インド諸言語における【インド】の表記
8月15日はインド独立記念日で、1947年にイギリスから独立してから今年インド独立75周年を迎えました。
今回はインド諸言語によるインド関連の表記です。
※緑の丸《🟢》はインドの24公用語における公式表記(※英語版ウィキペディアを参考にしています)、オレンジの丸《🟠》はウィキペディア及びウィキメディア・インキュベーターの見出し及び本文中の表記、ユニコードのCLDRで採用されているなどで見られる表記です。
バーラタ・バーラト系表記
【भारत】デーヴァナーガリー文字: サンスクリット[バーラタ]、🟢ヒンディー[バーラト]、🟢ネパール、🟠パーリ、🟢マラーティー、🟢コンカニ、🟠ビハール/ボージュプリー、🟢マイティリー、🟠アワディー、🟢ドーグリー、🟠ラジャスターン、🟠マールワーリー、🟠ガルワーリー、🟠ネワール、🟢ボド、🟠グルン、🟠アンギカ、🟠カーンデシュ、🟠ハリヤーンヴィー。
【भारतु】デーヴァナーガリー文字: シンド[バーラトゥ] - シンド語では語末子音が本来存在しないため、語末にウ段母音[-u]が来る。
【भारत्】デーヴァナーガリー文字: 🟢サンスクリット[バーラト]、ネパール - サンスクリット語など一部言語では語末で子音字のみを示すためにヴィラーマ記号を用いる。
【भारतम्】デーヴァナーガリー文字: 🟠サンスクリット[バーラタム]。
【भारोत】デーヴァナーガリー文字: コンカニ、サンタル。
【बारत】デーヴァナーガリー文字: カシミール[バーラト] - カシミール語では有声有気音BHA《भ》が本来存在しないため、有声無気音BA《ब》に置き換えられるが、ヒンディー語と同じ〈भारत〉を用いるケースがカシミール語版ウィキペディアで見られる。
【𑀪𑀸𑀭𑀢𑀫𑁆】ブラーフミー文字: サンスクリット。
【ভারত】ベンガル文字: 🟢ベンガル[バロト]、🟠ビシュヌプリヤ。
【ভারত্ , ভারৎ】ベンガル文字: マニプーリ - 外来語としての表記は〈ভারত〉と語末が通常の表記であることが多い。
【ভাৰত】アッサム文字: 🟢アッサム。
【ਭਾਰਤ】グルムキー文字: 🟢パンジャブ[パーラト]。
【𑖥𑖯𑖨𑖝】悉曇文字: 仏教梵[バーラタ] - 漢字による梵語翻字では〈婆羅多〉。
【ꯚꯥꯔꯠ】メイティ文字: 🟠マニプーリ。
【𑐨𑐵𑐬𑐟】ネワール文字: ネワール - インドではシッキム州で話される。
【ભારત】グジャラート文字: 🟢グジャラート、カッチ。
【𑂦𑂰𑂩𑂞】カイティー文字: ビハール/ボージュプリー、マイティリー、アワディー、アンギカ、ヒンドスターニー - ヒンディー語の行書体にこの文字体系の派生であるカイティナーガリー文字がある。
【𑅫𑅐𑅭𑅣】マハージャニー文字: マールワーリー、ラジャスターン、ヒンディー、パンジャブ - 母音記号を使用する方式もあるが、ユニコードに採用されていないため、母音字をそのまま用いる。
【𑊟𑊀𑊢𑊖 , 𑊟𑊢𑊖】ムルターニー文字: サラーエキー - 長母音表記は母音字をそのまま使用するが、表記されない場合もある。
【𑋖𑋠𑋙𑋍】フダワーディー文字: カッチ。
【𑋖𑋠𑋙𑋍𑋣】フダワーディー文字: シンド。
【𑈣𑈦𑈙】ホジャ文字: カッチ。
【𑈣𑈦𑈙𑈯】ホジャ文字: シンド。
【𑆨𑆳𑆫𑆠】シャーラダー文字: カシミール。
【𑘥𑘰𑘨𑘝】モジ文字: マラーティー、コンカニ。
