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ソフトウェアエンジニアがスタートアップへ転職して幸せになるためのチートシート

こんにちは Ubie の共同代表の久保です。昨今、大企業などからスタートアップへ人材の移動が加速しています。その中で、スタートアップへのジョインを悩んでいると話を聞く数も増えてきました。私自身がメガベンチャーでも働いて感じた差分や、Ubie を創業し多くのソフトウェアエンジニアとマッチ度合いのチェックをしてきた中で得た知見を活かし、スタートアップへのジョイン時に参照できるチートシートを作成しました。スタートアップで幸せに働くため、大きく2つの観点でのチェックを解説していきます。

スタートアップに適しているか自分に問いかけるためのチートシート

まずは自分自身の嗜好がスタートアップに適しているか。これがYesでないと、そもそもどのスタートアップに行ってもバリューを発揮できず、本人にとっても企業にとっても不幸な事態となります。

1. 不確実性を楽しめるか?


スタートアップには不確実性がつきものです。急成長していて、バラ色に見えやすいスタートアップ。ですが、そうした華やかさの背後には、事業が伸びなくて辛い時期や多くのピボット(方向転換)があります。Ubie の例でいうと、創業初期からB2C->SaaS(SMB)->SaaS(Enterprise)とビジネス注力領域が移り変わっており、その時々で異なるビジネスニーズのためエンジニアのメンバーが得意ではない役割を担ったり新しい技術を学んだりしていました。創業期はMLエンジニアがアプリケーションのプロダクションコードを書くようなこともありましたが、こうした不確実性を楽しみながら乗り越えていけるマインドセットが重要となります。


2. 常にベストプラクティスを適用できるわけではない状態を受け入れられるか?


技術者としては最新の技術にキャッチアップし、それを実際の職場でベストプラクティスとして注入していけるかをキャリアにおいて重視する方も多いです。しかし、スタートアップでは、それが叶わない場面が多く発生します。特に初期のスタートアップでは、MVP (Minimum Viable Product) をつくっても、その機能や時にはプロダクト自体が使われ続けるかも不確実な場面も多々あります。

最新技術での開発やきれいな開発よりも、デリバリーの速度を上げて不確実な状態からいかに早く抜け出して検証するかが重視される場合も多くあります。

3. ときには不得意な技術課題を解く覚悟はあるか?

どの技術スタックを使うかは本来、事業戦略・戦術によって規定されるべきもの。ですが、スタートアップは一定規模になってもピボットする可能性と隣り合わせで、自身が得意とする技術スタックを使い続けられない場合もあります。もしプロダクト成長を牽引する想いより特定の技術スタックを使いたい欲が強い場合、スタートアップへのジョインは良い選択とは言えません。

自分に適したスタートアップを選定するためのチートシート


1つめのチートシートがYesでクリアできたら、次はどんなスタートアップが適しているかのチェックです。ひと口にスタートアップといっても、成長ステージやカルチャーにより実態は大きく異なります。このマッチングが上手くいかないと、これまたバリューが発揮できません。

1. そのスタートアップのフェーズはどこか?そしてあなたのやりたいことにフィットするか?


ここではスタートアップの各成長フェーズごとにエンジニアとして働く際の特徴を明示していきます。

シード・アーリーステージ

創業初期、組織も数人〜20人程度のフェーズを対象にしています。この時期はPMF (Product Market Fit) を追いかけるのが目標であり、組織として圧倒的な速度でニーズ検証が必要です。このフェーズでは先述したピボットの可能性も非常に高く、プロダクトで使われる技術スタックも変わりがち。そのため、特定の技術を利用したい欲が強いエンジニアにはフィットしづらいと印象です。

もちろん、その技術自体が主力になっている場合もありますが、Ubieでも創業期はネイティブアプリ開発が主流だった中で比較的早い段階で web にプラットフォームを移しています。web 開発においても、ビジネスやシステムアーキテクチャによって、フロントエンド・バックエンドの開発ニーズなども毎月のように変わる場合もあります。エンジニアにとって、そうしたニーズの変化に対応できる幅広い開発能力が重要になるフェーズです。


ミドルステージ

一定のPMFが見えて、サービスが急成長してくる時期です。この時期にはユーザーの要望が届く頻度も格段に高まり、ROIの高い施策や機能開発がどんどん増えていきます。MVPとして様々な検証を繰り返してきたサービスは、一定の負債を抱えるため同じ機能を実装するにしても数人の時に比べてスピードが落ちてくる場合があります。この時期には、以後の開発スピードが落ちないように適切にリファクタしていく技術力、スタートアップに欠かせないスピーディーな対応力、高速のデリバリー力などが必要とされ、バランスが重要なフェーズです。


レイトステージ 〜 Exit

ビジネス的な課題が解消され、踏めば(資金を投入すれば)伸びる状態なのがこの時期です。既存サービスをさらに伸ばす開発だけでなく、投資対象の技術スタックが明確になってくると、エンジニアリングに投資する会社なら特定領域のスペシャリストを採用したりする会社も出てきます。このフェーズの場合には、特定技術にベットしたいエンジニアもマッチするかもしれません。


2. 技術の勉強を惜しまず心血を注ぐ意義のある課題か?


