームに与えた影響を多角的に考察した記事。これからの動きを読み解くポイントとしては
①固定費としての広告費の削減
②出店期間の短期化
③コミュニケーションという無形物課金へのシフト
あたりかなと思います。
アメリカは日本よりも解雇が容易なため、D2Cブランドたちも思い切った人員削減を行っています。と同時に、広告費も大幅削減。どちらにせよこのムードの中では購買意欲をあげることは難しいため、思い切って広告を停止し固定費を圧縮しているとのこと。もともとD2Cは広告費の高さが問題になってきていたので、この削減は想像以上に数字に影響がありそうです。
また、たとえ数ヶ月でコロナが収束したとしても根治できるワクチンが開発されない限りは冬に再発する可能性もあり、常設店からポップアップへとブランドの意識が変化するだろうという見立ては私も同意です。また現在は不動産オーナーや商業施設側も打撃を受けているため、契約期間の短期化や空き店舗を期間限定で貸し出すといった契約を呑まざるをえないところも増えそうです。
そして最後に、この騒動を機に本当の意味でのD2Cを目指すところが増えそうだなというのが私の予想です。
③の無形物課金は、そのブランドへのロイヤリティがなければ成り立ちません。記事の中ではNikeの事例があげられていましたが、Nikeも早くから顧客と直接コミュニケーションをとるD2C的な考え方を重視し、卸売に頼らなかったことで中国でも早々にアプリでの有料課金コンテンツをはじめるなどして被害を最小限に抑えられたという流れがあります。
「D2Cブーム」は終わりを迎えつつありますが、本当の意味でのD2Cはここからはじまる。記事を読んで改めてそんなことを感じました。

今、「消費者」はどこにいる?

3月23日の週、ラグジュアリーブランドの売上が2%アップした一方、ファストファッションは40%、中価格帯ブランドはなんと92%もの落ち込みとなり明暗がくっきりわかれた模様。現在は小売全体が厳しい状況ではありますが、その中でも4万円〜8万円のミドルラグジュアリーが一番打撃を受けているという状況は日本でも起きそうな現象です。
単価10万円以上の買い物ができる富裕層は金融資産を所有していたり、自宅で完結できる仕事に従事していたりと今回の外出禁止が収入に与える影響は大きくない一方で、ご褒美として数万円のアイテムを買っていたようなマス層は一斉にレイオフされ、たとえ仕事があっても将来の不安から買い控えが起きているということなのかなと。
また、リセールマーケットは変わらず売買が好調のようなので、ラグジュアリーブランドの方が買ったあとに値崩れしづらいため、汚す機会が少ない今だからこそ家で楽しむためにいいものを買おうという流れもあるのかもしれません。
特に若者に人気のブランドはECでの売上増加によってむしろ業績アップしているとこもあるようで、比較的お財布に余裕のある若者に「いいもの」を訴求していくことがこの先しばらくは必要な戦略になりそうです。

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日本では在宅勤務への切り替えによる混乱がはじまったばかりですが、海外メディアを読んでいるとアメリカは徐々に外出自粛が「日常」になりはじめ、購買意欲も少しずつ復活しつつあるように感じます。

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