【𑒦𑒰𑒩𑒞】ティルフータ文字: マイティリー。
【𑧅𑧑𑧈𑦽𑧆𑧠 , 𑧅𑧑𑧈𑦽𑧠 , 𑧅𑧑𑧈𑦽】ナンディナーガリー文字: サンスクリット。
【ᤓᤠᤖᤋ】リンブー文字:リンブー。
【𑠡𑠬𑠤𑠙】ドーグリー文字:ドーグリー。
【𑵯𑶊𑶈𑵳】グンジャラ・ゴーンディー文字: ゴーンディー。
【𑴣𑴱𑴦𑴛】マサラム・ゴーンディー文字: ゴーンディー。
【𑚡𑚭𑚤𑚙】タークリー文字: ドーグリー、カーングリー。
【ଭାରତ】オリヤー文字: オリヤー、チャッティスガーリー。
【ᱵᱷᱟᱨᱚᱛ】オルチキ文字: サンタル[バーロト]。
【𑃒𑃠𑃢𑃝𑃑】ソラング・ソンペング文字: ソラ。
【பாரதம்】タミル文字: タミル[パーラダム]。
【பா⁴ரதம் , பா₄ரதம்】タミル文字: サンスクリット[バーラタム] - 有声有気音は上付き数字4《⁴》あるいは下付き数字4《₄》で示す。
【భారత】テルグ文字: 🟢テルグ。
【ಭಾರತ】カンナダ文字: 🟢カンナダ、コンカニ。
【ಬಾರತೊ】カンナダ文字: トゥールー。
【ഭാരതം】マラヤラム文字: 🟢マラヤラム[バーラダム]。
【𑌭𑌾𑌰𑌤𑌮𑍍】グランタ文字: サンスクリット[バーラタム]。
【ꢩꢵꢬꢡꢸ】サウラーシュトラ文字: サウラーシュトラ。
【𑄞𑄢𑄧𑄖𑄴】チャクマ文字: チャクマ - 母音記号無しの子音字は長音アー段となっている。
【𑜘𑜡𑜍𑜄】アーホム文字: アーホム、アッサム。
【بھارت】ウルドゥー文字: 🟠ウルドゥー、🟠パンジャブ、🟠サラーエキー。
【بارَت ، بہارَت ، بھارَت】ウルドゥー文字: 🟠カシミール[バーラト] - 有声有気音は本来存在しない。
【ڀَارَتُ ، ڀارت】アラビア文字: 🟢シンド[バーラトゥ/バーラタ] - 母音記号は省略される。
【Bharat】ラテン文字: ミゾ、インド英。
【Bharot】ラテン文字: コンカニ。
【Bhaarat】ラテン文字: ヒンディー - フィジーの公用語のひとつであるフィジー・ヒンディー語の正書法がインド本国のネット上でも使用される。
【Bhārat】ラテン文字: ヒンドスターニー - インド独立以前にラテン化運動が行われていた。日本のヒンディー語ラテン文字翻字では語末で無音化されるア段表記にストローク付きA《Ⱥ・ⱥ》が用いられ、ヒンディー語のインドは〈Bhāratⱥ〉となる。
【Bhārata】ラテン文字: パーリ - 日本におけるパーリ語表記ではラテン文字だが、パーリ語版ウィキペディアがほぼ全文デーヴァナーガリー表記であることから、インドではデーヴァナーガリー文字によるパーリ語表記〈भारत〉が近年使用されてきている。ミャンマーのミャゼディ文字から派生したパーリ文字による表記は〈ဘာရတ〉。
インディア・インディヤー系表記
インド諸言語では英語由来の固有名詞は原則的に固有文字に置き換える傾向があり、借用語が多用されます。
【इंडिआ】デーヴァナーガリー文字:ヒンディー[インディアー] - ニュースサイトなどで見られる表記。
【इंडिया】デーヴァナーガリー文字: ヒンディー[インディヤー]、ビハール/ボージュプリー、マールワーリー、アワディー、ドーグリー、ネワール、アンギカ - 鼻音記号アヌスヴァーラを付加した《इं》[イン]が使用されている綴りは、ヒンディー語における正式な表記。