特にシード・ミドルフェーズでまだ Exit が見えてない段階で参画する人には、そのスタートアップが向かう課題を解くことに全力を注げるかは重要です。ピボットを繰り返す前提のスタートアップにとっては、その課題を解決する ための how もどんどん変わっていきます。そのため how である技術に対して魅力を感じて課題解決自体に興味が持てない場合、継続して働くモチベーションは激減するでしょう。そのため、スタートアップが解く課題への共感は必須です。

3. あなたが扱いたいだけの十分なデータがあるか?

意外と忘れがちなのが、データの話です。昨今では多くの企業がMLエンジニア、データサイエンティスト、データエンジニアを採用しています。ただ、これらの職種は一定以上のデータがなければ往々にして独自の力を発揮できません。Ubie は機械学習をサービスに多用しているMLプロダクトですが、創業から三年弱はMLエンジニア、データエンジニアともに1名のみでした。一方でweb側のエンジニアは当時15名ほどだったことからも、MLプロダクトであってもデータが少ないときには効力を発揮しづらいと理解できるのではないでしょうか。

4. エンジニアリング文化がある組織か?

エンジニアリングへの投資は昨今のテックスタートアップでは一般的になってきていますが、まれにそうでないケースもあります。エンジニアリング文化がないとエンジニアリング、ソフトウェアに関する中長期の意思決定ができません。そうなると、最初は良くてもサービスがどんどん開発しづらくなったりったり、人的リソースも含めエンジニアリングコストがかかる意思決定ができなくなったりします

候補者として見極める際には、創業フェーズであれば経営陣に技術を理解している人がいるか(もしくはあなたが技術の啓蒙をする自信があるか)、ミドル・レイトステージであれば現場で使っている技術スタックが創業期から全然更新されていない、少しの機能開発に時間がかかりすぎている(負債がたまりすぎている)などでチェックできると思います。

5. 既にあなた以外に強いエンジニアがいるか?

これもエンジニアリング文化の話に近く、既に社内に強いエンジニアがいるかも重要です。もちろん、ビジネスの速度に関わったり、一緒に開発していて快適だったりというメリットもあります。それ以上に大きいのは、強いエンジニアは強いエンジニアに惹かれて、さらに強いエンジニアを呼ぶ。こうしたエンジニアリング組織の正の成長サイクルを生んでくれるからです。そうするとその中で過ごすエンジニアも適切にその恩恵を受けられるため、強いエンジニアがいるかどうかは重要です。もしいなければ、あなた自身が連れてきて組織を変革するのをおすすめします。

6. 報酬は市場平均から乖離していないか?

SOを含む報酬に関しては、組織の考え方によってもちろん異なります。ただ、これほどエンジニアが売り手市場になっている2021年現在において、市場平均から大きく下回っている場合はエンジニアリングへ投資をしていない可能性大です。GAFA など外資系の報酬水準は難しいですが、メガベンチャーやいわゆる大手のソフトウェア・web サービス会社レベルの給与を出しているスタートアップが大半を占める印象です。補足として、シード期に関してはキャッシュで報酬を払えないためSOの割合が高くなるのが一般的です。

7. 中の人たちを心底好きになれるか?


最後は、中の人たちを心底好きになれるかどうか。個人的には最も重要な点だと思います。ここまで色々と書いてきたものの、スタートアップに参画しても得たいものを得られるかどうかは非常に不確実性が高く、予期せぬ事態は起こるものです。Y Combinator のポール・グレアムも、 Google でさえも最悪の時期は最悪だったし、どのスタートアップにもそのタイミングは訪れると断言しています。事業成長が止まった時や、大きなリスクが発生した時。そのような最悪なタイミングで仲間を愛せなければ、試練は乗り越えられないでしょう。

マッチングという観点では、中の人と話をして、今までどういった事業や技術の意思決定をしているかを聞いてみたり、自分の考えを述べたときの相手の反応を見たりするのが王道かつ有効ななチェック方法です。Ubie では、コロナ禍以前はマッチングを確認してもらうためにランチや飲み会など選考とは違うシチュエーションでホンネを話しやすい状況をつくったりもしていました。実際に話してみる以外の方法では、企業のValueをチェックするのも一つです。必ずしも内情を反映していない場合もありますが、Value にも各企業の色が出ており、採用やインターナルコミュニケーションに活かして内情を一致させるよう取り組んでいる企業もあります。

まとめ

あなた自身がスタートアップに適しているか、そしてどのスタートアップを選定するべきかという2軸でいくつかお話してきました。個人的には今後さらに多くの優秀なエンジニアがスタートアップで活躍して新たな成長産業で活躍するのをひとりのエンジニアとしても願っています。そのサイクルを回す助けに少しでもなれば、この記事の目的は達成です。

最後に (We're Extremely Hiring)


Ubie もソフトウェアエンジニアを絶賛採用中です。フェーズとしてはミドルフェーズとなりますが、事業の筋が見えだしてきてここから大きく伸ばしていくためレバレッジをテクノロジーでかけていくフェーズです。一緒に医療の未来をつくっていける仲間を募集しているので、ご興味がある方はカジュアル面談もやっているので気軽にご連絡ください!

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