【इण्डिया】デーヴァナーガリー文字: サンスクリット[インディヤー]、ヒンディー、ネワール - 末子音字ヴィラーマ付きNNA《ण्》[ン]による合成字母〈ण्ड〉[ンダ]が使用されている綴りは、サンスクリット語における正式な表記。
【इन्डिया】デーヴァナーガリー文字: ネパール[インディヤ]、マイティリー - ヴィラーマ付きNA《न्》[ン]による合成字母〈न्ड〉[ンダ]が使用されている綴りは、ネパール語における正式な表記。
【इंडीया】デーヴァナーガリー文字: マラーティー[インディヤー] - モジ文字表記〈𑘃𑘽𑘚𑘲𑘧𑘰〉に対応する、マラーティー語における現行公式表記。
【इन᳸डिया】デーヴァナーガリー文字: マーハル[インディヤー] - ディベヒ語の方言表記。子音のみの表記はヴィラーマではなく、U+1CF8に配置されているヴェーダ記号リングアバブを加えた《न᳸》[-n- ン]で示す。
【ईंडिया】デーヴァナーガリー文字: コンカニ。
【ईंडीया】デーヴァナーガリー文字: マラーティー - モジ文字表記〈𑘃𑘽𑘚𑘲𑘧𑘰〉における本来対応する字母。
【𑀇𑀡𑁆𑀟𑀺𑀬𑀸】ブラーフミー文字: サンスクリット。
【ইণ্ডিয়া】アッサム文字/ベンガル文字: アッサム
【ইন্ডিয়া】ベンガル文字: ベンガル。
【ཨིན་རྡི་ཡ་ , ཨིན་རྡི་ཡ།】チベット文字: チベット - ブータンのゾンカ語では〈ཨིན་ཌི་ཡ་ , ཨིན་ཌི་ཡ།〉。
【𑐂𑑄𑐜𑐶𑐫𑐵 , 𑐂𑐞𑑂𑐜𑐶𑐫𑐵】ネワール文字: ネワール - 借用語によって表記が変わる。ネパール語デーヴァナーガリー表記に合わせた表記は〈𑐂𑐣𑑂𑐜𑐶𑐫𑐵〉。
【ꯏꯟꯗꯤꯌꯥ】メイティ文字: 🟢マニプーリ。
【ਇੰਡੀਆ】グルムキー文字: パンジャブ[インディアー]。
【ઇન્ડિયા , ઇંડિયા】グジャラート文字: グジャラート。
【ઈન્ડિયા , ઈંડિયા】グジャラート文字: グジャラート - 後者は略記用表記。
【𑂅𑂁𑂙𑂱𑂨𑂰 , 𑂅𑂝𑂹𑂙𑂱𑂨𑂰】カイティー文字: ビハール/ボージュプリー、アワディー - 前者はビハール語本来の表記、後者はヴィラーマ合成による表記。
【𑅑𑅧𑅠𑅑𑅛𑅐】マハージャニー文字: マールワーリー、ラジャスターン、ヒンディー。
【𑘃𑘽𑘚𑘲𑘧𑘰 , 𑘂𑘽𑘚𑘲𑘧𑘰 ; 𑘃𑘽𑘚𑘱𑘧𑘰 , 𑘂𑘽𑘚𑘱𑘧𑘰】モジ文字: マラーティー[インディヤー] - 前者はナーガリー文字〈ईंडीया , इंडीया〉, 後者は〈ईंडिया , इंडिया〉に対応する表記。フォントによっては共に長母音表記のII《𑘃𑘽 , 𑘚𑘲》となり、〈𑘃𑘽𑘚𑘲𑘧𑘰〉が正式な表記となる。
【𑒃𑒢𑓂𑒛𑒱𑒨𑒰 , 𑒃𑓀𑒛𑒱𑒨𑒰】ティルフータ文字: マイティリー - 前者がマイティリー語本来の表記。
【ꠄꠘ꠆ꠒꠤꠀ】シローティ・ナーガリー文字: 🟠シレット[エンディア]。
【𑦢𑧞𑦺𑧒𑧇𑧑】ナンディナーガリー文字: サンスクリット。
【𑠂𑠷𑠖𑠭𑠣𑠬】ドーグリー文字: ドーグリー。
【𑊁𑊚𑊒𑊡𑊀 , 𑊁𑊚𑊒𑊁𑊡𑊀】ムルターニー文字: サラーエキー。
【𑊲𑋟𑋈𑋡𑋘𑋠】フダワーディー文字: シンド、カッチ。
【𑈂𑈴𑈖𑈭𑈥𑈬】ホジャ文字: シンド、カッチ。
【ଇଣ୍ଡିଆ】オリヤー文字: オリヤー。
【ଇଣ୍ଡିୟା】オリヤー文字: オリヤー。
【ᱤᱱᱰᱤᱭᱟ】オルチキ文字: 🟠サンタル - ユニコードコンソーシアムのCLDRに登録されている表記。
【இந்தியா】タミル文字: 🟢タミル、バダガ。
【ఇండియా】テルグ文字: テルグ。
【ಇಂಡಿಯ】カンナダ文字: カンナダ。
【ಇಂಡಿಯಾ】カンナダ文字: トゥールー、カンナダ。
【ഇന്ത്യ , ഇൻഡ്യ】マラヤラム文字: 🟠マラヤラム。
【ഇന്ത്യാ】マラヤラム文字: マラヤラム。
【𑌇𑌣𑍍𑌡𑌿𑌯𑌾】グランタ文字: サンスクリット。
【𑤂𑤟𑤽𑤘𑤱𑤥𑤰】ディヴェ・アクル文字: ディベヒ。
【အိန္ဒိယ】ビルマ文字:マルマ/アラカン - ミャンマーのビルマ語の派生。
【انڈیا】ウルドゥー文字: ウルドゥー[インディヤー]、パンジャブ。
【اِنڈِیا】ウルドゥー文字: カシミール。
【انڊيا】アラビア文字: シンド。
【އިންޑިއާ】ターナ文字: ディベヒ[インディアー] - インドではミニコイ島で話される。
【އިންޑިޔާ】ターナ文字: ディベヒ[インディヤー]、マーハル - インドではミニコイ島で話される。
【India】ラテン文字: ヒンディー[インディヤー] - フィジー・ヒンディー語の現行ラテン文字は英語と共通の綴りだが、発音はヒンディー語と同じ。
【Indiyaa】ラテン文字: ディベヒ。
【Iṇḍiyā】ラテン文字: パーリ - ミャンマーのパーリ文字による表記は〈ဣဏ္ဍိယာ〉。
【Inđíá】ラテン文字:ブラーフイー - そり舌音ダ行はベトナム語D《Đ・đ》で表記される。
ヒンドスタン系表記
【हिंदुस्तान】デーヴァナーガリー文字: ヒンディー[ヒンドゥスターン]。
【हिन्दुस्तान】デーヴァナーガリー文字: ネパール[ヒンドゥスタン]。
【हिन्दोस्तान】デーヴァナーガリー文字: カシミール[ヒンドースターン]。
【हिन्दुस्तानु】デーヴァナーガリー文字: シンド。
【𑆲𑆴𑆤𑇀𑆢𑆾𑆱𑇀𑆠𑆳𑆤】シャーラダー文字: カシミール。
【ہندوستان】ウルドゥー文字: 🟢ウルドゥー。
【ہِنٛدوستان ، ہِندوستان】ウルドゥー文字: 🟢カシミール。
【هندستان】アラビア文字: シンド[ヒンドゥスターヌ]
その他
【𑀚𑀀𑀩𑀼𑀤𑀻𑀧𑀲𑀺】ブラーフミー文字:プラークリット[ジャンブディーパスィ]
【རྒྱ་གར་ , རྒྱ་གར།】チベット文字:チベット[ギャガル]、シッキム - 松香堂・刊『世界の文字をたずねて』で、著者の中西亮さんによる20世紀後半当時のインドにおけるチベット文字新聞の状況が記されている。ブータンのゾンカ語などチベット文字使用言語でほぼ共通の表記。
【सिञत】デーヴァナーガリー文字: サンタル
【ᱥᱤᱧᱚᱛ】オルチキ文字: 🟢サンタル[スィニョット]。
【𑢹𑣜𑣕𑣙𑣞𑣁】ワラング・クシティ文字: ホー[ハルタサー]。
インドの本来の表記が不明瞭な言語
本来の表記が不明であるインド諸言語とその文字です。
表記方式はAksharamukhaの方式を参考にしています。
デーヴァナーガリー文字〈भारत〉[バーラタ/バーラト]に対応する表記です。
【ᰓᰦᰛᰊ】レプチャ文字: レプチャ。
【𑫌𑫕𑫒𑫘𑫞】パウ・チン・ハウ文字: ゾミ。
【𞋂𞋀𞋗𞋁𞋋】ワンチョ文字: ワンチョ。
【𞊑𞊭𞊠𞊭𞊒】トト文字: トト。
【ၹႃရတ်】カムティー文字: カムティー。
【ပႃꩺတ်】アイトン文字: アイトン。
【ပႃꩭတ်】パーケー文字: パーケー。